勇気
どこかにいきたいとよく考える。
どこでもいい。ここでさえなければ、どこでも。
学校の帰り道、本屋に寄って旅行本のコーナーによく行く。
地球の歩き方を手にとって、見たこともないバンコクの街並みに思いを馳せる。ワットプラケオは絶対にいきたい。
もしくは平積みされていたるるぶを開く。福岡の美味しいラーメン屋の味を想像して、頭の中で舌鼓を打つ。替え玉何回できるだろうか。
そうやって30分くらい時間を潰してから家に帰る。シャワーを浴びて夜ご飯を食べ、宿題と予習をこなして床に就く。変わり映えのしない毎日だし、ずっとどこかへ行きたいと考えているのに、不思議と実行に移すつもりはない。
不満が無ければそもそもこんなことを考えないだろう。お金に関しては貯めに貯めたバイト代100万円がある。時間だって学生は無限みたいなもんだろう。
じゃあ、一体何が私を引き止めているのだろう。
暴力的な両親がいるわけでも、幼い兄弟姉妹がいるわけでもない。仲の良い親友や恋人なんて以ての外。
わかってる。結局のところ、あと一歩の勇気がでないだけなのだ。
今のうちにできる失敗をたくさんしておけと大人は言う。そのくせ失敗すると怒られるし、大人が失敗する姿を見せてはくれない。失敗なんてしたくなくなるに決まってる。
失敗しない1番の方法は挑戦しないことだと、それだけは大人の背中から学んだ。こうしてまた、典型的な日本人が1人出来上がっていくわけだ。
スマホの銀行アプリ。画面に並ぶ7桁の数字。こんなものより勇気がほしかった。あと一歩を踏み出す勇気が。
私には無かった




