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サインボール
部長、鼻の右側に黒子があるな。そんなことを考えながら説教を聞き流す。
そういえば、紫外線だけでなく生活習慣の乱れも黒子の原因になりやすいと聞いた記憶がある。
部長は酒を飲むのが好きだから、2軒目3軒目と連れ回そう。その分俺も付き合わなきゃいけないけど、まあそれは必要経費だろう。
そうやって何度も繰り返すことで、きっと部長の黒子は大きくなる。
サッカーボールくらいのサイズになったら切り取って、三笘にサインを書いてもらおう。きっと高値で売れる。
これは大きなビジネスチャンスの予感だ。
「聞いてるのか!」
部長が机を強く叩く。意識外のことで、思わず体が跳ねてしまう。
「すみません。聞いてませんでした」
正直に答えると大きなため息が聞こえた。
「いい加減にしろ! これで失注したらどう責任とるつもりだ!」
「部長の黒子で稼ぎます」
頬に強い衝撃が走った。




