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ピース
あの人が出ていって、もう半年といったところか。
お揃いで買ったマグカップには埃が積もっている。
はぁとため息を吐くと、コルクボードにとめた写真が目に入った。
記念日に撮った一枚、あの人はとてもいい笑顔でピースをしている。
その写真を勢いよく引っ張る。押しピンでとめた上部が、少し千切れた。
2人の間に亀裂が入った写真。今となっては、それは現実になってしまっている。
もう5年以上前だろうか。
サークルの飲み会、。少し酒癖の悪い先輩に付き合わされていた時に介抱してくれたのがあの人だった。
水を飲んでも頭が回らず、なんだかんだと家まで付き添ってくれたっけ。
取り出したマグカップのふちをなぞると、何故だかとても恋しくなった。
……あぁ、そうか。
私は恋しかったのだ。
この埋められないもどかしさが一体なんだったのか、言葉にして初めて気がついた。
なぞった指先を見やると、灰色の塊が付着していた。
なんだか少し夏の匂いがした。




