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種まき  作者: 山葵からし
10/50

天体観測

 初めて知ったのはいつだったっけ。

 もしかしたらカラオケで友達が歌ってるのを聞いたとか、そんな感じだったかもしれない。

 その曲にすごく惹き込まれて、他の曲とかもたくさん聞くようになった。お年玉を崩して、中学生だった自分でも担げそうな望遠鏡を買ったりもした。

 この歌詞を書いた(物語を作った)人はこんなに淡い経験をしたのだろうか。もししてないのであれば、どうやってこんな言葉が生まれてきたのだろうか。そう考えるようになったかと思えば、いつの間にかその気持ちは嫉妬や憧憬に変わり、果てはそれを消費するだけの自分に対する怒りに達した。

 高校生になって軽音部に入った。初めてちゃんとした楽器を買い、ゆるいながらも上下関係を学び、それから恋を知った。

 自分で曲も作ってみた。あの曲みたいな、誰かに届く(物語)を書きたかった。結果、3ヶ月くらいかけて3分程度の短いものがひとつできた。

 部活内で組んだバンドの何度目かのライブで初めて披露したが、浮かんだ感想は「こんなもんか」だった。

 結局、そのまま部活を辞めた。メンバーは引き止めてくれたが、もう曲を作るのは無理だと思った。手元に残ったのはもう使わない楽器と、既に使わなくなっていた望遠鏡だけだった。

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