その頃、別働隊は
同時刻 黎明の鴉・一角獣の宿り場合同パーティー
「どどどどどどどうしましょう!ええと、取りあえずおれが今から時遡行の奇跡を起こすので、み、みみみみなさんはあのふふふふたりをををわ!!!!」
「はーい、落ち着こうね。 とっても素晴らしい提案だと思うんだけど、俺の経験上、時を戻すのっていくら神様のお力でも不可能なんじゃなかったっけ」
「ほ、本当だ……」
「よーし、落ち着いて、俺の目を見てよ愛しき君」
「目が三つある……」
「え?」
「あ、いえ、なんでもないです。……そっかこれ、おれにしか見えてないんだ」
「ちょっと待って、君には俺にもうひとつ目が見えるの!?」
「ハハッ。 そんなわけない、ですよ?」
「俺の目を見て話し……え、なんでずっと俺の足を見つめ──まさかそこに三つ目の目があるっていうの!?」
「落ち着いてください。 モンスターがよってきちゃいます」
「正論だけどさあ!」(小声)
自分のパーティーの前衛と、他所のパーティーのヒーラーコンビがめちゃくちゃ騒がしかった。ただ、それもほんの僅な間のことだけで、直ぐに一応は許容範囲内の声量に落ちる。
それを見届けて、黎明の鴉のリーダーである黒髪の男は、彼ら二人ほどではないが思わずこぼす。
「なんだったんだよ、さっきのあれ」
訳が分からなかった。今回のダンジョン探索は順調だった。イレギュラーが常とも言われるダンジョンであったが、特段問題は何も起きてはいなかった。コブリン数体と交戦し、そして排除するまではであるが。
「追尾式の穴て……」
いっそコミカルな光景でさえあった。長らく、このダンジョンに潜ってきた冒険者としても、最も奇妙な体験と断言できる程度には良く分からない。
問題は、臨時ではあるが合同パーティーの内の二人がその穴に拐われたことであるが。
「うん、多分なんだけど謝っておくわ、うちのエースがごめんなさい」
「お前が謝る必要はないだろ」
この地域では平均的な、金色の髪をした魔法使いの女──一角獣の宿り場のリーダーが、隣に腰掛ける。
「いえ、知っての通り、まじでトラブルメイカーだからあの子」
「ああ……まあ…………」
「″聖騎士″って、例外なくうちの主から目をかけられてるから選ばれるんだけど、私達の神様ってこう、お気に入りをトラブルに巻き込ませるのが趣味なところが多分にあって…………」
「苦労してるんだなお前も」
水を差し出してやると、それを受け取った彼女は勢い良く一気にそれをあおった。
「ぷはあ! 絶対あともう一悶着あるわね」
「同感だ。 俺のところのカイニスも、つくづくトラブルと縁があるからなあ……」
二人とも、追尾式落とし穴へと落ちていったメンバーの無事を信じて疑わない。それくらいでやられるタマじゃない、ということは経験則で知っていた。
そんなことを考えていたからではないだろうが。
ゴゴゴゴゴと音を立てて、ダンジョンが揺れた。
「……絶対あいつらだな」
「……絶対そうね」
「終わったら、飲みに行かないか……」
「いいわね……」