天井とか壁って案外簡単に破れたりする
上を見つつ、この穴全体をぐるりと回って分かったことは、ここは四角の箱のような形状であるということだ。
結構な長さの落下を俺達は経験したわけなのだが、あそこは筒上な上に基本的に壁は土でできていた。一方、ここは土が固められていて、そこそこの硬さもある。まあ、歩きやすいからそれはそれで良いのだが。
「エミリア、何か見つけたか?」
「見つかったといえば、見つかった、かなあ」
なんでそんな微妙な答えなんだ。エミリアの指は、天井に向かっていたので、俺は視線をそこにやった。
なんの代わり映えもしない天井がそこにはある。
「天井だな」
「そう見えるよねえ。さっき、一瞬だけ光が漏れたのが見えたんだ。あと、よく見てみると、色も周りと少しだけど違う感じもしてる、んだけど……」
「…………すまん、正直わからん」
「だよね、気のせいかも」
「それはないんじゃないか?」
こいつの目は、かなり良いということは仲間内では有名だ。それこそ、大きな川を挟んだ対岸に立っている的が、針だったとしても余裕で当てられる程だ。
だからまあ、エミリアが見えたというなら、結構信用に値する。それと、今ほかに頼れる情報が無いってのも事実だ。
「じゃあ、そこをどうするかが問題なわけだが」
「私が壊して、君が警戒」
「破壊が前提かあ……」
考えてみれば、暫定的にあそこが通路に繋がるなんらかの構造であるのならば、多分その向こうは空洞だろう。
正規の開け方がわからない現状なら、破壊が選択肢になるのもやむ無しか。
「やるしかないか」
「じゃあ、早速…………取りあえず装備類こっちに持ってこようか」
そうだな。
エミリアが、片膝立ちの状態でぎりりと大弓の弦を引き絞る。
弓矢で、曲がりなりにも硬い天井を壊せるのかと言われると、エミリアならいけると答えるしかない。
この女、長遠距離狙撃が得意なのだが、今回みたいに破壊に特化して射ることもできてしまうのだ。本人曰く、「ものを壊すときは無駄な動きを混ぜる」らしい。
なんも意味がわからんし、それで破壊力が増すってのもよくわからない。ただ、それで本当に、狙撃も破壊もできているのだからもはや何も問うまい。
「はあっ!」
気合いをこめて射る。
矢は天井のエミリアが違和感を感じていた部分を寸分違わず飛んでいき。
そして天井には亀裂が広がっていく。
広がるのは良いんだが。
「これ、天井全部剥がれてこないか!?」
なんか色々降ってくる。
しかもだ。ここの穴全体を震わせて、ゴゴゴゴゴゴと地鳴りすらしてきた。
「私のせいじゃないよ!?」
天井はお前のせいだが。
その時、一際大きな破片が降ってくる。
「危なっ!」
とっさにエミリアを引き倒し、俺の身体の下に。彼女も彼女で瞬時に俺に、肉体強化の呪文を唱えてくれた。
やがて、地鳴りがしなくなり、天井から落ちてくる破片の雨も止んだ時。
目の前に現れたのは。
「階段…………?」