蟹光線
「飛ぶ」
「無し」
「穴を掘る」
「どれくらいまで掘ればいいんだ?」
「あきらめる」
「ありだな」
もう少し、この柵の仕組みが分かればやりようも考えられるかもしれないが、あいにくそれは無理だろう。なんせ、俺とエミリアでわかることは、とてもつよいこうげきりょくがある、ってことくらいだ。
そういう罠は、避けて通るのが、ダンジョン探索での基本だし、避けやすい道を見つけるのが俺の役目でもあるわけだ。
だから、見え見えの罠といえば罠である謎ビームを避けるために、この場から離れるのもなしではない。
ただ。
「魚介キメラ連中はどうやって外に抜け出したか、という話になるな」
「あー、そういえばそうだね。つまり、何処かに」
出口があるのかもしれない。
つまり、もう少しこの辺りを探索する必要がありそうだった。
『kniiiiiiiiiiiiiiiii!biiiiiiiiiiiiiiiiiiimuuuuuuuuuu!』
突然周囲が眩しくなった。俺とエミリアは同時に地面に転がって横に逃げた。
柵が消し飛んだ。
なるほど。
「ダンジョンだなあ!」
「感想がそれなのは変だよ!」
探索もクソもない。
一瞬、視界が真っ白に塗りつぶされていたのだが、それも回復する。
『gatigatigatigati!』
柵の中──つまり、魚介キメラ牧場の川を、陣取るのはくっそでかい蟹だった。
当たり前のように、俺たちを警戒しているし、爪をガンガン鳴らしていて、その先から煙がたなびいていた。
おそらくさっきの攻撃は、あの爪から放たれたのだろう。
理屈はわからないから、おそらく魔法なのだろう。
あの蟹が、あまりにもダンジョンすぎる理由はは、それだけではない。
「あの脚」
「タコ、だね」
「俺の見間違いだと信じたいんだが、背中に生えているのは」
「うーん、あんまり詳しくないんだけど、海草って言うんだっけ。君の故郷では、食べるんだったか」
出汁とかも取れるやつだ。うちの故郷では、かなり重宝されている。あと、お前も割と食ってるぞ。ギルドの飯には、毎日なんかしら使われている。
「俺と、お前の目がやられている可能性は」
「二人して同じ幻覚をみているなら、それはそれで幸せだと思わない?」
「こんなもんで幸せを感じたくないから、この可能性は却下だ」
ダンジョン探索の鉄則のひとつは、楽な思考に流されてはいけないというものがある。幻覚なら非常にありがたいが、この場合は変な攻撃を食らわせてくるでっかいタコ足蟹キメラがいるほうが厳しい思考であり、つまりは真実なのだろう。
「逃げるか」
「逃げたいね。でもさ」
あいつの攻撃の痕を見つめる。地面はえぐれており、そしてそれはどこまでも続いており──
「俺たちの目で、最後まで見えないってことは、射程はかなーりのもんだろうな」
「走りきれる?」
「祈れば」
太陽神とかが、都合よくなんとかしてくれないだろうか。
「私の主は、戦うほうをお望みみたいだよ」
「だろうな」
知っていた。
『bububububububububububu!』
爪を半開きにして、天井の方に向け始める怪物。多分、またもや同じ攻撃が来るのだろう。
「神経締め、するか」
「なにそれ」
「うちの故郷の蟹殺しのコツ」
殴るほうが、生き残れそうだった。だから、俺とエミリアは駆ける。




