乱戦コブリン
そこまで張り切って飛ばないほうが良かったかもしれない。目立ちすぎた。
「ピンチになったね」
「ピンチだなあ」
俺の唯一の魔法は、宙を走り回れるわけだが、持続時間は大したことがない。うちのリーダーいわく、無理やり誤魔化しすぎてるかららしい。
それ故、着地を余儀なくされたわけだが、ものの見事に、いろんな武器を持ったコブリンに囲まれた。
剣とか槍、弓とか杖あたりまでは分かるが、見たことのない武器持ってる奴もちらほらといる。
ただ。
『Gysaaaao!?』
そんな奴らは、次の瞬間には矢が刺さって、血しぶきを上げながら倒れていく。エミリアが速攻で殺した。
「あの武器を使われたら厄介だからね」
「知ってんのか」
「銃って言うんだ」
そんな話をしている間にも、次から次へと矢を射っていく。俺たちを囲うために密集していたから、狙い放題だった。
『Gyoa』
『Go!』
『Gyyyyyyyyyyyyy!』
ただ、ここのコブリン達はリーダーが言っていたように、一味違うらしい。今の立ち位置だと不利になると気づくと、即座にばらばらに散り始める。動きが、しっかり揃っているあたり、指示を出すコブリンまでいるのだろう。
なので俺は、そんな集団の中で最初に動いた奴に投げつけれる。
『Gi』
命中。ほかのコブリン達が、そいつを引きずってどこかに下がっていく。
ただ、期待したほど連中から、動揺はみれなかった。ゴブリンの表情の読み取りなんてできないから、なんとなくではあるが。
「しばらくこれでやろうか」
エミリアは矢を番える。
「私が殺しまくって」
「俺が偉そうな奴を狙う」
俺は、走る。
『アロー・レイン:弓の雨』
ダンジョンの天井から大量の矢が降ってくる。エミリアの反則技その1だろう。
コブリンどもの血が、いたるところで噴き上がる。
それでも、怯むことなく俺に近づいてくる槍や剣を持ったコブリンども。
完全に近づかれるまでの間に、ナイフをひとつ投げる。
暫定偉いコブリンに命中。
一息つく間もなく。
「おらあ!」
『Gb』
剣を持ったやつの首筋に、俺の剣を突き刺す。死んだかどうかの確認せずに、剣先にぶら下がるコブリンを振り回す。
『Gobeeeed!』
振り回されてスピードがついた死体は、そのまま仲間達のもとに飛んでいった。さすがに動揺したらしい槍持ちコブリンに、その死体が激突。ごしゃあと、硬いものがつぶれる音がした。
『Geeeee……』
『Ge!!!!!』
『Gea……』
『Geeeeeeeeeeeeeeee!』
何を言ってるのか分からないが、多分かなりビビったらしく、俺から距離を取ろうとするコブリン達。
とりあえず、指示を出していた奴は殺した。
「頭モンスターなのかな…………」
小声でつぶやいたつもりのエミリアの声を、俺の耳はバッチリ拾う。
誰がモンスターだよ。お前の方が、殺しているゴブリンの数は多いだろ。
コブリンたちが今度こそ散り散りになるのに、そう時間はかからなかった。




