テレビが元気な頃のバラエティーのドッキリの定番 落とし穴
少し歩いてみて、一つ分かったことがある。
「明らかに、加工されてる」
「ここのダンジョンだとそれが普通なんじゃない?」
エミリアがこう言ったのには、ダンジョンは大きく二種類に分けられるからという事情がある。ざっくり言うと、自然発生(というかモンスター達が勝手に集まってダンジョンっぽくなってしまったなんらかの穴)したものと、遺跡系のものだ。ここは後者になる。
遺跡系とは、なんらかの理由で滅びた文明の連中が、一応の目的をもって作り上げたいわば施設みたいなものを指す。ちなみに、うちの土木工事部門連中が言うには、ダンジョンの構造を作るのはやろうと思えば普通にできるらしい。その代わり、モンスター達を意図的に配置すること、つまるところ飼い慣らすことはできないそうで、そこさえクリアできればダンジョンを工作できてしまうそうだ。
まあ、モンスターのいないダンジョンは、ただの迷宮になるからなあ。ダンジョンと迷宮は似て非なるものなのだ。後者の方は、なんでも王宮にもあるそうだ。行ったことはないが。
「いや、結構違う。少なくとも、ここはなんらかの意図がちゃんとあって作られたってことになるからな」
つまり、モンスター──例えばロックイーター──の巣穴とかではないということだ。
で、なんらかの意図を持って作られているのならば。
「脱出用の通路とかがある可能性が上がる」
「単にトラップっていうパターンもありそうだけど」
「トラップにしては殺意低いだろ」
ここのダンジョンの製作者連中は生真面目なのだろう、例えば落とし穴であれば底に棘やらモンスターやら毒やら、とにかく害を与えてくるものが仕掛けられている。
「…………追尾してくる穴の入り口とこの深さなら…………たいがいは即死じゃないのかなあ…………?」
「俺はこれまでで既に四回落とし穴に落ちたんだが、どれも酷かったぞ?」
まじでこのダンジョンは性格が悪いので、普通に落ちれた試しもなかったのだ。なんだよ全部の落とし穴に返しが完備されてるダンジョンって。まじで、落とし穴一つであっても侵入者を殺してやるという情熱すら感じられた。
「なんでそんなにも落ちてんのさ」
「お前んとこの、先見師の占術とやらでやる探索が反則過ぎるだけだよ」
なんで、ダンジョンに潜る前からある程度のトラップの位置を探せるんだよ。俺らなんて出たとこ勝負だぞ。
「それと、エミリア。何かを探すときは上を見ながらの方がいいぞ」
「なんで、上なんだい?」
「コブリンが、見つけられない位置になにかあることを疑う方が手っ取り早い」