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肉体が物理現象を超越

最初に考えるべきは、着地だった。ダンジョンの落とし穴での死因は様々あるが、そのうち上位に入るのが落下死らしい。

そして、俺達は今、思ったよりもかなり長い穴の底に向けて、頭から一直線状態。要するにかなりピンチ。


「″律空天歩(りっくうてんぽ)ぉぉぉぉぉぉぉ!″」


あああああ!顔がだばだば風に煽られるぅぅぅぅ。

それでも俺は魔術を使って先ずは少し加速し、エミリアに追い付く。そのまま、彼女を捕まえ、


「弓、邪魔ぁ!」

「そん……いわれ……も!」


そうだよね、しょうがないもんね。頑張れ俺の右腕。

腰に回した腕に、文字通り全力を込めてなんとか抱き寄せて、ぴったり密着。


「″天歩″」


再度魔術を発動。今度は、天を踏んで壁に近づく。一応、自由になっている左手で、腰のナイフを引き抜いて、そのまま壁にぶっ刺す。

ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりと、ナイフは悲鳴とついでに火花を立てながら、落下速度を落としていく。

頭から一直線だった体は、速度が落ちたとことで無事に足を下にした状態にはなれそうではあった。

全身と右腕と左腕が死にそう。

泣き言を言っても仕方ないのだが、言いたい。心折れそう。


「″ストレングス・アーム″」


それを察した訳ではないだろうが、エミリアが俺に強化魔術をかけてくれる。

助かる。もうちょい、早く欲しかった。

やがて、速度を完全に殺しきることに成功し、俺達は宙ぶらりんの状態で止まることに成功した。

成功したけど普通にこれピンチ継続なんじゃねえかな……。


「エミリア、地面まで俺もたねえわ。代わってくれ」

「空を飛ぶなんて訳のわからないこと、君以外に出来ると?」

「俺のやつは、別に飛んでるんじゃなくて、歩いてるだけなんだが」


コツは、空気の塊を作って、そこを踏む感じで。


「君に常識を教えてあげよう。私たち普通の人間は──地面しか歩けないんだ」

「少なくともお前は、普通の人間じゃねえだろ」


じとっとした目で睨まれた。

全然関係ないんだけど、体勢が体勢だからさっきから、さっきからエミリアの銀の髪が顔にあたってて、こそばゆい。

エミリアは、そんな俺の気持ちに気づくこともなく、やれやれと首を振り(当然俺の顔に髪があたり続けている)、ため息を吐く。


「しょうがないなあ」

「すまんね」




「よし、地面だね」

「…………」


エミリア、お前やっぱり普通の人間じゃねえよ絶対に。なんだよ、壁走りって。俺を背負い続けたまま、なんなら俺が最初にナイフを刺した地点よりも長い距離を、壁に直角になりながら走り続けるって。




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