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受け入れられすぎると焦るやつ

支配種とはなんであろうか。

支配種とは、ダンジョンに生きるモンスターのうちごくごく一部が冠する名前である。

ダンジョンよって、モンスターの種類の数はまちまちである。何種類ものモンスターがいるダンジョンもあれば、一種類のモンスターが群れとして生活していることもある。

だが、いずれのダンジョンにも共通していることとてして、必ずある一体のモンスターがダンジョンの主となる。

要するに割と文字通りの存在なのだ。


「ダンジョンを支配できるのが、支配種だよね」

「そうだな」

「そんなのが、地上に、いた」

「ああ」


支配種は、絶対、必ず、特別な個体だ。支配種が存在するからこそ、ダンジョン内にモンスター達が存在できている。支配種となったモンスターと、例えばゴブリンが支配種のダンジョンであったとして、そのダンジョンでオーガが存在していた場合、この支配種コブリンが死ねばオーガも死ぬこととなる。

だから、支配種のモンスターは、ある意味ではダンジョンそのものと呼べるかもしれない。全ての生き死にを司るのだ。


「それも──龍が」


支配種だからといって、強力な個体とは限らない。だが、元より強力なモンスターである龍が、支配種となればそれは限りなく最強に近くなるであろう。

ましてや、そんなやつがそもそもダンジョンと数段劣るモンスターしかいない地上に現れれば、どうなるかは考えるまでもない。


「俺が住んでいた街は、まるまるひとつ滅んだ」

「……………そうなるだろうね、もし本当に君のいう通りなら。 むしろ、街一つで済んだのが幸運だ」


エミリアの言う通りで、だからこそこの話をすぐに信じた奴はこれまでにいない。

そもそも、あんな状況で子供の見たものを信じる大人なんているはずもなく──幻覚だと断じられた。それに加えて、もし仮に本当に支配種のドラゴンであれば街一つの被害で済むはずがないだろうという考え方もある。

俺の仲間達だって、最初は俺の言うことを決して信じなかった。今だって、俺のこの″体験″はきっと信じていない──あいつらは多分、自分で言うのも恥ずかしいが、俺だから信じているのだろう。

それ故、エミリアの反応も、俺の話を信じないことも、分かりきっていたことだ。


「それじゃあ、私の名前で教会に連絡いれなきゃダメだね」

「なにを?」


え、いや本当になにを?


「だって、支配種の龍なんて地上に現れたら、避難・誘導・その他諸々できないとダメじゃん」

「いやいやいやいやいや」


ちょっと待って欲しい。

こいつまさか。


「信じるのか? 俺の話を?」

「信じるよ」


嘘だろ、からかってるとか、そういうあれじゃないのか。

そう思いたかったのだが、俺の真ん前の女は至って真剣だった。


「たかが、ダンジョンであんなに色々あるんだから、この世のどこかに地上に棲む物好きな支配種が存在したって何も不思議はないでしょ」

「不思議はあるだろ」


常識的じゃない。

あり得ない。


なんで俺が、俺の話を否定しようとしてるんだ……………?

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