出たとこ勝負になるしかない状況
それじゃあ俺達が練り練った作戦を紹介しよう。
「作戦名:肉盾吶喊!」
リーダーがやけくそ気味に声をあげる。本来なら大声をあげてしまうと、モンスターがどこかしらから湧いてきたり、声に反応するトラップなんかが発動してしまうこともあるから、全くもって望ましいものではないのだが、今この謎の空間(というかゴミ廃棄場)においては、叫んでも問題はない。
あと、叫ばなきゃやってられないというのもあるのだろう。
「作戦って割に、無策じゃない?」
「しっ」
エミリア、お前また誰かを言葉で傷つけるつもりなのかよ。
因みに作戦内容は、
「まあ、確かにな。 取りあえず、変なゴーレムを押さえられるのが前衛しかいないから、俺とエミリアは途中で前衛が他のナニかに襲われないように盾になって、いざとなればヒーラーちゃんが回復して、攻撃はリーダーとお前んとこの魔法使いさんがするっていう作戦もくそもない手なのは間違いないけどさあ」
俺のいつものお仕事、要するに索敵やら探索やら、あとちょくちょく入れる前衛への手助けが今回はできそうにもないから、役目なしとなってしまい。
「私さ、これでもこの面々の中で一番強い自信あるんだけど?」
「でも、腕力じゃ俺にすら勝てねえじゃん」
ということで、ゴーレムを押さえられないエミリアも同じく役割無しとなってしまった。
あと、一番強いはいいすぎだ。距離を取られたら確かに俺はこいつとはやり合いたくないが、近くにいるのならば話は別になる。
「一瞬だけなら勝てるし!」
「まじで、一瞬だけだろ。 肉体強化を全振りしてなんとか作り出せる一瞬じゃ今回は無理って話も聞いただろうが」
「思うんだよ。 だからって、私達を盾扱いすんのひどくない?」
「それはそうだ、盛大にそう思う」
まあこれも、一重に。
「魔法使いどもがその、謎のゴーレムとかいうやつを、一発で仕留められるほどの呪文を唱えられないことが原因なんだがなあ!」
「ねえ!本当にねえ!」
「うっせえわ!!!!!!!」
「こっちは本気なの!!」
「「こっちも本気だよ!」」
ガギンと岩に金属がぶつかる音がした。
ヒーラーちゃんが剣を振り下ろして岩を叩いたのだろう。そしてヒーラーちゃんはいつもと変わらぬ表情で。
「あの……さすがに、そろそろ、入りませんか」
はい、すみません。
◆
俺達はようやく、扉を超えた。
「早く来いよ!」
「そうだね、何をノロノロしてるの! そんなんだと、うちのヒーラーちゃんは上げられないよ!」
「なんで、一番命がけの二人がノリノリで進んでいくの?」
「「やけくそ」」
いやこう、早く終わらせたいんだよ。さっきからずっと索敵を一応しているのだが、モンスターの気配は欠片もないし。となれば、完全に音も気配も一切ないモンスターか、トラップがあることを考えなければならないのだが、そうなると正直できることは何もなく、なんなら未知の恐怖というのは凄まじいものがある。
反撃はしても無駄ということが前もって言われてたら余計に。
だが、幸いというべきか、あっさりとこの無茶苦茶な作戦(というか無策)は終りを告げた。
扉の向こうに広がる景色は、壁という壁は全体的に妙につるつるしているのだが、その中に。
「なんだ……?」
例えるならば、とてつもなく大きな箱がそこにはあった。