遠足前日に眠れなくなる感じに近い
物理的に穴に埋まろうとしているヒーラーちゃんは前衛に掘り返させるとして、こちらはようやく穴を掘り終わったため、やっとこさ目的の部屋へと入ることができるようになった。
「なんで、ここに入る必要があったんだっけ……」
エミリアはすっかり疲れた様子で少し遠い目になっている。
「ここから出るためだろ」
気持ちは分かる。思った以上に扉を開けるのに時間がかかったせいで、目的がよく分からなくなりつつあった。
で、俺とエミリアが普通に扉の向こうに足を踏み入れようとしたら、拳大の瓦礫が飛んできた。背中の方から。
先に気づいたエミリアが、俺を引き倒しながらしゃがんでくれなかったら、危なかったかもしれない。
「ちょっと、リーダー達ひどいよこれは。 私たちじゃなかったら命の危機すらあったよ」
「あなた達だったから、こんな止め方せざるを得なかったのよ!」
「お前らはともかく、俺達はちゃんと事前に作戦とか練って突入したいんだよ!」
俺は、俺に馬乗りになっている女と顔を見合わせる。
リーダー達、なんかキレてない?
丸くて硬くて強いゴーレムがいたらしい。あと、それのせいで他の面々はここに来たそうだ。
「つーことで、だ」
「他のゴーレムも、ここの部屋にいる可能性が高い、と」
「そうだ」
ようやく納得。もし、俺とエミリアがあのまま突入していたらそいつらが出てきてたかもしれない。聞いている限り、そいつはあんまり攻撃はしてこないようだが、対処法が分かっていない現状、用心するにこしたことはない。
「最初から、言いなよそれを」
「到着したら、私は意識を失くしてるわ、あなた達はなんか扉の前でごちゃごちゃしてるわで共有する暇もなかったのよ」
ああ、うん。全員、冷静さが失われてるな俺も含めて。
本来ならば、合流した時点でこんなことは伝えておくべきだし、俺達も確認すべきであった。
浮き足立っている。これが現状を説明するのに最も正確な表現だろう。
流石に、今ここまできてそれに気づかないようだと、まともにダンジョンなんかに潜れるはずがない。そわそわと腰を浮かしていたエミリアと脳筋バカだったが、どっしり地面に腰を落ち着かせた。
「ほんじゃ、作戦を聞かせてくれ」
「ああ」
「なるべく、じっくり時間をかけて説明するわ」
「クッキー食べる? 他は、干し肉と蜂蜜もあるけど」
エミリア、ステイ。
ヒーラーちゃん、お茶もありますじゃない。
というか、お前らの食糧なんか菓子系充実してんね。
暖かいお茶、おいしい………………。