英雄ならば色を好むからしょうがない
「で、何の用だエミリア」
わらわらとアホなことだけしてた連中が扉前まで押し掛けていく。
「あれ」
ピンと伸ばされた指の先。どう考えても、天井を指差している。
「あそこにも、紋様入ってるんだけど」
「見えねえぞ」
立ち位置の問題かもしれないと思い、エミリアの後ろに回って肩に顔をのせて上を見てみる。うーん、天井。
「やだ、もしかしてカイニスの視力、雑魚すぎ………?」
「お前がバグってるだけだよ」
普通のやつには見えねえよ。
同意を求めるために、他の連中に目を向けると。
「わわ……」
「教育に悪いから見ない方がいいよ」
「きゅ、急に目を塞がないでください! び、びっくりしちゃいますから!」
なんか手で目を覆われてる奴と、覆ってる奴(バカ前衛)。
「見ました奥さん」
「こほん…………ええ、あんなに顔近づけて……はしたないわね! お母さんあの子のあんな顔見たことありませんわ!」
よく分からん茶番を繰り広げる魔術師共。
俺とエミリアは顔を見合わせてから。
「何やってんだお前ら」
「どういうつもりの反応?」
全員(ヒーラーちゃん覗く)から舌打ちされた。
そんなどうでもいいやり取りはともかくとして。
「あそこに紋様があるとしてだ。 わざわざ俺をというか、俺たちを呼んだのは?」
「その……もう少しで扉は開けられそうなのですが、念のためにエミリアさんが見つけているという紋様も解読したくて、ですね。 だだ、このままだと読めないので」
「あー、なるほど」
エミリアには見えるけど読めないから、俺が上がってどっかしらに写しとるなりしてきたらいいってことね。
「エミリアが字を読めないばかりに、俺がパシられる、と」
「違いますうー! 読めはしますぅー! 意味がなにも分からないだけですぅー!」
「なんも変わらんだろうが」
「大体君は読むことすら無理じゃん」
ちょっとなに言ってるかわかんない。
俺はまだなにか言いたそうなエミリアを無視して飛んだ。
『日が昇ることは終わりを告げることである。すなわち──まぶいちゃんねーとの激アツタイムも終わっちゃうと言うことである。勇ある者である俺も時間の壁はまだ越えられず──』
「ちょいちょいちょいちょい!」
待てや。頑張って写し取ってきた紙を見せるなりこれだよ。
何のポエムつーか、なにをいきなり言い出したのさヒーラーちゃんは。
「カイニス、邪魔しないでよ。扉に書かれてた紋様を解読した結果なんだからさ」
「紋様の中身、ファンシーすぎんだろ!」
「おれたちの主は、そういう方なので……。 むしろ、脚色されていない分、ここの遺跡の持ち主は限りなく本流の教えを学ばれてきたのでしょう」
太陽神さあ!