別動隊:変なゴーレム
時は、彼らが合流する結構前まで遡る。
今回のリーダーになってしまった男の胃は劇痛した。
嫌な地鳴りがして、半ば原因を確信しながら、原因共の探索に乗り出したまでは問題がないと言えばなかった。
だが。
『GiGiGi……GaPi』
「こいつらなんだと思う」
「新種のゴーレム」
「リーダー! こいつ、硬えわ。 俺の武器じゃ無理そう」
ゴーレムというモンスターがいる。
それらは、ざっくりいえばなんらかの技術によって作り上げられた、二本の手と二本の足を持った、ヒト型にそっくりなモンスターだ。
実のところ、厳密にその分類が為されている訳ではない。というか一冒険者はそこまで、こいつらの学問的な区別に興味がないため、なんとなくゴーレムっぽかったらゴーレムとして認定してしまうのである。
その上で、改めてさっきからガピガピ鳴いてるモンスターのことを見てみた。
『Pi……GaGaGa?』
つるりとした造形に、手足ではなく移動用とおぼしき四つの車輪が底についてる。ヒト型というよりも、くずかごに近い形にリーダーには見える。
「ゴーレム……か……?」
「細かいことを気にしていると、禿げるって教典に書かれてるわよ」
「流石にうそだろそれは……」
足止めに徹している、前衛が剣を振るう。ギィンと鈍い音がして、やはりそれでダメージを与えられている感じは全くしなかった。
「あ、あの、援護を」
「腕のしびれとれる呪文とかあったりしない?」
「痛み止めなら。 その代わり五感まで鈍りますけど……」
「やっぱ遠慮しとく。 普通に体力回復できるやつなんかちょうだい!」
「どう思う?」
「打撃系の攻撃は通らさなそうね」
「同感だ。 どうする?」
「あなたのは置いとく方が後々良い感じがするから、今回は私がやってみるわ」
冒険者がパーティーを組むことは、魔術師にとっては大きなメリットがある。つまり、呪文を唱えるための時間を、他のメンバーが稼げるということだ。
『火よ火よ、従順足る僕たる火よ。我は御力を与えられし者。 我が尊き主に代わり命ずる。 解かせ、説かせ、溶かせ。 融点拡大:ファイアーブロウ!』
絶大な魔力によって練り上げられた炎の塊。かつて、ダンジョンにおける支配種たるモンスターをも燃やつくした青々と光るそれは、ツルツルくずかごゴーレムを覆いつくした。
もう一人の魔術師たる彼も、次に使うべく呪文を唱える準備をしつつその行く末を見守る。
果たして、
「は?」
『PiPiPiPi!!!!』
無傷。そして、さらに。
「あ、おい、まて!」
『Giiiiiiiiiiiii!』
文字通り身を盾にした前衛を引きずりそのまま、魔術師の女のもとへ一息に迫った。
『Piiiiiiiiiiiiiii!』
赤い光が──ゴーレムにとって目にあたるであろう部分が強く赤く輝いて。
「え?」
「あ?」
「は?」
「こ、これって、エミリアさん達の…………」
その場にいた全員が例がいなく、穴に呑まれた。
「全員生きてるか」
「あの二人に巻き込まれた大体こうなるよね」
「あの……、その、大丈夫ですから、抱き締めるのやめてください」
「ああ、ごめん、つい」
ひとまず、全員無事なことを確認して、少しだけリーダーは安堵した。腕の中の、あのゴーレムに最も近づかれた女は意識は無いが、眠っているだけでケガは無さそうだ。
ひとまず、女はヒーラーに任せてから、前衛と共に辺りを見渡して。
『君…………こ………ないも…………ね』
『そ…………悪い……』
『いや………………の…………が悪いか…………ね』
「当たりひいた?」
「当たりなのか外れなのか。 なんかあいつらが無傷なのが無性に腹立たしい」
取りあえず、分断されていたパーティーメンバーは全員揃った。