表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
identity  作者: 小野葉
1/5

和真と朔哉

一部、人の死等を表す表現が使われておりますので、苦手な方はご了承ください。

2962年7月3日。


この日から、人間にとってのいわゆる地獄が始まった。

地獄というのはどういう事かというと、今までその存在が認められていなかった妖怪の存在が認められた日だ。

その前から幾度となく目撃されてきた妖怪。

しかし、妖怪が存在すると立証する程の物的証拠がなかったため、その存在は認められていなかった。


そして6月30日、事件は起きた。

とうとう妖怪が人間を殺害したのである。害されたのは20代の女性で、大量に血液を吸われた事による出血死だった。

犯人は5・6歳の子供の吸血鬼。

大人の、経験のある吸血鬼なら、しっかりと自分の欲望をコントロールできるため、こんな事にはならなかったのだろうが、年齢的に幼いうえに吸血鬼になってからまだ日が浅いため、自分の欲望をコントロールできなかったのだ。

そう、人間の血を吸いたいという欲望を……。


人間が妖怪の犠牲になったという事実は、またたく間に広がって、政府側もさすがに対処せざるおえない状況に追い込まれた。


そして先ほども言ったように、7月3日についにその存在が認められ、その日から妖怪と人間の全面戦争を始まったのである。

これは今や、オレ達人間が知っている、当たり前の常識だ。

今日は2970年4月6日。

あの日から、だいたい8年程経過した。

未だに、その戦争は続いている。

しかし戦争はオレら人間にも、アイツら妖怪にも、何も良いことはなかった。

ただただみんな、死んでいくだけだ。

ムダに命を捨てるだけなのだ。

なのに未だに戦争を続けているのは、人間の意地、だろうか。

人が死んだことで戦争が初まり、そしてその戦争で

ムダに命を捨てるだけなのだ。

なのに未だに戦争を続けているのは、人間の意地、だろうか。

人が死んだことで戦争が初まり、そしてその戦争でまた人が死んでいく。

そしてまた戦争…という悪循環。

はるか昔に起きた戦争もこんな感じだったのだろうか?


…まあ、それは置いておいて、人間と妖怪の戦争はたくさんの犠牲を生んでいる。

オレもその1人だ。戦う兵が少ないからと、16歳を境に兵士として戦争に駆り出された。

オレは今、18歳。

名前の方は、この年齢で2年間生き残った天才として知れ渡っている。

オレの友人と共に。


「和真〜、一緒に銃撃の練習しに行こうぜー!!」

その友人こと、美奈禽みなと 朔哉さくやは朝っぱらテンションの高い様子でオレに抱きつく。


「……あぁ、ほら、行こうぜ?」


オレはそれだけ言って、スタスタと射撃場に向かう。

そんなオレの後を朔哉が

「待ってよ、和真〜」

と叫びながら追いかけてくる。

そんな朔哉の様子に、オレは微かに微笑んだ。


コイツはオレの親友だ。

コイツと一緒だからこそ、オレは今、必死に生き残ろうと、こんな腐った世界の中で抗えるんだよな。

そこまで考えてから、オレはふと思った。


オレは『コイツが死んだら、どうなるんだろう?』。

……ダメだ、ダメだ!!

そんなことを考えるな!!

オレと朔哉は生きるんだ。

最後まで、生き残るんだ!!

そして、幸せな世界の中で、あの時はこうだったよな、とか、あれは悪い夢だったんだよなぁ、とか2人で話しあうんだ。

だから、だからオレはー……。

「おい、和真?どうしたんだよ?和真??」

「えっ!?」


いつのまにか、自分の世界に入り込んでいたらしい。

朔哉が心配そうにオレの顔を覗き込んでいる。


「ん?あぁ、何でもない。じゃ、行こうぜ」

「そうか?なら良いんだけど」


ひとまず一段落したものの、朔哉はオレのことを信じきれていないらしい。

疑いのこもった目でオレを見つめている。


「ほら、さっさと行こうぜ。早く行かないと良い場所とられちまうぞ」


オレは誤魔化すようにそう言うと、朔哉の手を引いて射撃場に向かった。

射撃場に着いたオレ達は倉庫へと向かう。

そのとき

ピンポンパンポーン

射撃場内に放送がかかる。


「今、この時間帯に放送か?訓練時間はまだだよな、朔哉」

「ん?そうだな。緊急放送か何かか?」


『第一部隊に所属の皆様は至急、会議室へ』


男の野太い声がスピーカーから響く。


『繰り返します。第一部隊に所属の皆様は至急、会議へ』


どういうことだろうか?

どうして、オレと朔哉が所属している第一部隊が呼ばれたのだろう。

もしかして、今日戦っているはずの第三部隊がしくじったのか?

『死』。

オレの頭の中にその単語が浮かんだ。

不安の波がオレを襲う。

その気持ちがオレの顔にでも現れていたのだろうか?

朔哉がオレに声をかけてくる。


「和真、心配ないよ。第三部隊は、あの『健太先輩』がいるじゃないか」


『健太先輩』こと、小林 健太は29歳のオレらの先輩。

やたらと強い事で有名だ。

冷酷非道。

けど仲間には、本当の本当に優しくて思いやりのある人だ。

だから、彼を嫌う人間はここには誰1人としていないし、後輩はみんな彼を慕っている。


「そうだよな。……ってか、オレは別に心配なんてしてねーし!!」

「ハハハ、強がんなって和真〜」「強がってなんかねーよ。オレはマジだ。オレはお前と、絶対に生き残る。例えオレらしか人間が生き残らなかったとしても、オレら2人は絶対に死なない」


オレは真顔で朔哉に言ってやった。

すると朔哉は可愛らしく笑った。


「なんだよ〜、愛の告白ー?和真クンったら、そっち系の趣味が〜??」


むっ、オレが真面目に話してんのにコイツは……。


「茶化すなよ」


オレは思いっきり顔をしかめて膨れっ面をする。「ハハハハハハ、冗談だよ、冗談。例えどんな事があろうとも、2人で生き残ろうぜ」


ゴツンと朔哉が軽くオレの肩をグーで叩く。

オレも笑って、朔哉の肩を叩いた。

ハハハハハハ、と2人で笑い出す。


「競争しようぜ、和真」

「あぁ、会議室に先に着いた方が勝ちな」


オレらはただただ夢中になって、薄暗い廊下を走った。

皆が皆、暗い、死をかたどったような表情をしている中、ひだまりのような笑顔で。その後、どんなに辛く苦しい運命が待っているとも知らずに。


生まれて初めての投稿だったので、比較的短い物となってしまいました。

物語の方は、次から色々と変化していきます。

ぜひ、次もご覧ください。

最後まで見てくださり、本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ