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050 結構マジなんだぞ!

狼『コワイヨォ』(プルプルプルプル)

 ――目の前で身を寄せ合いプルプル震える白狼(我が子)達を眺めつつ、そんな少し前の出来事を思い出しながら俺は口を開いた。


「あれが作れるシステムとなれば、随分と融通の利くシステムなんじゃな~。狼達は未だにビビっておる様じゃぞ? カノン」

「あ、あれは! 皆さんが見たいって言うから仕方なく使っただけで! 別にあの子達には当ててないじゃないですか! 冤罪です! 私は無罪ですよハクお姉さん!」

「あれは俺もビビったからよ。それに自分達の住処に大穴開けられたらそりゃあビビるだろ」

「はいはい! メルルもカノンちゃんの全力には驚きました! カノンちゃん格好良かったです!」

「確かに凄く格好良かったね。 ……でも、あれってあのままなの? カノンちゃん」


 俺がニヤニヤと笑いながらカノンを弄れば、彼女は必至で無罪を主張する。まぁ、その事は皆解っているので、それぞれ軽い様子でフォローを入れつつ、最後にオトネが森の惨状についてカノンに質問した。


 カノンは賛辞を受け少し嬉しそうにした後、その質問に答える。


「か、格好良かったかな? それなら良いんだけどね。……ああいったオブジェクトは一週間も有れば元に戻りますよ、オトネさん」

「そうなんだ。それなら直ぐ元通りだね」

「それなら安心ですね! 良かったです!♪」


 メルルの元気な感想を受けカノンは微笑を返す。どうやらあんな大穴でも一週間で塞がるらしい。ゲームとしては長いが現実としたら短いな。因みに俺がぶった切った大木も、少しずつ生えて来てるが確かにまだ切れたままだった。


 そんな事を思い出しつつ、カノンの魔術(スペル)について気になる事が有ったので聞いてみる。


「にしても幾ら極振りとはいえ、カノンの魔術(スペル)はとんでもない威力じゃったのう~。魔方陣が出る魔術(スペル)も初めて見たわい。あれは上位の魔術(スペル)が基になっとるんじゃろうか?」

土台(ベース)は全てレベル1の魔術(スペル)ですよ、ハクお姉さん」


「なんと!? あの威力で初期魔術(スペル)じゃったのか。デメリットが大きいとはいえ、やはり極振りはロマンがあるのう~♪」

「キャンキャン!♪」


 彼女の答えに驚き、それと同時にカノンのロマン溢れるプレイスタイルに胸と尻尾を躍らせる。シロも俺の気分に釣られる様にテンションを上げては尻尾を振っていた。そんな俺達の様子をカノンは嬉しそうに暫し眺め、続きを口にする。


「魔方陣については、『方陣魔術』というスキルを取ると使える様になりますよ。このゲームには『魔法』スキルとは別に『魔術』スキルという物が有りまして、それは魔法を補助する為のスキルなんです。方陣魔術はMPを追加で支払う事で魔術(スペル)の威力や効果何かを上げる機能があるんです。


 魔術には他にも、同じ魔術(スペル)を同時に使える様になる『並列魔術』や、魔術(スペル)秘匿(ルーン)文字に変換する『紋章魔術』何かがありますね。ルーン文字を刻んだ護符何かも作れるみたいですよ」

「ほほう! 魔術スキルなんぞが有ったんじゃな! また心(くすぐ)られるスキルじゃな~♪ じゃがその様なスキルは見た覚えが無いのう? そのスキルショップに行けば手に入るのかの?」


「魔術スキルは王都の魔術ギルドに行けば売ってますよ。王都以降はレベル15以上推奨なので、(じき)に行く事になると思います」

「成程のう、初期では手に入らぬスキルなんじゃな。また一つ楽しみが増えたわい♪ ありがとうのうカノン」


 俺の感謝を受け、カノンはまた嬉しそうに表情を綻ばせ頷きを返す。幾ら試しても同じ魔術(スペル)を同時には使えなかったが、やはりシステム的に規制されていたらしい。その『並列魔術』というスキルを取れば、両手で同じ魔術(スペル)を使える様になるみたいだ。


 魔技(マジックアーツ)を多用する俺のプレイスタイルから考えれば少し欲しいスキルだが、枠が足りない現状、取得した所で付け替える事が出来ない為、今無理に王都へ行く必要は無いだろう。恐らく他にも新しいスキルは見付かるのだろうが、レベル15であればそこまで時間が掛かる訳でも無い。その為、俺は焦る事無くいつか王都に行く事に思いを馳せる。


 そんな事を考えていると、カノンは自身の魔術(スペル)について捕捉説明を入れる。


「それと、あの魔術(スペル)の威力は少し無理して出してる威力なので、普段はあそこまで威力は出ませんよ」

「うむ? そうなんじゃな。それは最初に使った物と関係しとるのかの?」

「確か魔術(スペル)を二つ使ってたよな?」

「流石にあの威力をポンポン出せたらバランスが崩れちゃうもんね。少し安心したよ」

「はいはい! いつもは普通の魔術(スペル)を使ってますよ! それでも凄く強いので、カノンちゃんと一緒だと安心です!」

「ワフ!♪ワフ!♪」


 その説明を俺達は何気なく聞いていたが、

 そんな俺達にカノンも何気ない様子で爆弾を投下してきた。


「有難うメルルちゃん。あの魔術(スペル)も私のオリジナルアーツの一つですよ。『過剰増幅炉(オーバーブースト)』は魔力強化(バフ)魔術(スペル)に方陣スキルを組み込んで、効率が落ちるギリギリまで効果を上げて作った魔術(スペル)なんです。一度魔術(スペル)を使うまで魔力を大きく上げるバフ魔術(スペル)なんですよ。


 その補助を受けて、全てのMPを注ぎ込んで撃つのが私のオリジナルアーツ、『七星光弾(セブンスバレット)』です。ただ、消費MPが一定量を越えると効率が格段に落ちるので、注ぎ込んだMPに比べて威力は10分の1にも満たないんですけどね」

「「「……は?」」」

「本当に全力なんですね! 凄いですカノンちゃん!♪」

「キャンキャン!♪」


 カノンの説明を聞き、メルルとシロは楽しそうに燥いでいたが、他の三人は呆けた顔を見せて絶句していた。そんな俺達に気付く事無く、カノンはメルルとシロから賛辞を受け、嬉しそうに笑っている。


 カノンお前、マジで一撃に()ての()を込めてんのかよ!?


 ポーションは連続して使えないので、そんな事をすれば魔法特化の彼女は直ぐに何も出来なくなるだろう。最早ただの鴨である。彼女はそんなヤルかヤラれるかを極めたプレイスタイルだったのだ。そりゃあ、あんなバカげた威力にもなると納得しつつ、俺達はカノンに聞こえない様にそれぞれ言葉を溢す。


「……成程の。それであの威力な訳なんじゃな。であれば、一,二を争う所では無く、威力は間違いなくカノンが一番じゃろうよ」

「……俺も大概だとは思うけどよ。カノンもヤバかったんだな」

「……その言い方はどうかと思うけど、確かに凄いね。ウチには到底真似出来ないよ」


 そんな俺達にカノンは結局気付かないまま、思い出した様に『テックメイク』システムについて説明を続けてくれた。


「因みに『オリジナルアーツ』は10レベルに一つずつ、登録出来る数が増えて行きますよハクお姉さん」

「ほほう、そうなんじゃな。であれば、レベルが上がればそれなりに数を揃える事が出来る訳じゃな――」


 彼女によれば、システムを使って作れるオリジナルアーツは10レベル毎に一つずつ増える様だ。だから10レベルでチュートリアルクエストが発生したのか。今行けば一つは登録出来る様で、どんな風に作れるかは解らないがそれは行ってから色々試した方が速いだろう。ちょっと楽しみだな! 尻尾フリフリ♪


 そう思って興奮しながら、俺はカノンの説明に言葉を加える。


「――ならば、最終的には主要スキルは全てオリジナルに置き換わりそうじゃ。そうなれば、更に多種多様なプレイスタイルが産まれるじゃろう! 実に楽しみじゃわい!♪」

「確かに、魔技(マジックアーツ)を使い熟してるハクはかなり特殊なプレイスタイルだよな。(いず)れは何奴も此奴もそれに近くなるのか……、腕がなるぜ!」


 戦闘狂(バカ)二人が嬉しそうに燥ぐ様子を見て、オトネが呆れた様子を見せながら口を開きつつ、カノンとメルルも言葉を重ねる。


「……戦闘狂二人は発想がすぐ対人戦に向かうんだね。まぁ実際そうなんだろうけど」

「そうですね。今はまだレベルの高い人でも30を超え始めた所ですけど、レベル50位になれば全て独自の技術(テクニック)になるだろうって言われてますよ、オトネさん」

「はいはい! メルルもどんなスキルを作るか楽しみです!」

「キャン!♪キャン!♪」


 そんな皆の話しを聞いて、シロが『ボクも作る!♪』という様に楽しそうに吠え尻尾を振りながら存在を主張していた。


 だが、それに気付いたカノンが無慈悲な事実を告げる。


「あ……、テイムモンスターはオリジナルアーツを作れないから、シロちゃんには無理なんだよ……、ごめんね、シロちゃん」

「ワフ!? クゥ~~ン……」

「ああ~、それもそうか。まぁ落ち込むなよシロ。オリジナルが作れなくたってお前は強いんだからよ!」

「げ、元気だして! シロちゃん! ハクちゃんだってシロちゃんを頼りにしてるんだから! 落ち込まなくても大丈夫だよ!」

「そうですよシロちゃん! オリジナルアーツが無くたってシロちゃんは強いです!」


 どうやら『テックメイク』システムはプレイヤー限定のシステムらしく、それを聞いたシロは寂しそうに項垂れていた。それを見て、皆がそれぞれシロを元気付けようと的外れな事を言っている。どうやら彼等は、まだまだ常識や無意識に縛られて自らの可能性を狭めている様だ。


 そんなんじゃ俺に勝ち越す事は出来んぞ!

 ムッツリ金欠辻斬りチョロ侍ゼン! 尻尾フリフリ♪


 だから、俺はシロに落ち込む必要など無い事を教える為

 また、彼等の自由を邪魔している常識をぶち壊す為に動く事にする。


「はっはっは♪ お主らはまだまだこのゲームの事が解っとらんの~♪」


 俺はバッ!と立ち上がり腰に両手を当て、堂々とシロを正面に見据える。今俺の右手には体で隠す様に、高等魔術(ハイスペル)『ストームブリーズ』が準備されている。俺の突然の行動に全員が座ったままキョトンとした顔で見上げていた。シロはちょこんとお座りをしたまま耳を伏せてまだ落ち込んでいる様だ。


 その様子も可愛いけど、落ち込む必要何か無いんだよ、相棒。尻尾フリフリ。


「シロよ! お主が一体誰の相棒なのか! 忘れた訳ではあるまいな! たかがシステムのサポートが受けられんから何じゃ! そもそも()()()がいつそんな物に頼った! お主ならば必ず! 魔技(マジックアーツ)でも何でも使えるに決まっておろうが! シロォ!!」

「!?」


 俺はシロの名を呼びながら、右手の高等魔術(ハイスペル)を握り潰す。そうすれば右手の獣爪紋は蒼白く強い輝きを放ち始め、辺りには強い冷気が漂い始めた。俺の言葉を聞き、シロはハッとした表情を見せる。俺単独ではまだ四重奏魔技(カルテットアーツ)は発動出来ていない。


 だがシロに常識何てツマらない物に縛られるなと教える為にも!

 今ここで、俺は自分の限界を超えて見せる!!


 獣爪紋は、まるで俺の意思に応える様に更に強く輝きを増す。その様子はまるで彼にも強い意思が有る様に感じられ、俺はこんな傍にも相棒が居たのだと笑みを溢す。


 一緒にツマらない事で落ち込んでる相棒を励ましてやろうぜーー! 尻尾ブンブン!


 俺は蒼く煌めく右手に、『強爪』と『迅爪』を発動させ『蒼光弾』を発動させる。今回の魔技(マジックアーツ)は三種複合の三重魔技(トリプルアーツ)では無く、四種複合の四重奏魔技(カルテットアーツ)だ。その限界を超えた煌きはまるで、母なる海を思わせる様な美しく深い蒼さを秘めていた。


 完成した魔技(マジックアーツ)に俺は不敵な笑みを添えて

 握り拳と共に天へ届けと突き出し叫ぶ!


「シロならば! 四重奏(カルテット)五重奏(クインテット)も思いのままじゃーーー!!!」

「!?!?」


 解き放たれた蒼く煌めく弾丸は瞬く間に傍に聳える大樹を超え、俺達の上空でその力を解き放った。瞬間、世界を塗り潰すかの様に蒼白い光が広場を包み込み、上空では解き放たれた氷の嵐が吹き荒れ周囲の空気を凍て付かせた。その余波は俺達が要る地上にまで影響を及ぼし吹き荒れる。そして上空で凍て付いた空気はシロを応援し祝福するかの如く、氷の結晶となって俺達の元へと降り注いだ。


 煌めく氷の結晶と魔術(スペル)の輝きが俺達を彩る中、シロは解き放たれた力が今までの俺の限界を超えている事に直ぐ様気付き、驚きに目を見開きながら空を眺めていた。


 俺はその様子を満足しながら眺め、両手を腰に戻しつつシロへと宣戦布告する。


「何時までも腑抜けておったら、ワシ一人で先に行ってしまうぞ! シロ!!」

「!?!?!? ――ワンワンワンワン!!!」


「そうじゃ! その意気じゃシロォ! 解ったならば早速特訓するぞ! ワシに続けーーーー!!!!」

「ア゛オ゛オオオォォォォォォン!!!」


 俺の宣言にシロは直ぐ様立ち上がり、『ボクだって負けないよ!!』とばかりに吠えたてて来た。もうそこには、先程の様な落ち込んだ様子は微塵も残されてはおらず、その眼は力強く輝いている。その様子を見て俺は笑い、決意を固めたのならば後は突き進むだけだ! と俺達は大樹の元を離れ広場へと共に駆け出すのだった。


 俺達の突然の行動に他のメンバーは付いて来れず、ポカンとした表情を見せていたが直ぐに再起動して各々が話し始める。


「そうか……、そうですよね! ハクお姉さんは実際に使ってる訳ですし、全然可能性は有るんですよね! ……私の思い込みのせいで、シロちゃんの可能性を狭めてしまう所でした。やっぱりハクお姉さんは素敵です!♪」

「……カノンだけのせいじゃねぇよ。ハクとは何度も戦ってるのによぉ、俺もまだまだ解って無かったぜ。……くそ! おいシロ! 俺も混ぜろ!! 俺の技がスキル無しで武技(アーツ)に発展する所を見せてやるぜ!!!」

「いや流石にそれは無理だと思うよゼン……。ってのは野暮だね! ウチも混ぜてーーー! シロちゃーーーん! ハクちゃーーーん!!」

「はいはい!!♪ メルルも混ざりたいです!! メルルにも教えてくださいハクお姉さまーーーー!!♪」

「ま、待って下さい皆ーーー! シロちゃんごめんねーーー! 私にも教えて下さいハクお姉さーーーん!!!」


 俺達は広場に着けば直ぐ様特訓を開始する。俺はシロに見せる様に様々な魔技(マジックアーツ)を使い、シロはそれを真似する様に自分の小さな四肢に冷気を纏わせ振るっていた。そんな俺達の元へと、他のメンバーもやって来て一緒に特訓を始める。


「はっはっは♪ 良かろう幾らでも教えてやるぞ!

 よいか! コツは!! 気合じゃーーー!!!」

「キャン!♪キャーーーーン!♪」

「気合ですね!! 解りました!! ハクお姉さま!♪」

「「「いや流石にそれは無い」」」


 俺のアドバイスにシロとメルルは素直に応じ練習を始めるが、

 他のメンバーは呆れながら言葉を返して来た。


 結構マジなんだぞ! プンプン!!

ゼ「やってやるぜーー! オラオラオラオラオラオラァ!!」

シ「キャンキャンキャーーーン!♪」


ハ「いやゼンよ……、それは流石に無理じゃろう」

オ「だよねぇ……」

カ「あはは……」

メ「二人共楽しそうです!」

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