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025 七大陸の歴史

宗教についての説明回

「ふむ。折角じゃ、ワシは彼女に加護を貰っておる身でもある事じゃし、拝んでおくとするかのう」

「じゃあメルルも! モア様のお陰でハクお姉さまに会えたので! お礼参りします!」

「え、じゃ、じゃあ私も、お参りしておこうかな?」

「ワフ!♪ワフ!♪」


 俺達がモアの像にお参りをすると、頭の中でリン、という鈴の鳴る様な音が響いた。その瞬間アナウンスが流れる。……どうでも良いけど、メルルがお礼参りと言うと何か少し違った意味に聞こえるな。さっきも教会に用はねぇ! とか大声で言っていたし。


【命と狩猟の女神:フェンリシア・モアの関心が少し強くなりました。加護『フェンリシアの寵愛』に変化は有りません。】

復活地点(リスポーンポイント)が、常春の町『ハルリア』に変更されました。以降、死亡した際は現在の地点で復活します。】


「お? モア殿の関心を引けた様じゃの?」

「あれ? ハクさん初めてなんですか? もう随分と経ちますけど……」

「初めての教会で参拝すると! 神様との繋がりが強くなるんですよ! ハクお姉さま!」

「キャン!♪キャン!♪」


「まぁ、それ程強くなる訳では無いんですけどね。やっておいて損は無いですよ、ハクお姉さん」

「ほほ~、そうなんじゃのう。これは()い事を知ったわい」

「キャン!♪キャン!♪」


 モアの像に参拝した結果、彼女の関心が強くなった様だ。その理由をメルルが元気に教えてくれる。この元気さは一緒に居るとこちらも元気を貰えるな。今回は『少し』となっているので、カノンが言う様にそれ程繋がりが強くなった訳では無いのだろうが、塵も積もればという奴だろう。新しい町に行ったら忘れずに拝んでおこう。


 そういえば、先程の神殿にも像は有ったが、あそこでも効果が有るのだろうか? いつかそちらも試しておかなければ。シロは俺とモアの繋がりが強くなった事が嬉しいのか、可愛く吠えながら喜んでいる。


 俺達がそんな話をしていると、教会に仕える神父が曲がった腰を両腕で支える様に腕を後ろに回し、微笑みを湛えながらやって来た。神父は高齢の無人族の男性で、白髪に日焼けの無い白い肌、目が隠れる程豊かな白い眉、それと口全体を覆う様に生えた白い髭が長く伸びていた。完全に仙人である。ふぉっふぉっふぉとか絶対言う。


 服装は黒に近い濃い緑色をした動き易そうな修道服を着ており、首から大樹を(かたど)った小さなネックレスを下げ、服にはそれを囲う様に七つの星が三列、大中小と三セット交互に描かれている。頭には同色の修道帽(クロブーク)を被っており、その前面中央には教会のシンボルと同じ、大樹を囲う二十一の星が白く小さく描かれていた。


「ひょっひょっひょ。随分と熱心に参拝されておりますな、お若いお嬢さん方には珍しい。とても有難い事ですな。それに其方(そちら)の白いお嬢さんからは少しモア様の御力を感じます。モア様に愛されている様ですなぁ。いやはや、素晴らしい事じゃて」

「え? ハクお姉さんもう加護のランク上がってるんですか? 教会に来たのは初めてなのに、速いですね」

「そうなのカノンちゃん? メルルはまだ上がってません! 流石です!ハクお姉さま!」

「はっはっは、まぁの~。……この一週間、色々有ったんじゃよ。お陰で教会にも来れんかったしの」

「ハッハッハ!♪」


 主に狼達に親殺しと思われたり唾を吐かれたりな……。そして爺さんはふぉっふぉっふぉでは無く、ひょっひょっひょだった。こいつ絶対エロ爺だな、ハクちゃんの勘は当たるんだ! ……何か?


 そしてカノンには俺の加護がランクアップしている事がバレてしまった。何バラしてくれとんじゃNPCーーー! 加護の系統もバレてんじゃねーか! 尻尾ピーン!


 まぁ、この二人なら別に良いけど。俺達の話している様子を神父さんは好々爺然とした表情で頷きながら眺め、終わると見るや話しを再開する。


「儂はこの天樹七星教会にて司祭を務めておる、ワルゼンと言う者じゃ。儂は日々、ここで天樹様へと祈りを捧げながら、訪れる者達にこの天樹様と七神様について、話しをさせて貰っておる。お嬢さん方には是非、儂の話しを聞いて頂きたいんじゃが、少しどうかのう?」


 彼が名乗った所で、彼の頭上に名前が表示される。しかしその名前にはこれまでとは少し異なり、名前の前にNPCを表す『N』のマークが付いていた。どうやら彼はノン(N)プレイヤー(P)キャラ(C)だった様だ。ホント、プレイヤーと見分けつかねーなこのゲーム。尻尾ゆらゆら。


 だが、今日は既に色々あって少し疲れているので断りを入れる事にする。興味は有るがまた後日で良いだろう。


「うん? スマンがワシは今、話しを聞く気h」

「はいはい! メルル聞きました! この世界は元々一つの大陸だったんだそうですよ! ハクお姉さま!」

「それが、天樹と言われるあの大きな世界樹を巡って、争いが起きてしまったんだそうです。ハクお姉さん」


「お、おう。そうなんじゃな。じゃがワシは少し疲れておるから後日改めt」

「あ、うんそうなんじゃよ、それでじゃね、そのあらそi」

「その争いを納めたのが! あの七人の神様達なんだそうです! ハクお姉さま!」

「その際争いに悲しんだ天樹が、二度と同じ争いが起きない様に、と大陸を七つに分けてしまったのがこの世界の成り立ちで……」


「そう、そうなんじゃよ? そうなんじゃけどね?」

「……何じゃか、スマンのぅワルゼン殿、この子達も悪気は無いんじゃが」


「うん、そうじゃね。あれだけ楽しそうな顔で悪気が有ったら、儂もう何も信じれんくなるよ」

「うむ、ホント、スマンのう……」

「ワフ!♪ワフ!♪」


「その時には色んな精霊さん達も手伝ってくれたみたいでね! ハクお姉さま!」

「更には、七天龍と呼ばれる巨大な龍達が大陸の管理を買って出て、やっと世界は平和に……」


 俺は疲れていたのも有って、今余り聞く気が無かったのだが、お構いなしにちびっ子二人が楽しそうに話し始めてしまった。それにしても二人の対比が面白い。メルルは元気一杯大興奮、という感じで身振り手振りを交えながら笑顔を振りまき一生懸命に話し掛けてくれる。


 それに対してカノンは落ち着いて話しているが、何時もよりかなり早口になっており、顔は真っ赤になって興奮している様子が良く解る。見るからに大興奮しているしているメルルの顔色は変わらないのに、落ち着いているカノンの顔は真っ赤になっている様子がとても可笑しく、俺は二人に気付かれない様にその様子を楽しむのだった。尻尾フリフリ。


 (かたわ)らには仕事を奪われ悲しそうに笑う神父様の姿。必死で自分の仕事を取り戻そうと頑張っていたが、その事に二人は気付く事は遂になく、二人は競う様にドンドンとヒートアップしていった。ホント何か子供達がすいません……。 


 というか爺さんと喋っているとキャラが被ってしまう、出来れば関わりたくないんだが……。困惑する爺キャラ二人に構わず熱狂するちびっ子二人の話しは、少々散らかっていたので話しを纏めると――


 嘗て世界は平和で争いの無い、一つの大陸だった。


 その大陸はあの天を覆う程に巨大な、天樹と言われる世界樹イグドラシィルを中心として纏まっていた。天樹を中心に森が広がり――


 森の管理と世界樹の世話を森人族(エルフ)

 森の動物と共に生き、森を巡る水の水質管理は獣人族が

 地人族(ドワーフ)は全ての道具を作り生活を豊かにし

 巨人族はその巨体を生かして建物などの建築を

 無人族は数の利と森の外縁に有る広大な土地を生かして食べ物を満たし

 小人族は各種族を繋ぐ行商を行っていた。

 この時まだ、幽人族は居なかった。


 ……そもそも、元となる魔物自体が居なかったらしい。


 世界は六つの種族と天樹が互いに調和を保ち、争い無く穏やかな日々を送っていた。


 平和な世界に文明は順調に発達し、人々はその数を際限無く増やしていく。

 その平和は長く長く続き、それは永遠に続くとさえ思われていた。


 だがその平和は、……決して永遠などでは無かった。


 安寧が人々の数を順調に増やしていく中、食料を担っていた無人族は特にその数を増やしたのだ。身体的な能力で言えば他の種族に劣る無人族だが、その数は他の五つの種族を纏めた数に匹敵する程に増えてしまう。


 それが無人族を助長させる結果となった。彼等は自分達こそが世界を、(すなわ)ち天樹を支配するべきなのだ、と思い始める。


 無人族は他の種族に向けてそれを主張したが、当然、他の種族はその主張を受け入れなかった。今上手く回っているそれを、態々変える必要は無いのだから。だが、助長した無人族は止まらなかった。いや、自分達の主張が否定された事で彼等は他の種族を恨む様にさえなり、その動きを密かに、それでいて大胆に事態を加速させていく。


 彼等は他の種族にバレない様に武器を産み出し蓄え、その扱いに習熟する為に自らを鍛えた。平和なその世界で、そんな事が行われているなど他の種族が露ほどに思う事など無く、事態は誰にもバレないままあっさりと進行していった。


 そして遂に、事態は動き出す。


 森を囲う様に数を増やし繁栄した無人族は、一気に森へと侵攻を開始したのだ。それと同時に、それまで一手に担っていた食料の供給も断った。突然の事態に他の種族は困窮した。争いという物を知らなかった彼等は、事態に対処する術を持ち合わせてはいなかったのだ。


 彼等はまず対話を望んだ。何かの間違いだと。

 きっと彼等も直ぐに元の彼等に戻ってくれるのだ……と。


 だがそれは、余りにも夢見がちな希望……、いや、最早妄想とすら言える代物でしか無かった。


 無人族は彼等の希望をあっさりと磨り潰した。


 虐殺という最悪な形を以って。


 これには流石に五つの種族も黙ってはいなかった。彼等は直ぐ様手を取り合い、天樹連合軍となって無人族に対抗する。だが、争いに備えて来なかった彼等では、周到に用意してきた無人族には全く歯が立たなかった。食料の供給を断たれた事も大きく、幾ら森の恵みが有るとはいえ、増えた人類の数を賄える程には到底ない。森では田畑を作る場所も無く、また彼等にその知識も技術も無かった事が大きかった。


 連合軍は直ぐ様力を失っていく、連合軍側はその数を大きく減らし、あわや無人族が天樹に辿り着こうかというその時、天よりの使いが現れた。彼等は光を纏い、その背中には翼を持つ、美しい姿をしていたという。そして彼等は言う『自分達が時間を稼いでいる間に、準備を整え立ち向かえ』と。


 天使達の活躍により時間を得た連合軍は、直ぐ様行動を開始した。元々道具作りを得意としていた地人族(ドワーフ)は敵の武器を模倣し、直ぐ様無人族を超える武器の数々を産み出した。巨人族達はその武器と自らの巨体を用いて敵を押し止め、獣人族は森での有利と速さを生かし敵を翻弄する。身体能力に劣る森人族(エルフ)は弓を持って彼等を援護し、小人達は天使から魔法を学び、その高い魔力で以って敵を葬った。


 食料については、巨人族が森の一部を切り開き、連合軍総出で田畑を作るが当然間に合わなかった。そこで獣人族は涙を流しながら、自らの友である動物達と、彼らが管理する水域を汚染しながらも、水に生きる生き物を食べる事で難を逃れる事となった。その時の獣人族の無人族に対する怒りは、きっと計り知れなかっただろう。


 元々、身体能力に優れていた連合軍は天使の協力もあり、瞬く間に無人族を森の外へと追い出す事に成功する。そのまま、連合軍が勝利を収め平和を取り戻すかに見えたが、事態は又もや予想外の勢力によって覆される。


 無人族側に地の底から悪魔が味方に付いたのだ。

 彼等は多様な姿をしていたが、それらは皆、醜悪な姿をしていたという。


 悪魔の参入によって、天使は悪魔の対処に追われ事態は均衡を見せた。森の外に勢力を広げる無人族と、森での活動に優れた連合軍。彼等は互いが互いに、攻め手を欠く事になったのだ。


 そのまま争いは続き、それは1000年以上も続いたと言われている。


 その永き争いの果て数多くの命が失われ、栄えていた人類は種族を問わず数を減らす事になる。大地は血と怨嗟の声に汚染され、澱みは失われた命と共に世界を巡る。そうして世界は嘗ての輝きを失っていった。


 ――その結果、世界に魔物が産まれたのだ。


 魔物の存在は両軍に多数の犠牲者を出したが、それでも争いは止まらなかった。その事を嘆き、天樹は異なる世界から一人の英雄を招き入れる。それは後に雲海人と呼ばれる事になる人達の始まりの一人、彼は無人族男性であり名を海堂仁(かいどうじん)といった。彼は所有(あらゆる)武術を修めた達人で、自らを日出ずる国から来たのだと人々に語る。


 彼は自らと袂を同じくする種族による蛮行に義憤を燃やし、争いを止めるべくその鍛え上げた技を使う事を決める。そして、そんな彼の志に共感し立ち上がる者達が現れた。それは世界で最初に生まれたとされる幽人族の男性を加えた六人。その六人にジンを加えた七人は各地の戦場を駆け、遂には永きに渡る争いはその歴史に終止符を打たれる事になる。


 その偉業を成し遂げた七人こそ、現在この世界で信仰されている七柱の神々である。


無人族の男性で数多くの武術を修めた『武と修練の神:ジン・カイドウ』

森人族(エルフ)の女性で薬学に精通する『森と薬学の神:ティエン・ティ・ティーズ』

地人族(ドワーフ)の男性で鉱石と鍛冶を極めた『地と鍛造の神:ポルポラ』

獣人族の女性で命を守り慈しむ精霊の友『命と狩猟の神:フェンリシア・モア』

巨人族の男性で情熱を持って戦場を駆けた『火と戦場の神:トゥール・トゥーラ』

小人族の女性で空を舞い癒しを与えた妖精王『空と医療の神:ナーミア・カロン』

幽人族の男性で死を齎す始まりの魔王『死と魔導の神:ヴェルピ・アンヴァーダ』


 彼等七人の手によって、世界は再び平和を取り戻した。


 当然、その道程(みちのり)には数多くの困難が待ち受け、そこには多くの悲しみと物語が有ったのだが……、それは今は良いだろう。因みに、この時フェンリシアが連れていたのが、あの精霊王フルーレン・モアだ。本当に偉大な精霊であった様で、そんな彼女に認められカードを賜ったのが少し誇らしくも有る。


 争いが収まった事で世界は平和を取り戻したが、天樹は争いが起きてしまった原因の一つとして、それぞれの種族がそれぞれ一つの事に専念して来た事にも原因が有るとした。皆が他種族に頼る事無く生きていける様に一度距離を置き、自分達の事を見直して欲しい……と、天樹は各種族に自らの苗木を一つずつ与え、世界を七つに分けそれぞれに住み分けさせたのだ。


 いつかまた、一つになれる様にと願いを込めて。


 それはきっと連合軍の敵となって、他の種族から恨まれる事になった無人族に対しての配慮もあったのだろう。各地で被害を出した魔物から産まれた事で、他の種族から差別を受けていた幽人族に、安住の地を齎す意味も有ったのだろう。それは彼の魔王の願いでも有った、自らの種族を救って欲しいという願いに応える為にも。


 その際、争いの原因となった無人族と同じ種族の武人であるジン・カイドウは、無人族を代表し責任を取ってその場で腹を切ろうとしたのだが、天樹がそれを止めた。天樹自らが異なる世界から招き、見事に願いを叶えてくれた彼を責める筈も無く。


 また、それとは関係無しに天樹は無人族を許したのだ。無人族に責任は無い、争う原因は自らに有り、力不足な自分をどうか許して欲しい。争いを止められなかった責任も自分が負うべきだと。親の責任を子が取ってはならないから、と。


 また、七つに分れた世界を管理する為に七天龍が名乗りを上げた。分れたばかりで不安定だった大陸が安定するまで、その管理を請け負ったのだ。それは、分れた人類を監視する意味も有ったのかも知れない。その補助として七柱の精霊王も各地に派遣され、彼等は自らの眷属を率いて各大陸の精霊を管理している。その為、各大陸は各精霊王と七天龍の性質を色濃く映し出しているのだ。因みに、フルール殿は管理者では無いので、割と自由に出歩いているらしい。


 そうして、七つに分れた世界に平和は訪れた。悪魔は地の底に封印され、天使は自らの居る天界へと帰って行ったとされ、その両者が今どうなっているかは誰にも分からない。


 天樹についても同じで、彼の場所へは海からでも空からでも近付く事が出来ないらしいのだ。陸は繋がっていないので、言わずもがな。何かしら行く方法は有ると思うので、何時か絶対に行ってみたいものだ。尻尾フリフリ。


 七人の英雄は没後、天樹によって神として迎え入れられ、今は人々に加護を与え支える存在となっている。彼らが人類に加護を与えるのは、人類の過ちを忘れさせない為かも知れないな。人類に利益を与える事で宗教へと目を向けさせ、そして歴史を学ばせるのだ。


 そういった伝説を語り継ぎ、人類が同じ過ちを繰り返さない様、今は近付く事も出来なくなった天樹によって、世界は支えられているのだという事を忘れない様に、天樹七星教が作られた。


 こうして、世界に平和が訪れましたとさ、めでたしめでたし。


「成程のぅ。存外、壮大なストーリーが有ったんじゃなぁ。中々面白かったぞ、ありがとうのう、カノン、メルル」

「はい! メルルはハクお姉さまのお役に立てて何よりです!」

「因みに、今各種族が交流出来てるのは、造船技術や魔法技術が発達したからだそうですよ。元々一つの大陸だった時は、食料にも困って無かったので海に出る技術は無かったみたいですね。戦争中に食料を必要とした連合軍は内地ですし」

「全部じゃぁ……。儂の言いたい事が、全部言われてしまったんじゃぁ……。儂の老後の唯一の楽しみじゃと言うのに。結局、一言も喋れんかったんじゃぁ……。グスン」

「ワフワフ」


 やべっ、普通に二人の話しを聞いていたので、神父様の存在を忘れていた。四つん這いでプルプルと嘆く神父様の頭を、シロが可愛いお手々でポフポフと叩き慰めている。……シロが可愛いからいっか。尻尾フリフリ。


【クエスト達成!

 『教会に行こう。』

 チュートリアルクエスト

 概要  :復活地点(リスポーンポイント)を変更した後、

      神父から七大陸の歴史について話しを聞く。

 達成条件:復活地点(リスポーンポイント)を変更        1/1

      七大陸の歴史について話しを聞く。1/1

 報酬  :100exp】


 シロを眺めていると、チュートリアルクエストをクリアしたアナウンスが来た。どうやら二人の話しでも達成出来た様だ。神父からは一切話しを聞いていない。ウケる。


 報酬は経験値100ポイントと少ないので当然レベルアップはしない。まぁ、本来レベル1の時に貰う報酬だろうから仕方ないだろう。


 傍らで、楽しそうに歴史について議論を交わす二人の話しを聞きながら、ふと思う。


「天使と悪魔の出て来るタイミングが都合良過ぎるじゃろう」

「ワフ!ワフ!」


 確かに、天使のお陰で無人族の魔の手から天樹を守れたし、悪魔が連合軍の勝ちを邪魔しに来たも解らなくは無いが、何ともご都合主義な展開だな。熱い展開ではあるのだが、いっそ天使が介入しなければそこで争いは終わっていた可能性もあるのだ。


 まぁ、暴走した無人族に天樹がどんな扱いを受けるかは分かった物じゃないし、最悪気に入らねーとか言って燃やす可能性もあるとはいえ、死者の数は格段に減っただろうに。……まぁ結果論か。流石にそのまま千年も争い続ける何て誰も思わないよな。


 俺の周りではちびっ子コンビが歴史について白熱しながら話し合い、その傍らでは神父が(くずお)れ嘆いている。やはりこの世界の神殿は嘆きの神殿だな。そんな神父を尻尾を振りながら可愛く慰めるシロを眺めつつ、俺も尻尾を振るうのだった。

ワ「折角のワシの出番が……」(しおしお)

シ「キャン!♪」(フリフリ!)

ハ「シロかわい」(フリフリ♪)


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