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019 子犬様を追って

何かケラケラ笑いながら、変な話しを書いている作者が居るらしい……変人かな?


なお素面(しらふ)だった模様。


繰り返す、素面だった模様!!

Side ~???~(※約:ちょっと意味が解らない)


 俺はゴブッソリーニ・G・ゴブリソン。仲間からはGGG何て言われてるゴブ。決して台所に出る黒いあれじゃねぇゴブ。黒い三連星(意味深)何て言われてねぇゴブ。ミドルネームのGは、何時かでっけぇ男になるGIANT(ジャイアント)のGゴブ。


 俺達は今、普段自分達が居る森からある事情で離れ、出稼ぎに来てるゴブ。ここは俺達が居る森よりも強い奴等が縄張りにしてるから、本来なら絶対来ない場所ゴブ。それでも来ないと、大切な嫁と息子を食わせてやる事が出来ないから、来ざるを得なかったゴブ。待ってろよ、ゴブラテス、ゴブリーヌ。父ちゃんが必ず御馳走を食わせてやるゴブな。


 この森にどうしても来なければいけない時、俺達は10体以上のゴブリンで編隊を組んで遠征に来るゴブ。それだけの数を用意して、やっと一体の狼を狩る事が出来るゴブが、帰る時にはその数を半分に減らすのが通例ゴブ。だが今回はそうじゃ無かったゴブ。森に入ってすぐ、まだ誰も死なない内にたまたまばったりと、普段は見掛けない様な小さな子狼を見付けたんだゴブ。


 しかもそいつは小さいくせに、やたらと美味そうな匂いを漂わせていたゴブ。良くは解らないゴブが、きっとこいつを食って力を付ければ、今俺達の森で幅を利かせている、ゴブガングのグループにだって対抗出来る様になるゴブ。そうすればこんな危険な遠征をする必要も無くなるゴブし、村の奴等だって苦しい思いをしなくても良くなる筈ゴブ。俺は……、絶対に失敗する訳にはいかねぇんゴブ!!


 途中で可笑しな三人組を見掛けた気がしたが、そんなの今は気にして居られないゴブ。……何だかそのうちの一人から矢鱈(やたら)と寒気がした気がしたゴブけど、……多分気のせいゴブ!


 俺は嫌な予感を振り払いながら、森を駆けるゴブ。


 ……この森はとても豊かな森ゴブ。草木は力強く萌え、その鮮やかな緑は、まるで生まれたばかりの赤子ブリンだった頃のゴブラテスを思わせる様な、未来への煌めきと情熱を秘めているゴブ。あの時は本当に嬉しかったゴブなぁ、あの子の手に初めて触れた温もりは、今でも鮮明に思い出せるゴブ。花々の香りは色濃く漂い、何時か小さかったゴブラテスが、笑いながら作ってくれた花束を思い出させるゴブ。あの花束はもう枯れてしまったけど、今でも箱に入れて、押し入れに大事にしまってあるゴブ。


 時折、甘い香りを漂わせるポポルの実は、かつて若い頃に一度だけ、ゴブリーヌとのデートで一緒に食べたのを思い出したゴブ。たった一つのポポルの実を、二人で分け合ったゴブな……。お前はもうお腹一杯ゴブなんて嘘ついて、俺に一口多くくれたのを、俺は何時までも忘れないゴブ。あちこちで見かける薬草は、一度俺が大怪我をして帰った時に、ゴブリーヌは必至で搔き集め、一晩中泣きながら俺の看病をしてくれた事を思い出させるゴブ。その時俺は『ああ、こいつを一生幸せにしようゴブ』と、一人密かに誓ったんだゴブ。


 この森は本当に自然豊かゴブ。あの子狼を食べる事が出来ればきっと、例え全てでは無くても、この森に()る恵を得る事が出来る様になるゴブ。そうしたら、ゴブラテスはまた花束を作ってくれるだろうゴブか……。ゴブリーヌがもう心配しなくて良い様に、薬草だって一杯蓄えられるゴブ。何時かポポルの実を三人で一緒に食べようゴブな。三人で一つ何て、小さな事は言わずに。一人一つずつ何て、ちょっと贅沢な夢だって見れるゴブ。


 だから父さん、頑張るゴブな。二人とも、心配しないで待ってて欲しいゴブ。ゴブラテスには俺の冒険譚を、ゴブリーヌには一本の花を、お土産に持って帰るゴブ。楽しみにしてるゴブよ。


 その時、森に一つの咆哮が轟いたゴブ。


 何を言ったのかは解らないゴブが、きっと解っても、もう無駄だろうゴブ。


 俺は本当は見たくも無いゴブが、リーダーとして見ない訳にはいかないゴブから、咆哮の上がった後ろを振り返るゴブ。そこには俺達小鬼なんてちゃちなもんじゃない、物凄い形相で此方を睨む、本物の鬼が居たゴブ。


ゴギャァ!?(何あれぇ!?)


 その鬼は咆哮を上げたかと思うと、直ぐ様森の中に飛び込んで来たゴブ。鬼はとんでもない速さで俺達を追い掛け始めたゴブ。


ゴ、ゴブギャーー!!(に、逃げろーーー!!)


 俺は直ぐ様前を向き、後ろを走るゴブリン達に危険を知らせたゴブ。でも、その時には、既に森は嫌な静けさになっていたゴブ。まるで、この世界にはもう俺しか残って居ない様ゴブな……。僅かな風切り音が聞こえた事で、茫然と振り返るゴブと。後ろに居た筈の仲間達は既に亡く、目の前にはただ、白い鬼の、目を見開いた顔が有っただけだったゴブ。



 ――俺は、嫌な予感が現実になる事を、きっと最初から解ってたゴブ。



 母さんを頼むゴブ……、ゴブラテス。

 息子の事、任せる事になってすまないゴブ……、ゴブリーヌ。


 ……父ちゃんみたいに、弱くなるなゴブよ。

 ……不甲斐ない旦那何て忘れて、逞しく生きてくれゴブ。




 最後の、願いは……二人に……届いた、だろうゴ、ブか……。




 ああ……死にた、くない、ゴブなぁ…………。




 ああ…………二人に、会いた、い…………ゴブ……なぁ…………。








Side ~白い鬼(ハク)


「………………えぇ、……何だ? ……これ」


 何だろう、今、とんでもなく酷い事をした様な気がする……。

 まるで、ずっと違うと言い続けていた親殺しをした様な罪悪感が……。

 後、何か不本意な渾名を左上の方から感じる様な……。


 い、いや、多分。いや絶対! 違うはずだ! そうに違いない!

 オレハ、ゼッタイ、ワルクネェ!!


 ……何だか最後に倒したゴブリンが、何処かへ向かって、悲しそうに手を伸ばしている様に見えたのだ。その眼には痛みだけじゃない、涙が浮かんでいる様にも見えて。『ゴブガゲグ、ゴブギーグ』と誰かを求める様な声さえ出していた様な気がする。


 ……えぇ? 何これぇ?? 罪悪感がすっごいんですけどぉ???


 今この場には9()()のゴブリンの死体が有る。それは今、ゆっくりとポリゴンになって消えているのだけれど……。何とも言えない後味の悪さに、少しの間茫然としてしまう。そういえば、一体手応えが浅かった気がするが……、今ここに居るのは全て消えかけているので、多分気のせいだろう。というか生きていたとしても、今更追撃する気にもなれないが……。


 ゴブリン達はまぁ弱かった。流石一ツ星ランクのモブである。最初の一体を『迅爪』で追い掛け一撃で倒し、その後は順番に流れ作業だった。最初にこっちを見た奴が何か叫んでいて、それに気を取られたせいで、その時の切り掛かりが浅かった気がしたんだけど……。結局、何か有るのかと少し警戒したけど特に何もなかったしな。まぁ、その叫んでいたのが最後の後味悪かった奴なので、それがある意味一番ダメージではあったけど……。


 正直、この一週間で溜まったストレスや鬱憤をゴブリン共に八つ当たりした感は否めない。だが結局、最後で何かモヤモヤする物を抱えてしまったな……。それに、これだけ倒せばレベルも上がると思ったのだが、経験値は一ミリも入っていなかった。何だこれ? そんな事を考えていると、ゼン達が追い付いて来た。


「どうした? ハク。こんな所で立ち止まって。狼は見失ったのか?」

「ハクちゃん大丈夫? 何か難しそうな顔してるけど……」

「いや、大した事ではないんじゃがな……」


 そうして、二人に何が有ったかを軽く説明すると、オトネは納得した様に頷きながら答えを返して来た。


「これ、特殊イベントだったんだね」

「特殊イベント?」


「そう、発生自体稀らしいんだけど、一部の特殊イベントは関係するNPCに対して、専用のAIが割り当てられる事が有るんだって。そうすると、そのNPCにランダムでカバーストーリーが生成されて、人によって難易度に変化が産まれるらしいの。勇敢で手強い敵になったり、臆病で逃げ回る味方になったりね。スキルや使う武器なんかも変わるらしいから、そうする事で人によって攻略法が全然変わって、事前情報が当てにならなくなるんだって」

「はぁ~~、なるほどのぉ~~。攻略情報の公開に厳しいこのゲームらしいのう~」


「そうそう、そういう事。だから、特殊イベントに当たると全部自分で考えないといけなくて、結果もどうなるか解らないんだって~」

「うむうむ、相分かった。……結局の所、此奴らにはそのカバーストーリーによって、帰りを待つ人がおるかもしれん、という事じゃな。……はぁ、……後味が悪い事には変わらんのう」


「……まぁ、確かにそうだね」

「……そうなるな。テイムの時もそうだけどよぉ、何でこう、心を抉る方にえげつないんだよ、このゲームは……」

「……全くじゃな」


 結論が出た所で、結局後味の悪さは変わらなかったので微妙に重い空気が漂う。その空気を打ち破る様にオトネは説明を続けた。


「それと、経験値が入らないのも仕様だね。特殊イベントは内容によってエンディングが大きく変わるから、結果によってボーナスが付くんだよ。当然、バッドエンドだったら減っちゃうんだけどね。だから、特殊イベント中は経験値が入らなくて、最後にまとめて入るの」

「ほほ~、そんな仕様じゃったんじゃな、それなら納得じゃわい」

「ドロップアイテムもその時だから、ここはもう放置でいいぜ」


 二人の説明に納得し、多少は心の(つか)えが取れる。とはいえ後味の悪さは考えてもどうにもならないので、今は子犬様を追う事にする。


「ともかく、今は子犬様じゃな」

「そうだな、ハクは取り敢えず先に行ってくれ。俺達は見逃してないか探しながら行くからよ」

「そうだね、ハクちゃんは速いから、先に行った方が良いよ」


「そうじゃな、相分かった。済まぬが途中で見付けたら知らせとくれ」

「おう、メッセ送るわ」

「任せて~」


「ではの!」


 そういって、俺は再度進行方向へと真っ直ぐ走り出す。この森に居た間何度となく聞いた、草鳴りの音が前方で微かに聞こえる。その音がさっきの子犬様の出す音かは解らないが、ともかく今はそれを追うしかないだろう。ゴブリンをさっさと全滅させたのは失敗だったかも知れない。奴らは迷う事無く子犬様を追っていた様に見えたので、泳がせておいた方が良かったか?


 まぁもう手遅れだな、今はこの音が子犬様に繋がると信じるしかない。もし違っていて道中で見落としていても、きっとゼン達が見付けてくれるだろう。最悪、この森にはあの子犬様が居る事が解ったんだ、どれだけ時間が掛かってでも探し出してやらぁ!!


 決意を新たに音を追い掛けるが、森に居た間は作られた道を歩いていたし、森を駆け抜ける事など日常生活に於いてそうそうない。木々の根や不意に現れる岩や石によって、森は自然のアスレチックとなり、足を取られ中々追い付く事が出来なかった。俺が森での足運びに苦戦しながら追い掛けている時、音が不意に消えた。何処かで身を隠したか? そう思ったが違ったらしい、前方に強い日の光が見える。どうやら木々が無く、開けた場所に出る様だ。


 俺は躊躇する事無く、森を抜け光に向けて飛び込む。そこは円形にかなり開けた場所で、辺りはなだらかな草原となっており、中心に向かってほんの少しの傾斜が付いている。マップで確認すれば、ここには道の繋がりが無く、少し森の奥に位置するらしい。その中心には周りの木よりも少し大きな一本の木が生え、ポポルの実を蓄えた枝葉を穏やかに揺らしていた。子犬様はどこだ! そう思い辺りを見渡すがその姿は見えない。まさか、違ったのか?


 俺がそう不安に駆られ始めた時、辺りを泳がす視線の端でふと、中心の大木で白い何かが動いたのを捉えた。それに気付き慌てて大木の根本に視線を戻せば、大木が大きな根を広げるその根元、一つの小さな(うろ)の中、そこには白い小さな塊が、今も必死でその身を捻じ込もうと、尻尾をピンと立てながら悪戦苦闘していた。


「良かった……、見付けた」


 俺は周りに誰も居ない事と、子犬様を見付けた安心感からつい素の口調で呟く。誰も居ないし、別に良いだろ? この一週間で俺も疲れたんだよ……。癒しをくれ。


 少し距離も有った事から小走りで近付き、大木の木陰に差し掛かる辺りで、怖がらせない様歩きに変える。草を踏む音が聞こえたのか、子犬様はバタバタしていたその身をビクリと一度震わせ、尻尾を股の間に挟み、そのまましゃがみ込んで震え出してしまった。


 怖がらせるつもりは無かったが、こればっかりは仕方ないな……。そう思い苦笑しながら俺はしゃがみ込み、怯える子犬様に努めて優しく語り掛ける。


「すまんの、怖がらせるつもりは無かったんじゃ。どうか怖がらんでくれんじゃろうか?」


 そう語り掛ければ、プルプル震えていた子犬様は動きをピタリと止め、一瞬迷う様にもぞもぞとした後、(やや)あって、恐る恐るこちらにチラリと顔を覗かせた。


 はぁなにそれあざとかわい! おめめおっきぃねぇ~♪

 わたあめみたいにふわっふわじゃぁ。今すぐ撫で繰り回したい!!!


 俺は内心、子犬様の仕草に悶え苦しみ歓喜の声を爆発させたい欲求を我慢する。そんな事など微塵も出さない様に、笑顔を作って努力していると、子犬様はもぞもぞと動き体の向きを反転させ、今度はお尻を(うろ)に隠す。そして、その大きくクリクリとしたお目々で此方を見上げ、少し首を掲げながら一鳴きした。


「わふ?」

「!?」


 俺は子犬様の反応に、笑顔のまま石化してしまった。


 ハクちゃん大ダメージ! 俺の疲れた心にクリティカルヒットだ!

 会心の一撃である!! 痛恨では無い! 会心だ! 痛みなど無い!!


  子犬様の全ての仕草が、俺の心の疲れに大ダメージを与えて来る。この子犬様、ゼンよりも強いのでは? そんなアホな事を考えながら、子犬様を(かどわ)かす為に何か無いかと考え、インベントリからポポルの実を取り出しそっと差し出す。


 どうぞ、お納め下さい子犬様。


 俺が少し近付きそっとポポルの実を差し出せば、子犬様はそれに鼻を近付け、スンスンと鼻を鳴らす。俺はこれで子犬様が洞から御出でになり、尻尾をプリプリと振りながら実を食べる姿を幻想しほくそ笑んだ。しかし、現実は妄想とは違う結果に終わる。子犬様はスンスンと匂いを嗅いだ後、プイッ!と顔を背けてしまう。俺がそれに驚いていると、子犬様は頭を地に降ろしベソリと寝転んだ後、此方をジトリと可愛いお目々で見上げて来る。どうやらお気に召さなかった様だ。


「!?」


 そんな莫迦な! 何て可愛いジト目なんだ! この子は地上に舞い降りた天使!

 地に生きる全ての迷える子羊達は、皆この子を信仰すべきなのでは!?


 って違う!


 今は俺を親の敵と恨む可愛い子供達は、皆この実でイチコロだったのだ。しかし、この子犬様に限ってこの実は効果が無いらしい。なんでぇ!?


 俺がその事に動揺していると子犬様は何かに気付き、再度洞へと逃げ込もうとし始める。なんだ? しかし、答えは直ぐに解った。俺の背後に何かの気配が現れたのだ。俺は直ぐ様その場を左に飛び退く、その際ポポルの実は手放してしまった。そして離れると同時、俺の居た場所に刃が叩き付けられる。その衝撃により、千切られた草と僅かな土煙が宙を舞う。


「グオオオォォォォォ!」


 そこには、先程のゴブリン達よりもずっと大きく逞しい体をした、一体のゴブリンが咆哮を上げながら立っていた。そのゴブリンは俺が落としたポポルの実を左手で拾い上げると、嫌らしい笑顔を浮かべ笑いながら、汁を撒き散らしグシャグシャと食べ始める。


 きったねぇなぁクソが! お前にやったんじゃねぇよ!


「グガッガッガ」


 身長は180cm程、緑の肌は変わらず、しかしてその体は鍛え上げたマッチョの如く筋肉が漲っていた。その右手にはまるで斬馬刀の様に長大で幅広な石製のナイフを携え、その重さを振るうのに不足は無いらしい。そいつの(さま)は、小鬼糞虫(ゴブリン)と言うには少々デカすぎるので、恐らく上位種のホブゴブリンだろう。鬼糞虫だとオーガになってしまいそうなので、こいつは只の糞虫だな。何かムカつくし。


 その糞虫は余裕の態度で、俺を嘗め回す様に見ながら実を食っているが、ハクちゃんだって余裕である。たかが糞虫に負ける気は無いし、俺と子犬様の蜜月を邪魔した糞虫には、相応の報いを受けさせる気満々である。というか、色々有り過ぎてブチ切れ寸前である。


グガガギャ(雑魚共に嫌がらせして)グゲグオゥグ(やろうと思ってたら)グギャッギャッガ(とんだ幸運だぜ)

「何言っとるかさっぱり解らんの。人語を覚えて出直して来るが良い、糞虫よ」


 俺は腕を組みながら、堂々と返す。糞虫が何を言っているかは解らないが、向こうも解らないのだろう、糞虫は全く気にした様子を見せず話し続ける。お前なんざと話す気無いんじゃがぁ?


グギャグギャ(美味そうな餌が)ググガグ(二匹も居る何てなぁ)グガウゴブガググ(俺様はゴブガング)グガググギャァ(小鬼の森の王者だぁ)!!」

「なんじゃ、雑魚が調子に乗っとる事だけは解るのう~」


 そんな事を言っていると、糞虫の咆哮を聞いて駆け付けたのか、ゼン達がやって来た。


「おう、大丈夫か? 何か聞こえたから来てみたけどよ」

「大丈夫? ハクちゃん。あれ、ホブゴブリンだね。何か凄い喋ってる、あんな喋るの初めて見たよ」

「うむ、問題無い。子犬様も見付けたしの」


 俺はそう言って、腕組みした右手で左手にある木の洞を指し示す。そこには、洞に頭隠して尻隠さずな子犬様が、尻尾を股に挟みプルプルしている姿が有った。かわい。どうやら、子犬様はそこから動く気は無い様で、俺は心置きなく糞虫をぶっ〇せる事に安堵した。


「あれにホブゴブリンなぞ長い名は不要じゃ、ホブ蔵で十分じゃろう」

「……ハクちゃんって、すぐ変な呼び名付けるよね。グー助とか、ゼンにも何か長いの付けてたし」


「完全体チョロ愚かドスケベキャラ崩れムッツリ侍(もど)きか?」

「そうそれ。……何でそんな長いのスラスラ言えるの」

「……おい待て、何か更に長くなってねぇか? ムッツリは入って無かったよなぁ!」


「よう解ったのう~♪ 流石、完全体チョロ愚かドスケベキャラ崩れムッツリ(さか)しい侍(もど)きじゃ」

「また増やしただろ! ドンドン長くすんじゃねぇよ! ってかそもそも変な渾名(あだな)付けんな!!」

「ホント仲良いよね……」


 お主らには負けるじゃろう。


 そんな俺達のやり取りを、糞虫改めホブ蔵はニヤニヤと眺めていた。雑魚が増えた位に思っているんだろう。雑魚はお前やぞ。その様子を見ながらゼンが口を開く。左手は柄に添えられているので、油断はしてないのだろう。オトネも棍をしっかりと構えている。


「手伝うか? あれ、()()、15レベル推奨だぜ? 本来、小鬼の森の奥地に出るはずだからな」


 などと(のたま)うゼン。一応、何て言ってる時点で解っているんだろうに……、律儀な奴だ。俺はそれに左手を振りながら答える。


「要らん要らん、そもそもこれはワシのイベントじゃ。あの子を仲間にするには一人でやった方が良い気がするしのう。それに――」


 俺は言いながらゼンを見遣り、ニヤリと言い放つ。


「あれはお主よりも強いのか?」


 その言葉に、ゼンもニヤリと笑い返す。そんな二人にオトネは呆れ顔だ。


「はっ! 俺があんなに弱い訳ないだろ!」

「うむ! ならば何も問題は無かろうよ!」

「……二人とも、ほんっと仲良いよね」


 この場には、楽しいやり取りが出来てニヤニヤ笑う中身男二人と、それを呆れながら見る女の子一人。その三人を嫌らしく見る鬼が一体と、只管木の洞に篭ってプルプルする子犬様一匹という、何とも締まらない空気が漂っていた。

子((プルプルプルプル))

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