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002 キャラメイク

ちょっと申し訳ないですが世界観説明含めキャラメイクが数話続きます。


こらえて!!

 俺は迫りくる敗北感を強引に無視しながら、キャラメイクへと戻る事にする。それからも、アイシャの説明は淀みなく行われていく。


「それでは説明を再開させて頂きますね。先程作成したお客様自身の姿をそのままご利用頂く事も出来ますが、プライバシーの観点から、何かしら変更する事をお勧めします。また、性別や種族、体の大きさ等を変え、全く違った姿にする事も可能です」


「へぇ、性別も変えられんのかぁ、種族は何が有るんだ?」


「種族については右ページに有る『種族』の所をタップして頂ければ、一覧が表示されます。種族によってそれぞれ見た目に特徴が御座いますが、各種族をタップする事で特徴をアバターに反映する事が可能です」


 それからは本に書いてある説明を読んだり、アイシャから説明を聞いたりしながらそれぞれの項目について確認を行っていった。


 まず種族についてだが、『SEVEN'S WALKER』では大まかに7つの種族に分けられる。また、各種族にはそれぞれに得意な属性が有るらしい。属性についてはまず基本となる、火、水、地、風、の四属性。それに加え、光、闇、の二属性と、それらに属さない無属性を加えた、合計七属性が基本となる。


 種族の特性については以下の通りだ。


 ・無人(むじん)族:得意属性は無。所謂(いわゆる)普通の人、これといった得意も不得意も無いバランス型、他の個性的な種族に比べると無個性な種族の為、この世界ではこう呼ばれるらしい。


 ・森人(もりびと)族:得意属性は風。金髪碧眼、眉目秀麗、火気厳禁。森を愛し、森を守り、森と共に生きる、尖ったお耳がチャーミングな森の民、エルフ。森で生きる為か穏やかな者が多いが、森に害を成す者に対しては熾烈な一面も有る。魔法と弓を得意とする反面、筋肉は余り無く、耐久力がやや低い。


 ・地人(ちじん)族:得意属性は地。小麦色に焼けた肌、背丈は低く筋骨隆々、母乳替わりに酒を飲み、槌を振るっては酒を飲み、酒を肴に酒を飲む。気の良いおっさん、ドワーフ。鍛冶に対しては真摯な姿勢を見せるが、種族性か常に酔っているせいか大雑把な性格をした者が多い。高い筋力と耐久力を誇るが、魔法と俊敏さに難有。


 ・獣人(じゅうじん)族:得意属性は水。最も種類豊富な種族。獣人をタップし、出て来た種族をタップすると、更に無数の種類が表示される。良い意味で運営の頭が可笑しい種族。その可能な限りの動物を獣人化したと思われるそのラインナップには、驚愕を置き去りにしてドン引きだ。筋力と俊敏さが高いが魔法はやや苦手。


 ・巨人(きょじん)族:得意属性は火。4m前後の体を持ち、それに相応しいだけの筋肉を持つ巨人。全種族トップの筋力を誇るが、その巨体を支える為に魔力が使われているので魔法は苦手。俊敏性は低く、それ故か全体的にのんびりとした性格の者が多く、見た目に反して穏やかな種族。


 ・小人(こびと)族:得意属性は光。SW界のマスコット、身長10cmから1m程の体を持つ小人。一部種族は身長に対してコンプレックスを持つ。幾つかの種族に分かれるが、小さな体で生き残る為か、その殆どが魔法を得意としていて、全種族一高い魔力を持ち魔法に対する耐久力は高い。が、当然筋肉は無い。物理面での耐久力も無いし、身長も無ければ希望も無い。


 ・幽人(ゆうじん)族:得意属性は闇。腐ってたり腐ってなかったり、いっそ腐りきって骨だけになったり、骨すら無かったりする愉快な人々。元々モンスターだったアンデットが高い知性と理性を獲得して生まれた種族。高い魔力を有した結果、知性を得る事となるので総じて魔力は高い。痛覚が鈍い為か物理に対して高い耐久力を誇る反面。魔法に対しては弱い。神聖魔法何て以ての外。


「……多いなぁ」

「担当がとても張り切ってしまいまして」

「そいつ等、絶対ケモナーだろ」


 種族数の多さに頬を引き攣らせながら呟いた言葉にアイシャが反応を返す。その答えに、俺は確信を持って答えた。何だよ獣人族の種類の多さは、小人族と幽人族も幾つかの種族がまとめられているが、獣人族はその比じゃ無い。獣人だけで数十は種類が有るんじゃ無いだろうか?


「種族によって、結構ステータスに差が有るんだな」


 得意、不得意も有る様だし、どういったプレイスタイルにするかで種族を選んだ方が良い様だ。そう思ったのだが、そこでアイシャから訂正が入る。


「初めの頃は、になりますけどね」

「ん? というと?」


「種族毎の優劣については、世界観を作る上でとても重要な要素となりますので、無視する事は出来ません。ですがこのゲームでは、極力プレイヤーの皆様には自由にプレイして頂きたい、というのがコンセプトとなっております。それは種族を選ぶ上でも、です」

「そうなのか? でも、魔法を極めようと思えば小人や幽人族を選ぶよな?」


「それもまた、プレイヤー皆様の自由です。ですが必ずしも、魔法が苦手なはずの巨人族が最強の魔法使いにはなれない、という事では無いのです」

「は? いや、無理だろ? 無理……だよな? ステータスの伸びの違い何かで、いずれ大きく差が出るんじゃ無いのか?」


「確かに成長率に違いは御座います。ですがそれは種族によって、ではなく。プレイヤー自身の行動の違いによって、変わる事になります。例えば剣で攻撃すれば筋力が上がり易くなり、魔法を使えば魔力が上がり易くなる、といった具合にです」

「……つまり、同じプレイスタイルの幽人と巨人が居た場合、上昇する魔力の量は同じで、違いは初期値の分だけ、その初期値分も最終的には誤差の範囲に収まる……と?」


「その通りです! 良く出来ましたね!」

「俺は子供か」


 そう言って、アイシャは嬉しそうに小さく拍手する。その子供に対する様なリアクションに軽くツッコみを返すがアイシャは気にしない。


ちなみに、属性云々(うんぬん)も関係有りません。ノリです」

「うぉい! そこも関係無いのかよ! 何だったんだよさっきの説明は!」


「あくまでも世界観として、ですね、この世界で生きる人々にとっての話となります。得意不得意はスキルの有無に因りますので、自由にスキルを変えられるプレイヤーには関係有りません」

「あぁ、スキルか。まぁ、世界観に合わせてプレイしたい人には重要かもな」

「ですね」 


 アイシャはしれっとした顔で答える。まぁ、それは今は置いておこう。


「じゃあ種族適正に反した作り方をしても、別に弱くなるって事は無いから、脳筋エルフもインテリドワーフも好きにやれよ、って事ね」

「そうですね。先程言った巨人の様に、巨大な体を持つ巨人族が、魔法で巨大な隕石を降らせて敵を殲滅!! 何て事も出来る訳です」


「何それ見たい」


 巨体からの超火力もロマンあるよな。


 そして、適正種族じゃ無くても強くなれるなら、初期のやり易さに多少の差は有っても好きな種族で好きにプレイして良い訳だ。初期の差についても、序盤のモンスター相手ならそれ程問題にはならないだろう。そもそも、俺は他のプレイヤーと競い合うガチ勢ではなく、楽しくゲームをしたいエンジョイ勢なので、適正種族についてもそこまで気にはしない。


 流石にやりたい事が致命的に出来ない、何て場合は考慮するが。


「んじゃあ犬獣人にするかな、犬好きだし」


 そう思い、犬獣人を選ぼうと指を動かすが、その下に狼獣人という種族を見付け、迷わずタップする。


「……」


 ……いやだって、狼カッコいいじゃん?

 言ってる事とやってる事の違いに、アイシャから若干呆れた様な気配を感じるが気にしない!


 狼獣人を選ぶと、『種族』項目の下に新しく『タイプ』という項目が追加される。そこから色々な種類を選ぶ事が出来、既に絶滅しているニホンオオカミや、エゾオオカミ何かも入っている様だ。


 タイプをポチポチと切り替えてみれば、自分のアバターもそれに合わせて姿が変わっていく。狼獣人は狼耳と尻尾が生え、それらが選んだ種類の色に合わせ、髪の色と共に変化していく。俺は最終的に、真っ白な『ホッキョクオオカミ』タイプを選択する事にした。


「結構しっかりと変化するんだなぁ、そして良い歳した男のケモ耳……」

「中々可愛いじゃないですか、私は良いと思いますよ」


 そこには真っ白な髪をしてケモ耳を生やした自分の姿が……。イケメンならまだしも、自分のアバターがケモ耳姿になっている所を見るのは中々、心に来る物があるな……。


 目の前のサポートAI(アイシャ)は笑いを堪えてるし。


「なら、試しに女の子にしてみますか?」

「いや、別にこのままd『そぉい!』いやそぉいじゃないが!」


 おいサポートAI、自由過ぎんか!?


 このままで良いと言おうとした所、手を振り下ろし、アイシャが勝手に性別を変更する。そこには真っ白な髪をした、自分に少し似た女性が居た。


「じゃあこのまま理想の女の子を作ってみましょう! さぁ! 煩悩を捧げるのです!」

「いや、さぁ! じゃなくて! 何だこいつ! 急にはっちゃけだしたな! おい待て! アイシャァ!!!」


「アイちゃんでぇす!!」


 こいつ人のケモ耳姿見て悪ノリしだしやがった! そんなに俺のケモ耳は面白かったか!?


 アイシャがバッ!と宣教師の如く両手を広げると、瞬く間にアバターは回転を始める。動き出したアバターは最早止める事も出来ず、先程自分のアバターを作った時の様にくるくると回りだすとその姿を少しずつ変えていく。大人の女性に見えた姿は少し幼さを増し、全体的に線は細くなっていく、身長も少し低くなった所で何故かアバターがキラキラとエフェクトを放ちだす。


 目の前に居るアイシャ(ポンコツ)も目をキラキラとさせている。

 こいつ! ……また何か余計な事を!!


 最早どうする事も出来ないと諦め、俺はそのまま回るアバターを眺め続けた。


 ……理想の女の子か。正直、少し興味は有る。システムに因って違和感を消され、自分の理想として作られる女の子。それは一体、どんな姿をしているのだろうか……。


 時間にして十数秒程度、システムはその仕事を迅速に、完璧に終わらせる。キラキラと放たれていたエフェクトはパッと花が散る様に消え、仕事の終わりに彩りを添える。


 輝きが消え、露になったそこには一人の美少女が立っていた。


 瑞々しいその肌は、僅かに肌色がかった健康的な白さを持ち。はっきりとした瞳はまるで宝石の様にキラキラと青く輝き、晴天の澄んだ空を閉じ込めた様な鮮やかな青い色をしていた。絹糸の如く細く美しい白髪は膝裏近くまで伸び、全体的に緩く動きの有るその髪は少女の活発さを表している様だ。


 その頭の上には、ホッキョクオオカミの耳に似た三角の形をした耳がちょこんと乗っており、腰の辺りからはフサフサとした長い尻尾が髪を押し退け生えている。年の頃は16.7歳位、身長は160cm程と女性としては少し高く、全体的に線は細めで自己主張はやや控え目な胸をしている。


 そこに居たのは紛れもなく美少女で、俺は自分の理想を否応なく理解させられ、暫し言葉を失っていた。その沈黙を破ったのは目の前のアイシャ(ポンコツ)だ。


「わー! すごいすごい! すごく可愛いですよこの子! もうこの子にしましょうよ、はい!決定!」

「待て待て待て待て! 決定じゃない!! お前さっきから自由が過ぎるぞポンコツAI! ……確かに……可愛い。……理想の女の子なのも……認めよう。でも、俺はおじさんだぞ? この子の中身がおじさん何て……無いだろ?」


「何言ってるんですか。今時ネットゲームで中身おじさん何て、珍しくも無いでしょう!」


 俺はアイシャのテンションの高さについ否定するが、それをアイシャは間髪入れずに否定して来た。確かに今時珍しくも無い、何なら可愛い女の子の中身はほぼ男だし、カッコいい男の子の中身はほぼ女性だ!(異論は認める)


 ただ、俺はこのゲームは男性キャラでやるつもりだったのだ。突然の事に戸惑ってしまう。


「それに、これだけリアルなゲームで女性を演じ続けるのもなぁ……」


 どうしても気恥ずかしさを感じてしまう。今までの様に画面の前で済む話じゃ無いのだ。だがその言葉にアイシャは気軽に、キョトンとした表情で首を掲げながら返す。


「別に女性を演じなくても良いでしょう? 好きにやれば良いんですよ。どうせ見た目も変わって誰にも分からないんですし」


 ……それはまぁ、確かに……とは思う。この子でゲームをするのは、それはそれで楽しいだろうな……とも。アイシャの言葉に揺れつつも、やはり踏ん切りが付かない。


「それに……」


 俺が悩んでいる間にも、アイシャは言葉を続ける。やはり、止めておこう。恥ずかしい思いをしてまで、無理にする必要も無いだろう。そう思い俺が口を開こうとした時、アイシャは真っ直ぐとこちらを見て言った。


「あなたが選ばないと……、この子は産まれて来ないんですよ?」


 それは、自分の事ばかり考えていた俺には衝撃の一言だった。ただのデータだ、そんな事は解っている。産まれるも何も、そもそもまだ存在もしていない、今見えているだけのデータだ。


 それでもなお、今目の前にそのデータは存在している。この子を産み出せるのが自分だけであり、それをしなかった場合、この子は永遠に消えてしまう。僅かに不安そうな表情を見せるデータ上の存在(アイシャ)にとっても、何か思う所が有るのかもしれない。


 データの中にしか存在しない筈の、現実的リアルなこの世界で……

 人の姿をしたデータを消す……。それはまるで……

 この子を俺が殺してしまう様に思えてしまって……。


 そう思ってしまえば、それを実行する気にはどうしてもなれなかった。


「そう……だな。それはちょっと……寂しいよな。……よし! 決めた! 俺はこのアバターでこの世界を遊び尽くす!!」


 俺は右手を握り、そう宣言する。

 その言葉に、アイシャは嬉しそうに一つ頷き、微笑みを返すのだった。


 まぁ結局の所、現実よりも現実的リアルなこの世界で見せ付けられた理想の女の子を、俺がどうしようもなく気に入ってしまった……というだけの話なのだが。

主「……で、俺のケモ耳はそんなに面白かったか?」

ア「それはもうとっても!!」

主「ちょっとは悪びれろ!!」

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