017 ここは地獄の森、一丁目
トラップカード発動!!
『作者の悪ふざけ』の効果により! 読者は物凄く読み辛くなる!!
マジごめん! でもやめる気は無いから!!
ぶっちゃけ冒頭は読み飛ばしても何も問題無し!
オレ、チガウ、オレ、オマエタチノオヤ、コロシテナイ。オレジャナイ、シンジテ、オヤツアルヨ? タベル? クダモノ、オイシイヨ? タダデアゲルヨ、ドクハイッテナイヨ。セメテ、トモダチニナロウヨ。アイボウジャ、ナクテイイヨ。イッショニ、アソボウヨ。
「まだここに居たのか、ハク。てか、大丈夫か? お~い、生きてるか~? ハク~~?」
「は!? ワシじゃない! ワシはお前たちの親は殺しておらんぞ!」
「うお!? お、おう……。何の話しだよ……、本当に大丈夫か? ハク」
「何じゃ、完全体チョロ愚かドスケベキャラ崩れ侍擬きでは無いか」
「何の話しだよ!? まさか前に『長い!!』って言ってたのそれじゃねぇだろうな!」
「何の話しやらさっぱりじゃ、全くこのチョロ侍は」
「俺はチョロくねぇ!」
「ほんとかのぉ~」
「久しぶりなのに仲良いね、ハクちゃん」
「久しぶりじゃなぁ~、オトネ」
お前は戦闘以外はチョロい気がするんだが。余計な所で勘は良いらしい。
こいつも野生児か。『も』って何だもって。
俺に声を掛け、地獄の森を彷徨う亡者から、元の狼達の親を殺した悪逆非道の糞狼少女に蘇生したのはゼンだった。いや違う、オレジャナイ、オレハヤッテナイ……。
それとオトネも居る様だ、俺はオトネに挨拶しながら手を振ると、オトネも笑いながら小さく振り返して来る。可愛い。尻尾フリフリ。
オトネとは前に話した時に少し仲良くなれたので、少し口調が砕けている。彼女は親しい相手に対しては、自分の事を『私』ではなく『ウチ』と言う様だ。森人族になる事で可愛い系の顔が少し美人寄りになっているが、その顔で『ウチ』と言うのはギャップが有って少し可愛い。
恰好は初心者装備を脱して、緑色をベースに随所に白い生地と金のラインが入った、可愛らしいローブに変わっていた。オトネは基本、魔法主体で一応は棍での近接戦も出来るスタイルなので、ローブをチョイスしたのだろう。実に森人族らしい色合いで似合っている。武器も白い木をベースにして、石突に金色の金属で装飾され小さな宝石の嵌った物に変わっている。
そして、ゼンの服装は相変わらずだが、腰には黒い鞘に納められた刀が一本増え、二本差しになっている。うわぁ……。侍らしいので実に似合っているんだが、これだとゼンに近付くには一撃凌ぐだけじゃ足りなくなってくる。最悪、一本捨てて居合を放つ事も出来るので、ゼンを攻略する難易度は倍以上に上がっているだろう。実に嫌な装備だ。尻尾フリフリ。
「んで、何でまだ此処に居るんだよ。テイムは出来たんだろ? ……出来たんだよな?」
「フフフフフフ……、出来ておったらおらんかったじゃろうなぁ~……」
「え? まさかまだ出来てないの!?」
そう言いながら、俺は空を見上げ遠い目をする。空は枝葉に覆われ狭かった。ここは鳥籠だったか、俺はこの地獄の森に囚われた、哀れな狼鳥だったのだ。狼鳥ってなんだ。
「はぁ!? もう一週間だぞ!? テイムにそんなに掛かんのかよ、このゲーム! ……探してたのってレア個体だよな? ……まさか、出会う事すら出来てないのか?」
「いや、割と出会っとるよ。……あやつで、99体目じゃ」
「あ、白い狼」
「グルルルル、ガウガウ!」
ゼン達と話していると、丁度草木がガサゴソと音を立て白い狼が現れた。狼は俺を見ると軽く唸り、ゼンに向かって吠えた。だが襲い掛かる訳では無い様だ。その様子を見てゼンが口を開いた。
「……何で襲って来ないんだ? ここには一度来たけど、前は普通に襲われたぜ?」
「ああ~、やはりそうじゃったか。恐らくワシの種族と関係しとるんじゃろう。この森で出て来る狼達は、ワシに対して唸る事は有っても、攻撃はして来ないんじゃよ。此方から仕掛ければ別じゃろうが、襲ってこん子達を襲う気にもなれんしのぅ、試してもおらんわ。……ワシとおる時に襲うなよ? ワシは狼達の味方になるからの」
「何そのボス戦、ウチは絶対手を出さないよ」
どうやらゼンは一度来ていたらしい。見掛けなかったが、俺もずっとログインしてる訳じゃ無いからな、入れ違いになったんだろう。オトネは凄く嫌そうに宣誓している。
ちょっと傷付くんじゃが? オトネは俺とゼンの戦い見てないよね?
まぁ神殿でのグー助との戦いは見ているが、ゼンにも何か聞いたんだろう、おのれゼン。俺はゲーム内時間で一週間、ずっとこの森に居た。襲われないのを良い事に、この森でログイン、ログアウトを繰り返していたのだ。最早この森の主と言っても過言だ、過言である。
その間、当然他のプレイヤーを見掛けたが彼等は普通に襲われていた。襲われない理由としては種族位しか思い付かなかったので、飽く迄も俺の予想でだが……。他に無いよな? 精々、加護と憑依術位か? どちらもテイムに関係が有るので、テイムし易いよう何か隠れ補正でも有るのかも知れないが……、襲われなくなる程では無いだろう。
俺が狼を撫でながらそんな事を考えていると、近くまで来たゼンが話しを続ける。なお、ゼンは近付き過ぎるとめっちゃ吠えられたので、少し悲しそうに下がっていた。ウケる。
「それはそれで興味は有るけどよ(有るなよ)、ハクの姿を見ねぇなと思って軽く見に来ただけだ」
「何じゃ、ワシに会いに来たのか。ワシ美少女じゃからなぁ~♪ 態々、女連れで森で逢引とは、ゼンはやはりドスケベ侍じゃのう~♪」
「違うわ! それ、人前で絶っ対言うなよ! ゼンのイメージが壊れるからな!」
俺はゼンのリアクションにくつくつと笑い、絶っっ対にいつか言おうと固く決意する。尻尾フリフリ。オトネは俺の尻尾を何か言いたそうに見ていた。
「あんた、目立つんだよ。既に結構有名だぜ? 神殿だけじゃなく、広場でも何かやったんだろ? あの後町に戻ったら、広場じゃあんたの話題で持ち切りだったよ」
「かぁ~~、人気者は辛いのぅ~~♪ 美少女ハクちゃんの可愛さに皆、魅了されたんじゃなぁ♪」
「いや、頭のイカレた奴が居たって皆言ってたわ。神殿の事も有ったし」
「何じゃと!? 広場に居た全員ブチ『自主規制』してやる!!」
「そういうとこだよ……、ハクちゃん」
オトネが何か言っているが気にしない、思い出せる限りのプレイヤーに報復せねば! しかし、思い出せるのは親の仇を見る様な狼達の姿ばかり……、その記憶に邪魔されて、誰一人思い出す事は出来なかった。くっ! 運が良かったな! クソが!!
俺はインベントリから『ポポルの実』を取り出した。狼はそれを見て『それくれるの!? 母さん!!』と言わんばかりに目を輝かせる。そのキラキラとした表情に微笑み返しながら与えれば、『ありがとう母さん! 僕これ大好き! 母さんも大好き!!』と顔を煌めかせ、シャクシャクと果実を食べ始める。
美味そうにポポルの実を食べる狼を見て、ゼンが物欲しそうにしていたので一つやる。オトネにも渡して、自分でも一つ齧る。ポポルの実は瓢箪型をした赤い実で、シャクシャクとした梨の様な食感に、ブドウの様な味をした、中々に脳がバグりそうな果実だ。ただし普通に美味い。食べ続けて胃が凭れる事も無いので、この地獄の森における唯一の楽しみだ。
因みに、食べるとHPSPMPが全て10回復するという、申し訳程度の効果が有る。戦闘中には使えないし連続して何個も食える訳じゃ無いが、回復アイテムが限られている現状、結構貴重なアイテムだ。
狼が夢中でポポルの実を食べれば、ゼン達が近付いても吠える事は無かったので、オトネはその様子を間近で繁々と見ていた。撫でたそうにしていたが、撫でてはいない。邪魔にならない様にだろう。狼の様子を見て、オトネは不思議そうに尋ねて来る。
「これでもダメなの? ウチには凄く懐いてる様に見えるんだけど……」
「ワシにもそう見えとるよ……。何なら母を見る子の様にさえ見えておる。母性に目覚めそうじゃ。ふふふふふふふふ……」
「「…………」」
俺は言いながら、死んだ目で遠くを見詰める。その様子に答えを察した二人は、何とも言えない表情で此方を見やる。
そんな目で見るな! 俺はやってない! ……違う、また発作が。
何処か納得がいかない様子の二人に、狼が満足するまで『ポポルの実』を食べさせた俺は証拠を見せる為に技巧を発動させる。
『魂の盟約……』
これから起きる事に怯えながら技巧名を口にしたが、そんなの知らんとばかりに技巧は発動し、魔法陣と光の帯を作り出す。その荘厳な光景を初めて目にしたのか、二人は感嘆としながら黙って結果を見守った。そしてそれらは、これまで幾度となく見た光景と何一つ違える事無く、あっさりと砕け散った。そしてそこに残るのは……
「ガウ!ガウ!ガウ!ガウ!ガウ!ガウ!ガウ!ガウ!」
「「えぇ……、何これ……」」
「…………」
『ふざけんなクソが! 俺の父さんを毛皮にしやがって! ぶっ殺してヤル!!』と……、喉が避けても構うものか! いっそそのまま血を吐き掛けてやる! と言わんばかりに吠え立てる狼の姿。一通り吠えて気が済むと、彼等はやさぐれた様子で歩きながら皆、唾を吐き掛け去って行く。
……皆、器用だね。……母さんは嬉しいよ。
俺は今回も同じ結果に終わったそれに、両手と膝を着いて項垂れる様に心を折る。チガウンダ、オレジャナイ、ケガワニナンテ、シテナイヨ。……orz
狼の突然の豹変を間近でみたオトネは、驚きながらも直ぐに立ち直り口を開いた。当事者じゃない分ダメージは少なかったのだろう。俺はそれに項垂れ地面を見ながら答えた。
「こんな事をずっと繰り返してたの? 98回も? ウチなら耐えられないよ……」
「……今ので99回じゃ、恐らく技巧が攻撃判定なんじゃろう。それで敵意が上がるが、種族特性か何かで攻撃する程ではなく、唯、立ち去る事になるんじゃろうなぁ……、唾を吐きながら。……次で記念すべき100回目じゃ、ワシは、100人の子供達に、親殺しの犯人じゃと思われるんじゃ……」
「いや、なんつーか……、ホントえげつねぇな、このゲーム」
全くだ、憖リアルな分余計に辛い。何ならゼンの居合切りよりも、よっぽどダメージが有る。何故、一々上げて叩き落すのか。まぁ、好感度を解り易くする為なんだろうが、それなら何故テイム出来ないのかが解らない……。そうやって落ち込んでいると、オトネが少し申し訳無さそうに尋ねて来る。いつまでも項垂れてもいられないので、俺は立ち上がって話を聞いた。
「あの……、ちょっと聞きたいんだけど……、ハクちゃん、幸運の値って幾つ?」
「うん? 1じゃが、あれはドロップや生産の成功率に影響する値じゃろう? 関係無い……と、まさか……」
「……うん、テイム率にも影響出るんだよ。……1だと、殆どテイム出来ないんだって、キャラメイクの時に聞かなかった?」
「…………聞いとらんが?」
「「「………………」」」
俺達の間に重い沈黙が流れる。森では小鳥達の歌声が爽やかに響いていた。
「ァァアァイシャアアアァァァァァァ!!!!!」
俺の突然の咆哮が、閑静だった森に轟いた。楽し気に歌っていた小鳥達は、逃げる様に慌てて飛び立ち。遠くでは『近所迷惑だぞ! 親殺し!!』と言わんばかりに、狼達の遠吠えが響き渡っていた。
殺してない!!
ア「ア、アイちゃんでぇぇぇぇす!」
ハ「お前マジマジお前ぇぇぇぇえ!」




