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13話、街道と予期せぬ戦闘

残された三日間、リュウキ商会は一丸となって順調に利益を叩き出していた。

各自が自分の役割をなんとか覚えて、失敗してもフォローしながら笑顔で働いている。

そして約束の前日となった。

リュウキ、クリス、トマス、ブレンダ、アイリス、セラス、サリー、ミリアが集まる会議の中でミリアに注目が集まる。

ミリアはクランハウスの経理を担当している。その収支報告を固唾を飲んで見守っている。

「皆の努力でかなりの利益が出ています。更に今後も多くの利益が期待出来ます。現在保有している奴隷を売らなくてもやっていけると判断します」

「「おお!」」

ミリアの報告に一同が喜ぶ。

「ただし!明日の盗賊との奴隷取引をする程の資金がリュウキ商会にありません」

歓喜に釘を刺すようにミリアが強く言う。

「・・・そうか」

皆の努力で最悪の結果だけは回避できた。満足とまではいかないが受け入れよう。リュウキは残念そうに肩を落とす。

ミリアは更に話を続ける。

「ですが、今回の結果から奴隷購入でもっと多くの利益が得られる可能性があると実証されました。私はリュウキ商会に更なる資金を提供してもいいと考えています。慈善事業ではありませんのでもちろん利息は払っていただきます。どうしますか?」

「ありがとう。その話、受けるよ」

リュウキは思いもよらないミリアの提案に顔を綻ばせて受け入れる。

「良かったな」

周囲の皆も喜んでくれている。

「これからも大変だけど頼りにさせてもらうよ」



★★★



今日は盗賊との約束の日だ。

この前と同じようにクリス達に護衛を任せて街道を進んでいる。

「冒険者になった奴隷達はどうだ?」

「ああ、順調に成長をしてるよ。まだ危なかしいひよっこだがすぐに一人前の冒険者になるだろう」

たわいもない話しながら進んでいると前方から叫び声が聞こえた。

「助けてくれーー」

その声を聞いて場の空気が張り詰める。

声のする方を見ると冒険者らしき男が何かに追われながらこっちに向かって来る。

男は左腕に怪我をしているようでそれを右手で庇いながら必死の形相でこちらに走って来ている。

そのすぐ後ろにはスケルトンが5体、男を追い掛けている。

クリス達はすぐに荷馬車から降りて臨戦態勢を取る。

「こっちに来い!」

迷うことなくクリスがこちらに来るように手で合図する。

男がこちらに辿り着くと同時に倒れ込んだ。

「ハァハァ・・」

「もう大丈夫ですよ」

アイリスが回復魔法を使って男の手当てを始める。

「ファイアーアロー」

そして迎え撃つ準備万端とばかりに詠唱を終えたブレンダが魔法を放つ。

スケルトンに炎の矢が飛んで行くがスケルトンは避けようともせず真っ直ぐ突っ込んで来る。

スケルトンのいる場所に着弾して爆発が起きる。

爆音とともにスケルトンの骨がバラバラに弾ける。

「ひゅ~」

クリスが軽く口笛を吹いた。

「油断しないで」

注意を促すブレンダ。

爆煙の中からスケルトンが速度を落とさずにこちらに向かって来ている。

「2体抜けた」

「ほい、任せろ」

「行くね」

待ってましたとばかりにクリスとトマスが前に出る。

クリスが剣でスケルトンを切り裂き、もう一方のスケルトンにトマスは盾を片手に持って強烈な体当たりを食らわせてバラバラにした。

無事に戦闘が終わって助けた冒険者に話を聞くことにした。

「はぁ、はぁ、くそっ!なんだよこれ!こんな話は聞いてないぞ」

「落ち着け!何があった」

「商人の護衛をしてたんだ。いつもの簡単な仕事のはずだった。ベテラン冒険者パーティーが二組もいたんだ。なのに!なのに!」

冒険者の男は少し錯乱しているようだ。よほど酷い目に合ったのだろう。

「水を飲んでください」

グビッグビッ

アイリスから受け取った水を一気に飲む。

「ぷはーっすまねぇ。少し、落ち着いた」

「俺はバウアーって名前の冒険者だ。冒険者ギルドに荷馬車の護衛の依頼があったんだ。最近襲われたとかで護衛人数も多くて、報酬も悪くなかった」

「あっ・・」

クリスが思い当たったらしく何か言いそうになって慌てて口を閉じる。

うん、クリスの予想は当たりだと思う。盗賊に襲われたギニア商会の話だな。

「それで何があったんだ?」

「護衛の最中にスケルトンが現れたんだ」

スケルトン、それを聞いてリュウキは嫌な予感を覚える。おそらくゲームの街道で悪さを働いていたネクロマンサーだ。

「スケルトンなんてパーティー組んでたら簡単に倒せるだろう?」

「スケルトン50体以上にいきなり襲われたんだよ!こっちは10人の冒険者で応戦したけど勢いに呑まれて何人もやられて混乱状態の中どうにか逃げ出したんだ。畜生っ!」

「50体以上のスケルトンだと?」

クリス達が驚くのも無理はない。その数はどう考えても異常だ。リュウキは明らかにネクロマンサーの仕業だと確信する。

「でも、運がいいわね。よくその数相手に生き残れたわね」

ブレンダが不思議そうに言う。

「スケルトン達の注意が荷馬車に向いていたからその隙に逃げ出したんだ」

「スケルトンが荷馬車を?」

盗賊じゃあるまいし積み荷を欲しがるスケルトンなんて聞いた事がない。

そこでリュウキがハッとする。

「まさか!奴隷か」

「可哀想な事をしたと思っている」

バウアーは目をそらして言う。それで一同は積荷がなんであるか気付いた。

「助けにいきましょう!」

アイリスが強い決意を目に宿し叫ぶ。

「馬鹿な!ここは騎士団に報告しに街に帰るべきだろう。それにもう奴隷もやられているだろう」

「それはどうかな。奴隷を運ぶ荷馬車を見た事があるが中から逃げられないように頑丈な作りになっていたと思う。非力なスケルトンが中に入るには時間が掛かるだろう」

ブレンダが冷静に自分の考えを述べる。

「じゃあ、あんた達は50体以上のスケルトンを倒せるのか?」

「・・・」

バウアーの言葉に皆黙り込んだ。

「倒すのは無理だろうな」

「そんな・・」

リュウキが沈黙を破りポツリと言うとアイリスが口元に手を当ててつぶやく。

「でも倒す事は出来なくても助ける事は出来るかもしれない」

「正気か?あそこに戻るなんて無茶だ!」

「そうだな。命懸けの綱渡りになる。どうする?」

「決まってる。リュウキがやれるって言うならその期待に応えてみせるぜ」

「やりましょう」

「仕方ないわね」

クリス達はやる気満々だ。

「人手がいる。バウアーさん、私に雇われてみないか?もちろん危なくなったら逃げてもいい」

「それならまぁ・・」

「皆も私が退却命令を出したら逃げる事それが助けにいく条件だ」

「了解、安心しな、上手くいく」

クリスが新人冒険者の肩を軽く叩く。

「それじゃあ手短に作戦を説明する」



★★★




「いやがる、いやがる」

「早く助けましょう」

「はやるな。失敗するぞ」

荷馬車に群がるスケルトン達を視認できる位置までクリス達はやってきた。

「じゃあ作戦通りにクリスは左、トマスは右から攻撃を仕掛けてくれ」

クリスとトマスが走り出した。荷馬車に夢中になっているスケルトンの不意をつき、攻撃をする。

スケルトン達のターゲットが荷馬車からクリスとトマスに変わった。

「こっちだ。ついて来やがれ!」

クリスとトマスが逃げ出した。それにつられてスケルトン達が荷馬車から離れていく。

「いいわ、これだけ荷馬車から距離が取れたら大丈夫。ファイアーアロー」

ブレンダはクリスとトマスの両方を援護出来る絶妙な場所で魔法を放つ。

「ブレンダは詠唱中無防備だ。護衛を頼む」

「スケルトンと1対1なら任せておけ」

バウアーは剣を抜いてブレンダの護衛につく。

荷馬車に残っているスケルトンはかなり減った。

とはいえ、戦闘力のないリュウキでは1体のスケルトンにも勝てない。ここで秘策を出す。

「知っていると思うがこれは聖水だ。低級アンデッドなら1発で倒せる。もしもの時は迷わず使え」

街道にネクロマンサーがいることを事前に知っていたリュウキはもしもの時の為に聖水を準備していた。

リュウキは聖水を数本の聖水をアイリスに渡すとリュウキとアイリスがそれぞれが馬に乗って荷馬車に向かっていく。

荷馬車の周りには引き付けきれなかったスケルトンが何体か残っている。

リュウキは荷馬車に近付くと馬上からスケルトンに向かって聖水を投げ付けた。

聖水の入った瓶がスケルトンに命中して割れるとスケルトンは叫びながら崩れ落ちた。聖水の効果は抜群だ。

「助けてくれー」

「嫌だぁーー」

「怖いよぉお母さーーん」

荷馬車の中から奴隷達の叫び声が聞こえてきた。

奴隷達はまだ生きているようだ。

アイリスは馬から飛び降りて小窓から奴隷の生存を確認しようとする。

物陰に潜んでいたスケルトンにアイリスは気付いてない。

「危ない!!」

リュウキが聖水をスケルトンに投げつけると音を立てて崩れ去っていく。

「自分の命も守れない者が他人の命を救う事なんて出来ないぞ!どんなに焦っても周囲の確認を怠るな!」

「す、すみません」

「それでどうだ?奴隷は無事か?」

「はい」

「よし、次の作業に移るぞ」

乗ってきた馬を荷馬車と連結させる作業にはいる。

奴隷を運ぶ荷馬車の馬はスケルトンに殺されていると予想出来たのでリュウキが乗ってきた荷馬車から馬を切り離し乗ってきたのだ。

リュウキはアイリスが馬を連結する間、聖水を片手に持ち、周囲の警戒をする。

周囲を見るとクリスとトマスが一生懸命スケルトンを引き付けている。体力という概念がないスケルトンとの競走は不利だが、もう少しは任せて大丈夫そうだ。

ブレンダは2人を支援出来る位置に常に移動しながら魔法で支援している。バウアーもたまにブレンダに向かってくるスケルトンを上手く倒している。

「順調だ」

「出来ました。いつでも荷馬車を動かせます」

「よし、撤退するぞ」

アイリスが荷馬車を動かしリュウキも荷馬車に乗り込む。

そのままクリスの元に向かう。

「飛び乗れ!」

クリスが敵に背を向け荷馬車に駆け出す。後ろからスケルトンが追いかけて来るがリュウキが聖水を投げ付けて牽制する。

「ふぅー、危なかったな」

荷馬車に飛び乗ったクリスが何食わぬ顔で額の汗を拭う。

「次はトマスを拾いにいく」

荷馬車がトマスの方に走り出す。荷馬車を追い掛けて来ようとするスケルトン達にブレンダの魔法が炸裂する。

「させないわよ」

トマスの元に向かうとクリスが荷馬車から飛び降りた。

「応援に来たぜ!鈍重なお前じゃ危なかしい。俺が引き付けるから先に荷馬車に乗れ!」

「すまん、助かる」

トマスが乗り込むのを皆で支援し、クリスも無事乗り込んだ。

そしてブレンダとバウアーを拾って戦場を離脱する。

「・・・狭いわね」

本来、御者台は2人で交代で運転するのが一般的だ。そこにリュウキ、アイリス、クリス、トマス、ブレンダ、バウアーの6名がすし詰め状態だ。

「さぁ、尻尾巻いて逃げるぞ」

スケルトンに追い付かれないように全力で荷馬車を走らせる。

荷馬車が激しく左右に揺れる。

「ッッ・・変なとこ触らないでよ!」

「仕方ねぇだろ!狭いし揺れるし」

「いたッ足を踏んだな!」

「ご、ごめん」

スケルトンの追手がないことを確認して荷馬車のスピードが落とす。

「そろそろ馬を休めないと持たない」

「ここまで来ればひとまず安心だな。少し休憩にしよう」

「奴隷達の様子をみてきます」

アイリスがそう言って荷台の後ろにまわる。

外から鍵が掛けられている。

「僕に任せて」

トマスが力ずく鍵を壊す。

ドアを開けると異様な臭いが鼻を突く。

中にはぎゅうぎゅうに押し込められた奴隷達がいる。

輸送コストを減らすために押し込むだけ押し込んだという形だ。そこには生活スペースは全く考慮されていない。当然、排泄物も垂れ流しで服の着替えどころか水浴びも何日もしていないのだろう。衛生環境は劣悪だ。

奴隷=道具という考え方をしているのがよくわかる。

「体調の良くない人はいませんか?」

何人か体調が悪い者が水や食料を与えられ、治療されていく。

少し離れたところでアイリスの治療を見ていたクリスがリュウキに話しかけてきた。

「こんな環境じゃ体調が悪くなる人が出ても仕方ない」

「仮に何人か死んだとしても利益が出る計算なんだよ」

「胸糞悪くなる話だな」

奴隷達の簡単な治療が終わると一行はひと休みすることにした。

「あははっ本当に凄いなあんた達。スケルトンの大軍から奴隷を助けるなんてな。冒険者なのか?」

「ああ、リュウキ商会って名前のクランをやっている。今は新人冒険者のサポートをやっている。良かったら来るか?」

「ああ、今度行ってみるよ。助けてくれて感謝するよ。この事はちゃんと雇い主のギニア商会に報告する。きっとかなりの報酬が出ると思うぜ」

「・・・」

ギニア商会はウィンチェ侯爵に奴隷を売っている。そしてウィンチェ侯爵は奴隷を戦争に使い、その結果街を破滅に導く。

この奴隷達をウィンチェに渡す訳にはいかない。

「この奴隷達は渡せない。最初はギニア商会の荷物だったのだろうがスケルトンに襲われて所有権がなくなっている。そして私達はスケルトンから奴隷達を奪った。魔物から奪った戦利品は奪った冒険者に所有権がある」

「道理はあっているが、ギニア商会を敵にまわす事になるんじゃないか?俺は護衛依頼失敗になるのは構わない。実際助けて貰えなかったら命も落としていたんだからな」

「ギニア商会とは遅かれ早かれ敵対するのは避けられないから構わない。君には奴隷の救出を手伝ってもらった報酬は出すよ」

「・・・あんたは奴隷をどうするつもりなんだ?」

「リュウキ商会の従業員として働いてもらう。ギニア商会の報酬なんてたかがしれている。今の相場で奴隷1人金貨2枚程度だろう?つまり報酬は金貨2枚以下だろう。私は奴隷にそれ以上の価値を見出している」

「それが本当ならあんた面白い人だな。しばらく厄介になるのもいいな」

「ああ、歓迎するよ」

予定外の事態に一度クランハウスに帰り、奴隷を降ろしてからすぐに盗賊のアジトに向かい奴隷を買い付けに向かった。盗賊との交渉は順調に進み、クランハウスに更なる奴隷を連れて帰る事に成功した。

それを見たミリアの額には青筋が浮かび、わなわなと震えている。

「予定の倍の数ですが、詳しい説明を聞かせてもらってもいいですか?」

必死に作り笑いをしているが目が全然笑えてない。

リュウキはミリアの部屋に呼び出されて、事の顛末を説明させられる事になった。

「・・・と言うことがあってだな」

説明が終わるとギロリとミリアに睨み付けられる。

「わかっているとは思いますが、これだけの奴隷を受け入れるとクランの資金を圧迫します。一週間前の状況と同じです!」

リュウキはミリアの怒りに身体を萎縮させて、嫌な汗を流している。

「・・はい」

「ふぅ~、まぁそれは後で考えるとして・・・」

ミリアはため息をつくと諦めて真剣な表情に変わる。

「問題はギニア商会です。前回の盗賊から買った奴隷、そして今回のスケルトンに襲撃された奴隷、更に今回盗賊から買った奴隷。事情はどうあれ3回も彼らの商品を横取りしている形になっています。絶対に文句言ってきますよ?」

「・・・ああ、わかっているよ」









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