始まり
「荒方、お前真嶋と家近かったよな?」
担任の教師に言われたその言葉が全ての始まりだった。
「はい確かに近い……というか隣人ですけど」
「なら良かった、最近真嶋休んでるだろう。だからお前真嶋の分のプリント二週間分家に入れといてれ」
「はい……分かりました」
俺は内心面倒くさがったが教師の頼みに生徒が逆らえるはずもなく嫌々了承した。
真嶋 菜奈は、最近休みがちでもう一週間は学校に来ていない。
入学当初は比較的明るい感じだったが、それもだんだん元気をなくして行った。何があったのだろうと思ってはいたが、本人に聞く勇気はなかったため真相は知らない。
六時限目が終わり俺はまっすぐ家に帰ろうとする。
すると後ろから声をかけられる。
「蓮、今日お前暇だろ。一緒にゲーセン行こうぜ」
「俺を暇人扱いするな、修二」
話しかけてきたのは、柊 修二 俺の親友だ。
修二とは幼稚園の時からの親友でいわゆる幼馴染みと言うやつだ。
「お前、部活も入ってないし暇だろ〜」
「残念だったな、今日はバイトだ。というかお前天川はどうした?」
天川とは修二の彼女で、他クラスにいる。
「うっ、やめろ今の俺にその言葉は効く」
「お前、また喧嘩したな」
「してない、してないただちょっと食い違いがあっただけで」
「それを喧嘩って言うんだよ」
修二と天川はよく喧嘩をしていて、いつも俺が仲直りの手伝いをさせられる。
こいつらを仲直りさせるのは中々に骨が折れる。なので何回もやりたいものじゃない。
「じゃあな、俺は帰る」
「待ってくれ、仲直りを手伝ってくれ。蓮」
「やだよ、お前ら二人の問題だろお前らで解決しろ」
そう言って俺は教室の扉を勢いよく閉めて家に帰った。
そうして住んでいるマンションに着き。自分の家に入る前に俺は一人暮らしをしている真嶋の家のピンポンを押した。
一回押しても荒川が出てくる気配がはない。二回目を押そうとしたところで家の中から「ドンッ」と鈍い音がした。何があったのかと思い俺はドアノブを手に取る鍵は空いていて家の中に入れた。
家の中はとても人が住んでいるとは思えないほどに荒れていて、ごみ袋が積み上げられていた。その中に真嶋が頭から血を垂らして倒れている。真嶋の近くには踏み台とロープが落ちていた。
とりあえず真嶋の手当をしなければいけない、俺は一旦自分の家に帰り、包帯と消毒液を手に取り再び真嶋の家に戻る。傷口を少し消毒して包帯をする。このまま帰ってもいいんだが、一応真嶋が起きるまで待って事情を説明した方が良さそうだ。………