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無告

バトルを書いてる時が一番楽しいかも…



「やった!!!ついにやったぞ!!!!」


 …激戦の中、噴火した火山を見て狂喜乱舞するトラディ。彼と戦っていたユウとマールはただただ困惑することしか出来ずにいた。


「……?何がそんなに嬉しいんです…?」


 …返事は無い。ユウの質問など聞く耳も持たず、喜びの余り咳き込み始める始末だった。


「ゲホッ…ゲホッ……長かった…魔族の歴史から葬り去られた奴の存在を知り…この機会を今か今かと待ち侘びていたんだ!!!こんな老いた体などもう要らぬ!!臆病者の先代や…力だけが取り柄の無能な今代を超えた最強の魔王に…いいや!!魔族も人間も…神すら超え!我がこの世界の頂点に君臨するのだ!!!」


 トラディはそう叫ぶと、突然電池が切れたように地面に倒れてしまった。すると、倒れた彼の口から邪悪な気配を漂わせた靄のようなものが飛び出した。その靄は上へ上へと昇っていき、火山の頂上に吸い込まれていった…


『ガッハッハッハッハッ!!!』


 さらなる噴火と共に野太い笑い声が聞こえてきた。すると、噴火口から零れ落ちそうになっていた溶岩がその場に留まり、段々と人の形を成していった…


「何ですか…あれ…?」


 その光景を見たユウ達は嫌な予感に喉を詰まらせた…


「………あれは…巨人族…?」


 噴火口から産まれようとしている異形の姿はヒショ達も確認していた。ヒショの言葉にバンは目を細める。


「巨人族?いくら何でも大きすぎないか…?それに、あんな姿の巨人族なんて見た事もないが…」


「…で、でもそうじゃなかったらあれは一体何なんです…?」


『ウオオオオオオ!!!!』


 島中に轟く爆音。火山の異形がついに目覚めたのだ。その姿は溶岩がそのまま人の形になったもので、その溶岩は血液の如く体の中心から流動しており、関節の部分は黒く冷え固まっている。顔は強面だが、どこかトラディの面影を感じさせた。その面影に真っ先に気づいたのはバンだった。


「……あれは…まさか……トラディ…なのか?」


『ガハハハハ!!!随分小さくなったものだなぁ!バン!!まるで小汚いネズミのようだ!!』


 異形の哄笑と嘲笑入り交じる声でバンは確信した。それでも、分からない事だらけで彼の頭の中はぐちゃぐちゃになったままだった。


「…やはりお前なのか…?何なんだ…その姿は……?」


『ガッハハハ!気分が良いから教えてやる!この体はかつて初代魔王に仕えていた、炎を纏いし巨人族の長の体だ!!こやつは初代大勇者に討たれたが、死んではいなかった…そして初代大勇者が死んだ後、さらに力をつけ暴れ始めたのだ…2代目魔王の言葉も聞かずにな…!つまり、魔王軍で初めて魔王を裏切った男という訳だ!!』


「……何だと!?そんな話…聞いた事……」


『無理もない!こやつは最期、2代目の大勇者によって今度こそ息の根を止められた…だが、この強靭な肉体だけは消し去ることは出来なかったのだ…そこで人間共はこのアイン島に肉体を封印し、悪用されぬよう存在を秘匿していた…秘匿していたのは我々魔王軍も同じ…叛逆者がいた歴史など恥辱以外の何物でもなかった…2代目魔王はあやつがいた歴史そのものを亡き物にしたのだ』


「………だから…俺も…父上も知らなかったのか…」


『我もつい最近までは知らなかった…発見出来たのは本当に偶然だった…嫌々派遣された戦地跡、そこに転がっていた一冊の本…そこに巨人(この体)について、そしてそれを甦らせる方法が書かれていたのだ…!「極大の魔力を衝突させよ、炎の身に宿りし本能揺さぶられ、巨人の肉体は目覚めん」と!』


「……?!待て…じゃあ…俺をここに連れてきたのは…」


『あぁ…お前を利用させてもらった…この島の鉱石をただの石に変えたのも我だ…大勇者がヴィッタを討伐しに行ったと聞いて上手く巡り合わせることが出来るかもしれんと思ってな…まぁ、上手くいかなければ適当に理由をつけてお前にこの島を襲わせる気だったがな』


「………だとしたら何故俺を!」


『簡単な事だ!お前達が邪魔だったんだよ!魔王の血を継ぐお前達が!!他の魔族へ次代の王が誰か、という選択肢を与えない為に!お前達を消す必要があった!玉座は一つでいいんだよ!!…しかし、中々面白い劇だったぞ?…()()の殺し合いはな…!』


「…?何……?」


「……兄弟って……」


 兄弟…突然飛び出てきた言葉にノゾムとバンは顔を見合せた。その時、上から溶岩の雨が彼らに襲いかかってきた!バンは逃げようとするが先程の水のせいで上手く体が動かない…が、ピッケが彼の首根っこを掴み走り出した!ノゾムもヒショを抱きかかえて走り出す。降り注ぐ溶岩を背に脇目も振らず通路を走っていく。


『…少し動いただけでこれ程とは…素晴らしい…ぐくく…ネズミらしい逃げ足の速さだ…』


 …どうにか溶岩の雨から逃げ切ることが出来た4人。ピッケに下ろされたバンは怒りと困惑混じりにトラディを睨みつけていた。


「…ヒショ、大丈夫?怪我は無い?」


「だ、大丈夫…大丈夫ですから……早く下ろせ!!」


 心配そうに顔を覗き込んでくるノゾムに、ヒショは溶岩よりも顔を熱くしながら騒ぎ始めた。騒ぐヒショに謝りながら、ノゾムは彼女を優しく下ろすと、真剣な顔付きに戻ってトラディの方を睨みだした。


「答えろ!兄弟とは…何の事だ!?」


 バンはトラディに向かって叫ぶ。トラディは腕を組んだ後、今度はニヤニヤと笑い始めた。


『冥土の土産に教えてやる…お前の母親の事だ…!!』


「母…上……?」


『そうだ…お前は母親と話した事がないのだろう?貴様の母親の名は「ユメナ」…先代魔王の…妃だ……!あのローブを被った女だよ!』


「………?言っている意味が分からない…どういう事だ!」


『ユメナは不貞を働いていたんだよ!不要な侵略を拒む先代魔王に見切りをつけ、より武力を重視する現魔王に鞍替えしたんだ…!まさか、先代魔王とも子供を拵えているとは思わなかったがな……』


「…俺と……ノゾムが…本当に……?」


 あまりにも突然の告白、バンは目を白黒させその場に立ち尽くしていた。トラディは彼らを再び見下すように笑い声出す。彼からすればもはやバンなど、魔王子という肩書きだけの取るに足らない存在…その無様さに笑いを止めることが出来なかったのだ。…その笑い声はバンにとって敵であるはずのノゾム達を苛立たせていた。


『御苦労だったな…だが、お前達は用済みだ!死ねぃ!!』


 トラディは右腕を天高く振り上げた。すると、空が赤く染まっていく…否、そう見える程の火球が空を覆い尽くしてくいたのだ!数など数え切れない、視界に捉え切ることすら出来ない圧倒的な物量…ノゾム達は戦慄した。


「…ひとまず逃げよう。それで勇者ちゃん達と合流しよう!」


「おい!上!上!!」


 まず第一波、相談する暇も与えられず炎の雨が降り注いできた!ノゾムはバンを抱きかかえ、ヒショ達と共に走り出した。炎の雨は幸いにも速度はなく普通の人間でも全力で走れば逃げ切れる程だったが、後方からの衝撃音や熱波が恐怖心を煽ってくる。


「………??!ノ、ノゾム!?何故俺を…!?」


 気を取り戻したバンだったが、すぐにまた困惑の表情を浮かべ始めた。先程まで戦っていたはずのノゾムに抱えられている…そんな状況だったので無理もない事ではあったが。


「何でって…何でだろう?分からないけど…ほっとけなくって…ね?ピッケさん」


「おう!…元はと言えば、オイラ達が動けなくしちまったんだけどな……」


 バンは小さく首を振った。彼らの言葉に共感や、納得など…何一つ出来なかったのだ。


(…?何を言っているんだ?何の理由もなく俺を助けたのか? …敵である…俺を…?)


 バンは唇を噛み締めた。困惑と…敵に助けられた情けなさでもう運ばれたままでいる事などもう我慢ならなくなる。バンはノゾムの肩を強く掴んだ。


「?どうしたの?」


「……もう大丈夫だ…自分で…走れる」


「………分かった」


 ノゾムは手早くバンを降ろした。バンは最初こそフラフラと覚束無い足取りだったが、辛そうにしながらもすぐにノゾムのすぐ横を走れるようになっていた。その後ろをヒショとピッケがついていく。


『……ならば…これなら逃げ切れんだろう!』


 その言葉と共に第二波が放たれた。先程降り注いだ炎よりも明らかに速度が上がっていた。全力で逃げているのにも関わらず、炎の雨は4人のすぐ後ろにまで迫って来ていた。もはや万事休すか…そう思った時、少し遠くの方で何やら慌てふためいた様子の2人組がいた。


「あ!王子様!?ヒショさん…?何か1人多い?」


 …ユウとマールであった。どうにか2人と合流出来たのだ。当の2人は死闘を繰り広げていたはずの敵が一緒に走ってきた事に首を傾げていたが、4人にはその事情を説明する余裕もなかった。


「よく分からないッスけど……聖域…展開!!」


 マールは膝をつき、祈るように手を組んだ。すると、彼女の足元に魔法陣が広がりそして、その外側からドーム状にバリアが出現した。


「皆さん!早くこの中に!!」


 言われるまでもない、飛び込むようにノゾムとピッケはドームの中に入っていく。だが、その瞬間にノゾムは気付いた。横にいたバンがいなかったのだ。彼はドームが目の前という所で、足がもつれて転んでいたのだ…容赦なく、炎の雨が彼に降りかかる——


「何!転んでんだ!バカ!!!」


 後、1歩進めばドームの中…なのにヒショは突如踵を返すと、倒れたバンの体を掴みあげ彼をドームの中に投げ飛ばした!バンは助かった…だが、ヒショは逃げ切れず炎は彼女へ直撃した。彼女の体は前方に大きく吹き飛び、運良くドームの中へと入ってきた。直後、炎の雨が絶え間なくドームの上に降り注ぐ。


「ヒショ!!!」

「嬢ちゃん!!」

「ヒショさん!!!大丈夫ですか!?ヒショさん!!!!」


 血相を変えて3人は彼女に駆け寄る。意識はあるようだったが酷く痛そうに体を丸めていた。


「……カハッ…最悪…」


「ヒショさん…少し待っててください……この攻撃を凌いだら…すぐに回復しますから…!」


 ドームの維持に全力を尽くしながらも、マールは笑顔でヒショの身を案じていた。ノゾム達もヒショが意識を失わないよう必死になって声を掛け続けていた。


「………何で……俺を助けた!!!?」


 突然、怒りに身を震わせながらバンが叫んだ。


「何で…ねぇ…分かんないですよ…体が勝手に…動いてたんです…」


 そう言いながらヒショは自嘲気味に笑った。ゆっくりとうずくまっていた体を仰向けに動かし、目を少し開けてノゾムの顔を見つめ始めた。


「…………ヒショ…」


「……アンタ達の…アンタのせいですよ…バカ王子…私がこんなお人好しになっちゃったのは…全部…アンタのせい…」


(…そうだ…全部……貴方のせいだ……必ず…()()取らせてやる……!)


 …ヒショは静かに、目を閉じた。意識を手放した彼女の手を握り、ノゾムは半ばパニックになりながら名前を叫び続けた。


「ヒショ…?ヒショ!!?」


「王子様!?落ち着いてください!まだ息はありますから!」


 ユウはノゾムの腕を抑えて宥めようとするが、彼女の声は彼にはほとんど通じていなかった。その間も、炎はドームに撃たれ続けていた。


「……ぐっ…すみません…もう……」


 マールが苦しそうに呟いた。その瞬間、ピシッと奇妙な音が響いた。ユウが上を見ると、ドームにヒビが入っていたのだ。


『しぶとい奴らだ…!これならどうだ!!!』


 中々倒れない彼らに業を煮やし、トラディは炎をドームへ集中させる。ドームに降る炎はまるで滝のようになっていく。


「……だめ…!維持…出来ない…!!」



 …パリンッ!!


 

 防御壁が破れ…炎が、襲いかかる——



「…………………」


 ノゾムは…何も考えず、頭上から来るものを見ていた。命の危機にも関わらず、何も思わず…他人事のようにその光景を見ていた。ただ…真っ白な頭で……()()()()()()














『…………ッ!?何だと!?我の炎が一瞬で消え…!?』


 炎は何故か、彼らに届くことはなかった。それどころか、空を覆っていた炎すら一つたりとも見当たらなくなっていた。一瞬の出来事にトラディも…ノゾム達も驚きを隠せていなかった。


「……え?何で……?……そ、そうだ!聖女様!!ヒショさんを…!」


「え?…は、はい!!」


 ユウは慌ててマールに声をかけた。マールはハッとした様子でヒショに近づき、回復魔法をかけ始める。


『……い、一体…何をした!先代魔王の子!!?今のは一体…!?』


「……………?俺が…?」


 トラディは見ていたのだ、ノゾムが炎を浴びる直前に彼に()()が起きたのを…それがどのような力なのか、どのような動きなのかは見えなかった…そして、分からなかった。長い時を生きていた彼ですら、全く見た事のない異質なモノだった……本人(ノゾム)も全く分かっていなさそうではあったが。それでも、聞かずにはいられなかったのだ。


「………?王子様、何かされたんですか?」


「俺も…見えなかった…何かしたのか…?」


「え?え?ゴメン…全然分かんない…」


 困惑していたのは周りもだったが、彼自身が一番困惑していた。質問してくる周りに対して、もう苦笑いを見せることしか出来無かった。


「まぁ、とにかく助かったぜ!さすが魔王の息子ってとこ…?」


 ピッケはトラディを見ると急に怪訝な顔になった。まもなく怪物の絶叫が聞こえてきた。


『グオオオオッ!?体が言う事を聞かぬ!?ぬうぅ…まだ魂の融合が完全では無かったのか!?』


 トラディは苦悶の表情を浮かべながら体中を掻きむしり始め、溶岩が千切れボロボロと落ちていく。追撃は無さそうだ。しかし、目の前の危機を脱せたとはいえ根本的な元凶(トラディ)を解決する方法を思いつくことが出来なかった。皆揃って頭を抱えてしまった。


「じいちゃ〜ん!みんな!!良かった!無事かい!?」


 そんな折、サイツが心配そうな顔をしながら駆け寄ってきた。同時にヒショが覚醒し、治療してくれていたはずのマールを押し退けるように飛び起きた。


「………どうなったんです?」


「お、おはようございます…えっと…その……」


「…ハァ…あの様子じゃあ、まだ安心出来なさそうですね…」


 火山を見上げたヒショは大きなため息をついた。とはいえ、ヒショが目覚めたことには皆安堵していた。ピッケは嬉しそうに鼻を擦ると、サイツへ話しかけた。


「サイツ!町は大丈夫そうか!?」


「うん!いつ噴火が起きてもいいように建物にもバッチリ対策してきたからね!その甲斐があったってもんさ!!…でも、あの化け物…どうする?じいちゃん?」


「……あの水なら…」


「………無理ですよ」


 ピッケの言葉をヒショが遮った。彼女に言い返しもせずに「やっぱりな…」と漏らしがっくりと肩を落とした。彼は自身の提案が薄々現実的ではないと理解していたようだった。


「…とはいえなぁ…それ以外に方法なんてあるのか…?」


「無理なものは無理でしょう…あんなデカいのにどれだけの量が必要だと思ってるんです…?それに量を用意できたとしても燃え滾ったアイツの体にかけたって効果が出る前に蒸発しちゃいますよ…」


「参ったな……」


「水って…じいちゃん達が研究してたあの水の事…?」


 2人の会話にサイツが入ってきた。2人はうんうん、と頷くとサイツは真剣な表情で口に手を当てた。小声でブツブツとあぁでもないこうでもないと呟いており、どうやら何かを計算しているようだった。


「………2時間…2時間あればアイツにぶっかけられる量を作れるかも…!!」


「は…?…2…時間…?」


「この島にいる全員に協力してもらえば、そのぐらいでいけるはず…!」


「だ…だとしても、そんな悠長に待ってくれるはずないでしょう!?あの体に効くかも分からないですし…」


「……………」


 ……マールはじっと3人の話を聞いていた。水とは一体何なのかはよく分からない。それでもあの魔物を倒す唯一の方法だというのはわかった……自分に出来る事…自分にしか出来ない事…ひたすら頭の中で考えて…考えて…思いついた。


「…………私に、任せて貰えませんか?」


「………………え?」


 聖女の顔には悲痛な覚悟が現れていたのだった…


(……例え…この命が…燃え尽きても……必ず…!)

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