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不穏

サボってました

 ユウは激闘の末、見事次代の大勇者となった。既に夕方になり大勇者の引き継ぎの儀が行われていた。闘技場の中心にユウと大勇者が横1列に並んでいる。


「……これより大勇者の引き継ぎを行います!」


 ワァーッと歓声があがる。ユウの顔は嬉しさと恥ずかしさで真っ赤になり、プルプルと小刻みに震えていた。


「……本当に大勇者になったんだね」


 魔王子は嬉しそうにユウを見ていた。


「…そうですね」


 ヒショはさっぱりとした返事をする。


「…彼女はこういう場にはあまり慣れてないのかい?」


 ホシがカーレ達に尋ねる。先程負った怪我のせいか、ホシは顔以外の全身に包帯を巻いていた。


「だろうなぁ…ガッチガチじゃん」


「ハハ…儀式の時もそうだったよな…」


 ジオッソを除いた大勇者候補達は関係者席で魔王子達と一緒にその様子を見学していた。会場から一斉に割れるような拍手が起き、魔王子達も続いて拍手を送る。勇者は会場全員からの祝福を受けて嬉しそうに涙ぐんで…というより完全に泣いていた。


「……ユウちゃん、大丈夫?」


 心配そうに大勇者はユウへ声を掛ける。ユウは慌てて涙を拭いた。


「…はい!その、少し嬉しくなってしまって……」


「…そっか。これからユウちゃんにも少し話してもらうんだけど…いける?」


「…はい……噛まないように頑張ります」


 ユウの表情が緊張で少し強ばっていた。


「えー次に、新たに大勇者となったユウ様から一言…」


 そう言われユウはピンと背筋を伸ばす。事前にユウはスピーチがあることは聞かされていたが、緊張で考えていた言葉が頭からスッポリと抜け出てしまった。言葉に詰るユウに大勇者は優しく彼女の肩に手を置いた。


「大勇者様……」


「ユウちゃん、ゆっくりでいい…思った事をそのまま言葉にすれば大丈夫だ!無理にいいことなんて言わなくていいさ…下手に考えた言葉なんかよりここまで来た道で得たことを言った方がきっと素敵な話になるから」


「…!はい!」


 ユウは少し前に出て、大きく息を吸った。呼吸を整えて観客に向けて、そして何よりも魔王子達に向けて話し始めた。


「皆さん……本日はありがとうございました!最初にこれだけ言わせてください…私は、自分だけの力でここまで来れたとは全く思ってないです!その…こんな田舎の小娘が…泣き虫でどうしようもないくらい弱かった私が大勇者になれたのは、周りの人達が私を信じてくれたからなんです!私なんかを推薦してくれた大勇者様もずっと私を信じてくれて…そのおかげです。そして、ずっと…こんな私を傍で支えてくれた仲間がいてくれたおかげです!弱音ばっかり吐いてた私を、優しく…ちょっとだけ厳しく助けてくれて…勇気をもらって……変、ですよね…私勇者なのに誰かに…魔物に勇気をもらってるなんて」


 クスリとユウは笑う。観客達は静かに、だが暖かい目で話を聞いていた。


「それに……他の大勇者候補の皆さんのおかげとも思ってます」


「「「え…?」」」


 3人は揃って首を傾げていた。よく分かってなさそうな3人が目に入り、気持ちを分かってもらいたいのかユウの声がどんどん大きくなっていく。


「だ、だって!皆さんの今後一生が決まる大事な時だったのにすごく優しくしてくれて…ホシさんなんか儀式の時も私を庇ってくれたし…何で皆さんが選ばれたのか本当に身に染みて分かりました!ただ強いからじゃない!強さと優しさを持っている人達だったから……本当に皆さんにも感謝してるんですよ…?」


 真っ直ぐな彼女の言葉に3人は少し照れくさそうに笑っていた。


「だから…その…私、まだまだ足りないところだらけで大勇者様みたいに頼りがいはないかもしれませんが!精一杯頑張ります!約束します!私は必ず!この世界を平和にしてみせます!…えっと……よろしく…お願いします…」


 恥ずかしさが戻ってきてしまい、ユウの声はどんどん萎んでしまった。最後の方にいたっては小声で何を言っているのか分からないほどだった。終いにはその場に屈んで顔を伏せてしまう。


(……私、今調子に乗ってとんでもない大見得切っちゃいました!?ヤバいです、恥ずかしすぎます…もう無理……)


 ユウは半ば自己嫌悪に陥っていた。ユウは恐る恐る顔を上げる。会場はしんと静まりかえっていた。


「…ふふ…」


「頑張れー!!応援してるぞ!」


「これからもよろしくねー!」


 会場から再び割れるような拍手が起きた。ユウは周りを見渡しながら立ち上がる。肩を叩かれ振り返ると大勇者が笑顔でサムズアップをしていた。それにつられてユウも笑ってしまっていた。よく見ると彼の後ろには黒いローブを着た4人組が立っていた。


「さて、そろそろ最後の仕上げだ」


 そう言うと、大勇者は4人組に視線を送ると4人組はユウを囲うように並び、彼女の足元に魔法陣を展開した。ユウは急な事に困惑していた。


「え?え?え?」


「落ち着いて…そういえば具体的に何をやるかは言ってなかったっけ?まぁ、すぐ終わるからじっとしててね」


 大勇者はユウを落ち着かせた後、魔法陣に向かって魔力を込め始めた。魔法陣は光り輝き、粒子となってユウの周りを飛びまわる。


「本当に…これ大丈……!?」


 言い切る前にユウは光の粒子に飲み込まれてしまった。観客達もザワザワとなり始めたその瞬間、光の粒子は爆発を起こし会場は光に包まれた。


「……よーし、カンペキ!!」


「あ!あそこ!」


 光が消えた後、観客からユウの姿が見えた。ユウはフラフラになって、どうにか立っている状態だった。


「ユウちゃん!起きてー!」


 大勇者に目の前で叫ばれ、ユウの朦朧とした意識が戻ってきた。


「……?大勇者様?」


「どう?これで大勇者の力が引き継がれたはずだけど…?こう、なんか胸の中から湧き上がるような力みたいなの感じない?」


「………?」


 ユウはキョトンとした顔で首を横に傾ける。大勇者も同じような顔で首を傾げた。


「あ、あれ?確かに大勇者の力がユウちゃんに流れてったのは感じたし…それが根付いたのも…感じたんだけど…?」


「……?儀式、成功したの?」


「さ、さぁ………?」


「え?あんな光の後に何も無いとかある?」


 大勇者の様子を見て、観客達も不安を覚えてザワザワとし始める。


「………と、とにかく!ここに新たな大勇者が誕生した!!それを祝って夜は思っいきり食べて飲んで楽しもう!それでは、解散!!!!」


 大勇者はやや強引に引き継ぎを終わらせてしまった。だが、観客達の関心はすぐに宴会に移り、あまり気にはしていなかった。


 そして、あっという間に日が落ちて…


「えぇー…それでは、新たな大勇者様誕生を祝して……」


「「「「カンパーイ!!!!!!」」」」


 リトの町の中心にある広場。そこで元大勇者と新たに大勇者となったユウ、そして大勇者の仲間となった魔王子達への祝杯が挙がった。


「……意外と正式加入の手続きってすんなりいく物なんですねぇ」


 ヒショが不思議そうにしながら酒を注いでいた。そのままヒショは注いだ酒を隣にいた魔王子に渡す…事はなく自分で一気に飲み干してしまった。

 宴会が始まる前に魔王子達の正式加入の手続きが行われた。加入手続きはかなり手間がかかるから宴会の始まりに間に合わないのを覚悟した方がいい、と2人はホシから聞かされていた。が、書類に署名するだけで終わってしまった。


「なんだ、プリモさんから聞いてないの?あの人、ユウちゃんが大勇者になれなくても2人を正式加入できるように裏で色々準備してくれてたみた…い……」


 酒で赤くなっていた元大勇者の顔がみるみるうちに青ざめていく。ヒショも嫌な予感がして振り返ると、そこには鋭い目付きで元大勇者を睨むプリモがいた。


「大勇者様…いえ既に大勇者ではありませんでしたね。では『ローエ』さん?私は貴方の口の軽さについて散々注意してきたはずですが?」


「あ、あはは…でもほら!別に悪いことをしていたんじゃないですし…」


 ジリジリとプリモはローエにじり寄っていく。すると、間に魔王子が割り込んだ。


「あ、あの…ありがとうございます!俺達のためにそんな事までしてくれているなんて…でも…元を辿れば面倒事を作ったのは俺達だから…あまり大勇…ローエさんの事は責めないでほしいです……」


 魔王子はプリモをじっとみつめる。プリモは彼からの視線に耐えきれず、ハァと大きなため息をついた。


「えぇ、分かりました。折角の宴会に水を差す様なことはいい事ではありませんし……ローエさん、次は気をつけるようにしてください」


「は、は〜い」


 すっかり小さくなっていたローエは小声で返事をした。プリモは魔王子へ視線を戻す。


「…本当によく頑張りましたね。おめでとうございます」


「…それは勇者ちゃんに言ってあげてください」


「……そうですね、それでは」


 プリモはその場を後にした。


「…ありがとうー!あの人のお説教長くてさぁ」


 ローエは魔王子に礼を言ったが、魔王子は少し冷めた目でローエを見ていた。


「……少しは反省してください」


「…ごめん」


「…で?肝心の主役はどこに?」


 ヒショは辺りをキョロキョロと見渡す。すると、広場の一角に人集りが出来ていた。


「あそこにいるんじゃないかな?…2人とも行ってくれば?」


 ローエは2人にそう促す。魔王子が立ち上がると、ヒショもそれに続いてゆっくりと立ち上がる。そのまま2人は人集りの方へ歩いていった。優しい母親の様な笑顔でヒショと話す魔王子、ぶっきらぼうだがどこか嬉しそうに笑うヒショ。そんな2人をローエは微笑ましそうに眺めていたのだった。


「あの…本当にありがとうございました」


 ユウはホシに向かって深々と頭を下げた。


「気にしないで…勝手にやったことだから…それにしても2人は随分元気そうだね」


 ホシはチラリとカーレ達の方を見る。


「いやー、防御魔法使ったんだけどさ〜」


「そのまま場外に押し出されちゃってさ〜」


 2人はヘラヘラと笑っていた。


「でもアイツに勝っちゃうなんてさ〜」


 カーレは酔いが回ったのかフラフラとした足取りでユウに近づき、そのまま馴れ馴れしく彼女の肩を抱き寄せた。


「あ、あの……?」


「今までどんな修行してたの?また時間作るからさ!教えてよ」


「カーレ…嫌がってるだろ、やめてやれ…全く、可愛い女の子を見るとすぐこれだよ」


「はいはい、悪かったよ」


 レッジに諌められ、カーレは仕方なさそうにユウの肩から手を離した。ユウは笑ってはいたが、少しずつカーレから距離をとってその場を後にしようとした。すると魔王子達が遠巻きに見え、ユウは駆け足で彼の方へ走っていった。


「あ、勇者ちゃん!」


「王子様!正式加入おめでとうございます!!」


 仲睦まじいそうに話す二人、魔王子と会えて心底嬉しそうなユウの顔を見てカーレは何かを察して残念そうに肩を落とした。


「ありゃ、もう()()()()()がいたワケね」


「人というか魔物だけど…まぁ、本人達が幸せなら何も問題は無いか」


「……せっかくのパーティ水入らず、邪魔しちゃ悪いからアッチで飲もう!ホシ、お前も一緒にどうだ?お仲間も一緒に」


「そうだね、ご一緒させてもらうよ」


 3人は一緒に自身の仲間達のところへ向かったのだった。


「本当に良かったですよ!これで何も気にせず王子様と一緒に旅ができますね!あ、後ヒショさんもおめでとうございます!」


「ついでにみたいな感じで言うんじゃねぇですよ…全く……」


 ヒショは不機嫌そうに唇を尖らせる。だが、すぐにニヤニヤと嫌味が滲み出る笑顔に変わっていた。


「しっかし、こうなるために努力してきたとはいえ、まさか本当に大勇者サマになっちゃうとはね〜…いや〜ジオッソのヤロウの悔しがる顔が目に浮かびますよ!ヒヒッ♪」


「ヒショ……あんまりそういうことは大声で言わない方がいいと思うけど…」


「へいへい、分かってますよ〜…でも、アイツの悔しがる顔を実際に見たかったですね〜!今頃、どこかの勇者サマみたいに大泣きしてるんじゃ……」


 酔いもあったのかこの時のヒショは特に口がまわっていた。しかし、急にヒショは口を閉じて考え込むように空を見上げ出した。2人は、急に黙り込んだヒショを見ていたが、ユウは耐えきれなくなり彼女に声をかける。


「ヒショさん?……あの、どうかしました…?」


「……いや、そういえばアイツが戦ってる時になんかこう…妙な感じが…変なもの…とにかく違和感があって……なんだったんですかね?」


「…そう言われると……あの人も当然、光属性でしたけど何か変な感じだったんですよね…うーん、いっそ直接聞いてみましょうか?」


「……でも、ジオッソはどこにいるの?あの後からずっと姿が見えないけど…?」


「バカですねぇ…あんなイキったこと言ってて今更人前に出れるわけないじゃないですか…下手したら、もうこの町を出ているかもしれませんね〜…さて、あんなヤツの事はほっといて飲みましょうかねぇ…!おーい、酒持って来てください!酒〜!」


 ヒショは手を挙げて近くにいた人に声を掛ける。魔王子とユウは少し嫌な予感がしていたが、そんな2人を尻目にヒショは浴びるように酒を飲み始めたのだった。


「………………」


 ジオッソは町を出てすぐの道で口紐を結び直していた。外は既に暗く、美しい三日月がぼんやりと道を照らしていた。そんな月とは裏腹に、彼の目にはどす黒い感情が渦を巻いていた。


「……………………!!」


 突如、後ろに気配を感じジオッソが振り向くと、そこにはローエが立っていた。彼の顔は怒っているようにも憂いているようにも見えた。


「もう出るのか?」


「……あぁ、もうここにいても意味は無いから」


「どうだ…少しは考えは……」


「変わるわけないだろう!?」


 ジオッソは怒りで手を震わせながら、ローエを睨みつける。だが、ローエは表情一つ変えることなく真っ直ぐ彼の事を見つめていた。


「…ジオッソ……」


「ボクは認めない…!人と魔族が手を取り合うなんて…出来るはずがない!していいはずがない!……間違ってるのがどっちかすぐに分かるさ…!」


「…………分かった…でも、お前の考えを認めたわけじゃない。お前なら、必ずいつか分かってくれると思ってるからさ…」


「……ふん………………」


 ジオッソはゆっくりと歩き出す。ローエは自分の頬を叩くと、大きく息を吸い込んだ。


「忘れるなー!!!!何があったってお前は!!!俺の息子だからなー!!!!!俺は絶対、見捨てたりなんかしないからなー!!!!!!!!」


 …ジオッソは暗闇に姿を消した……


(お前は俺の息子だ…何があってもそれは変わらない……)


 お前が「   」だったとしても———


































「そろそろか…………」


 魔王幹部の一人、ヴィッタがニヤリと笑う。彼の元に集められた魔族の数は驚異的であった。魔王軍に所属する魔族の2割は集まっていた。少なくとも、町1つを襲撃するにはあまりにも大人数である。


「えぇ!士気も上々です!!」


「ふふ…そうか……」


 ヴィッタは既にこの作戦が成功するかなど頭になかった。いくら相手に大勇者や大勇者候補もいるとはいえ、これだけの数なら特に指示などせずとも勝利は確実だった。彼はむしろ、作戦が終わった後のことを考えていた。


(……やっと完成した()()なら大勇者共など虫けら同然…いやそれどころか、魔王の首を取ることだって簡単だ!!次の魔王は俺だ!歴代の魔王が成し得ることが出来なかった世界の完全な掌握を俺が!!してみせる!)


「ゲヒヒヒ!!!行くぞ!!!!」


 野心を滾らせ、ヴィッタ率いる大軍勢は出発した。


 宴が終わり、皆床に就いていた。既に日付が変わり朝日が登るまで後数時間といったところでヒショが目を覚ました。


「……うーん…何か寝付けない…」


 ショボショボとした目を擦りながら、ゆっくりとヒショは起き上がった。


「……あれ?」


 ヒショは違和感を覚え、壁に耳を当てた。壁の向こうにある隣の部屋には魔王子が泊まっていた。なので、ヒショなら魔王子の魔力が感じ取れるはずだった。


「……何も感じない…?出掛けた?こんな時間に…?」


 ヒショはユウを起こそうとするが、疲れていたのか揺すっても叩いても全く起きる気配がなかった。ヒショは仕方なくユウを置いて部屋を出る。廊下には微かに魔王子の魔力が残っていた。


(…魔力を使って移動するほど切羽詰まってたんですかね…?)


 ヒショは魔王子の魔力を辿っていくと、宿の外に続いていた。真っ暗な町の中を1人歩いていく。人の声どころか鳥や虫の声一つ聞こえない。あまりにも不気味な静寂が拡がっていた。


(……魔力の反応が大きくなってる、でももう町の入り口ですよ…?アイツ本当に何して…)


 そんな事を考えていると、ぼんやりと人影が見えた。


「…あ!いた!」


 人影はヒショの声に驚いて振り向く。


「……!?ヒショ?どうしてここに?」


 人影の正体はやはり魔王子だった。ヒショは呆れた様子で魔王子に近づいた。


「どうしてって……それはこっちのセリフですよ…何でこんな時間に…」


「ごめん…なんか中々寝付けなくて…すごく胸騒ぎがしてさ…」


「……はぁ?そんな事で?馬鹿らしい、心配して損しました」


「……ごめんね…でも、心配してくれたんだ」


 そう言って優しく笑う魔王子。一方、魔王子の言葉を聞いた

ヒショの顔は暗闇でもわかるほど真っ赤になっていた。


「う、うっさいですねぇ!ほら、早く戻りますよ!」


 ヒショは魔王子の背中を押して、町に戻ろうとした。だが、急にヒショの足が止まってしまった。


「…………!」


 背中が凍りつくような感覚…ゆっくりとヒショは振り返った。


「な……んで…………」


 そこには、先程までいなかった魔物の大軍勢が現れていた。魔物達はリトの町へ真っ直ぐ向かってきていた。


「ヒショ!?何で!?さっきまであんな大勢いなかったよね!?まるで瞬間移動してきたみたいな……」


「…!……わ、分かった…アイツら『転移魔法』を完成させたんだ!マズイですね…!とんでもない事になりましたよ!」


ウオオオオオオン!!


 町からはサイレンが鳴り響き、一斉に明かりが灯される。すぐに人々の慌てふためく声も聞こえてきた。


「ヒショ!街の人達の避難を手伝ってあげて!!」


「え!?アンタはどうするんです!!?」


「……何とか食い止める」


「んな無茶な…」


 魔王子に向かって渋い顔をするヒショだったが、魔王子は一切振り返ることなく大軍を静かに見つめていた。


「…あぁんもう!『防御(ディフェンド)』!それから…『攻撃(オフェンス)』!」


 ヒショが魔法を唱えると魔王子の周りに光が集まり、彼の体に光が入り込んでいく。魔王子は自身の体から力がみなぎるのを感じていた。


「ありがとう、ヒショ」


「バカ勇者をすぐに向かわせますから!…それまで死ぬんじゃねぇですよ……」


「…大丈夫……大丈夫だよ」


 魔王子は小さく返事をする。いつも通りの優しい声で。それ以上の会話は不要だった。ヒショは全速力で町へと走り出したのだった。

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