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生徒

作者: hs

卒業式の後、一番に訪れたのは音楽室だった、家族でもなく、友人でもなく。そこは真昼の静けさが霧のように部屋一面を覆っている。


まるで別世界に迷い込んだみたいに、人っ子一人いないそこの寂しさが襲ってきた。いくら時間をかけても満足しなかった。年中存在する扇風機、規律を知らない机と柔らかな椅子、真新しいピアノに音の悪いピアノ。忘れることはないエアコンの存在感。


全くの別人と思った。卒業した瞬間から部外者になってしまった。

椅子に座って、誰も来ない四階の廊下を空き放たれた扉から見れば、光と音と影の三重奏が無限に続いている。孤独な優越感が身を包む。


時がたつと、太陽がミカンの差し入れを持ってきてくれる。


音楽室が夜を迎える準備をする。

椅子の影は深くなり、机の表面は色づき、わずかに浮かんだ埃が落ちていく。


居場所がない。


眠る邪魔をするのは心が痛む。時計の音が心臓を突き刺した。


小さな風が体を家に帰す。


私はもう、部外者だった。

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