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傭兵部隊の任務報告1~物語の始まり  作者: 谷島修一
グロースアーテッヒ川の戦い
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第8話・帝国軍第一副旅団長 エリザベータ・スミルノワ

 大陸歴1655年3月5日・正午過ぎ


 ソローキンの部隊は、一時は共和国軍を圧倒しつつあったが、共和国軍の中央の部隊が全軍で押し寄せて来たため逆に押される形となった。


 一方、戦場の西側で戦っていたキーシンの陣がその様子を見て、徐々に東側にも移動しつつ、戦場の中央の方に部隊を移動する。全体的に見ると戦いは膠着状態となっている。


 キーシンは数騎を率いて、戦場を移動しつつ、重装騎士で他と判別しやすいように赤いマントを纏っているソローキンの姿を捜した。しばらく、捜すとソローキンが前線に近いところで戦っているのを見つけると大声で話し掛けた。

「総司令官!兵の疲れが限界です。一旦陣形を整えるために後退をすべきかと」

「疲れているのは敵も同じだ!このまま攻撃を続行する!」

 ソローキンはそう言うと剣を振りかざし敵兵に向かって行った。


 キーシンは、その様子を見て少々呆れた様子で、自分に付いてきた騎兵に伝える。

「後方の各旅団にも攻撃するように命令を伝えよ」

 部下たちは了解したと答えるように敬礼して各旅団に向かって馬を走らせた。


 すぐに、後方の中央で陣を張っていた、ミハイル・イワノフの第一旅団にキーシンからの伝令が到着した。

 伝令からの命令を聞くとイワノフは不敵に笑いを浮かべると、傍にいる副旅団長のエリザベータ・スミルノワに声を掛けた。

「どうだ、君がやるか?」

 スミルノワは、その言葉に少々驚いて質問を返した。

「司令官が指揮をとらなくてよろしいのですか?」

「私はそろそろ引退する身だ。手柄は君にやろう」

 スミルノワには、イワノフのその言葉が冗談か本気なのかがわからなかった。最近、彼は口癖の様に “引退する” と言っている。

「ありがとうございます。では、部隊の半分を率いて出撃します」

 スミルノワは答えた。

「よかろう。だが、無理はするな」

「はい」

 スミルノワは敬礼して、イワノフの元を離れた。


 第一旅団の戦闘準備はすでに整えてあったので、すぐに出撃することができる。

 まず、スミルノワは望遠鏡で前線の様子を確認する。

 西側のソローキンの部隊がやや押され気味の様子。東側のキーシンの部隊は徐々に中央に移動しつつあった。両部隊の真ん中のわずかに開いているところを目指して突撃し、その先に居る共和国軍を攻撃することにした。


 スミルノワは馬上から魔術師達に声を掛け、最前列に並ぶように指示した。

 魔術師達は一斉に呪文を唱える。辺りに霧が立ち込める。これは主に空気中の水分を凝結させ操ることができる水操魔術という。水操魔術は局地的に雨を降らせたり、このように霧を発生させ目くらましに使われる魔術だ。


 日中、この付近風向きは早朝と違い、陸から海の方へ向かう。スミルノワの魔術師達が発生させた霧は戦場の真ん中の方へと流れていく。その流れに合わせるようにスミルノワは突撃命令を出した。


 突然立ち込める霧に、帝国軍の兵士達は、これがスミルノワの作戦だと予測できたため、混乱なく戦闘を続けていた。逆に共和国軍の兵士の多くが、それに困惑した。そして、霧の中から突然現れた新手の部隊に、さらに驚くことなる。

 長時間の戦いで疲れていた共和国軍は、霧の中から現れたスミルノワの部隊に成す術もなく、次々に討たれていった。


 それを見たキーシンは、疲れている兵士達を少々休ませるため、一旦後退し、陣形を整えることにした。

 ソローキンの旅団は変わらず戦闘を続け、無理な戦い方をしているようだった。

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