SS 煤けた空に君は未だ、
僕は車内に居た。暖房の効いた車内は暖かく、あくびが一つ落ちた。
窓の外をながめる。
次々と過ぎ去っていく街灯のあかりは流れ星のようだった。
流星群が浮かぶ空はグラデーションだ。
見上げればくすんだ青色、水にさらしたような灰色、薄まった深海、流行りのピスタチオグリーン、絵の具の筆を洗った水みたいな色、黄色信号の色、そして橙。やわらかく、やさしい色だった。
雲はインディゴブルー。煤けた藍染の色が、ひらべったく広がっている。
それ以外の全部は影法師だった。呑み込まれそうな黒色。君の瞳に似ている。
遠くの山が燃えているようにみえて、僕は漸く、夏が遠いことを思い出した。
だけど秋よりは、近い。
一等星は未だ瞬かない。