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幸せな悪役

二人の赤ずきん

作者: 小鳥谷 咲久

 あるとことに、赤ずきんという心優しい女の子がいました。赤いフードをいつもかぶっているから、赤ずきんと呼ばれているのです。

 ある日、赤ずきんのお母さんは言いました。

「赤ずきん、おばあさんの家に、パンとワインと花束を届けてくれないかしら」

 優しい赤ずきんはもちろん頷き、次の日には少し大きいかごを持たされて、森の中をてくてくと歩いていました。かごの中には、パンとワインと花束と……それから、鉄砲が入っていました。赤ずきんのお母さんが「森の狼に気を付けてね」と持たせてくれたのでした。


 てくてくてくてく。

 歩き始めてしばらくたった時でした。突然、しげみの中から狼が出できたのです。しかし、賢かった赤ずきんは驚くことなく鉄砲を構えました。

 慌てたのは狼です。

「ごめんなさい!殺さないで!とってもおなかがすいていたから、そのパンをちょっともらおうと思っただけなんだ!」

 なるほど確かに、オオカミは今にも餓死しそうでした。

 心優しい赤ずきんは、鉄砲の代わりにポケットから予備のフードを取り出しました。そして狼に差し出し、こういったのです。

「このパンは、今からおばあさんに渡しに行くの。だからあげられないわ。でもおばあさんは優しいから、もしかしたらパンを分けてくれるかも。さあ、これをかぶって。今からあなたも赤ずきんよ」

 狼は、感動しながら赤いフードをかぶりました。

 そして二人は歩き始めました。


 てくてくてくてく。

 狼が言います。

「ねぇ、赤ずきん。のどが渇いてしまったから、ワインを少し飲まないかい?」

 赤ずきんが答えます。

「だめよ。それはおばあさんと三人で飲むの」

 狼は頷きました。

 そして二人は、また歩き始めました。


 てくてくてくてく。

 狼が言います。

「ねぇ、赤ずきん。あそこに花畑があるよ。少し摘んでいったら、おばあさんも喜んでくれるんじゃない?」

 赤ずきんが答えます。

「だめよ。勝手にお花を摘んではいけないわ。それに私達には、立派な花束があるじゃない」

 狼は頷きました。

 そして二人は、また歩き始めました。


 てくてくてくてく。

 とうとう、二人はおばあさんの家にたどり着きました。

 コンコンと赤ずきんが家の扉をたたきます。

「おはいり」と声がしたので、二人はおばあさんの家に入りました。

 すると、おばあさんが首を傾げます。

「おや、赤ずきん。どうしてお前は二人いるんだい?」

 赤ずきんが答えます。

「途中の道であったの。この子も赤ずきんなのよ」

 おばあさんはまた首を傾げます。

「どうして、片方の赤ずきんの耳は大きいんだい?」

 赤ずきんが答えます。

「オシャレよ、おばあさん」

 おばあさんはまた首を傾げます。

「どうして、片方の赤ずきんは茶色いんだい?」

 赤ずきんは答えます。

「それは、人種差別だわ。良くないわよ、おばあさん」

 確かに、とようやく頷いたおばあさんは、赤ずきんたちをテーブルに招きました。イスも、ちゃんと三人分用意してくれました。


 「「「いただきます!」」」

 パンとワインを美味しく食べた赤ずきんと狼をおばあさんは途中の道まで送ってくれました。


 てくてくてくてく。

 狼が言います。

「おばあさん、喜んでくれてよかったね」

 赤ずきんが答えます。

「そうね、花も気に入ってくれたみたいで良かったわ」

 狼が言います。

「ねぇ、赤ずきん。お願いがあるんだ。僕と、友達になってください!」

 赤ずきんが答えます。

「もちろんよ!」


 てくてくてくてく。

 狼と途中の道でバイバイして、家に着いた赤ずきんは幸せでした。

 今日は、赤ずきんに素敵な友達が増えた日です。


 めでたしめでたし。

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