音楽室の亡霊と若葉ちゃん
若葉ちゃんあんま関係ない気もするけど気にしない(
「てぃんこーてぃんこーり〜るすた〜」
ピアノの伴奏に合わせておどろおどろしい歌声が聞こえてくる。
「なんだその不気味なきらきら星は」
「で、デッド○ペース」
放課後の音楽室。
音楽室は固定式の机と椅子が扇状に並んでおり、普通の教室よりだいぶ広い教壇の左にピアノが置かれている。
そして、今は真ん中にドラムセットが置かれていて、その前にギターボーカル、ギター、キーボードがいかにもバンドっぽい演奏をしている。
「どうかな?」
「どうかなと言われてもな」
ギターボーカルの一年生が聴いていた2年生に尋ねている。
「一緒にバンドしようよ〜」
「いや、オレは…」
2年生の男子は演奏に参加していなかったがベースらしい。
「御手洗さんもなんとか言ってくださいよぅ」
若葉の腕を取って懇願している。
どう言うわけかバンド参加に乗り気でない2年生の説得の手伝いをさせられている。
「私はあんま触られるの好きじゃないんだ」
そう言って振り払いつつ、ピアノの方に行く。
「私はあまり音楽に含蓄がないので、特別講師を呼んでみた」
いつのまにかピアノの前に長い髪で顔を隠すようにしている女子生徒が座っていた。
「お、音楽室の亡霊…」
ギターの子が思わず呟く。
「亡霊?」
「あだ名だよ。放課後、暗い音楽室から演奏が聞こえてくるからと覗くと彼女が演奏しているから、驚いて気を失ったりする事故が絶えないんだって」
「失礼な話だけど、私も無理かも…」
亡霊さんがピアノをポロポロと引いていると2年生が眉をピクッと動かした。
「君は耳が良すぎるみたいだねぇ」
「?」
「それじゃ、あーあーあーあーあー」
ピアノを指一本で鳴らしながら発生練習をする。
「はい」
2年生にどうぞ、と言う感じで手を差し伸べてピアノを叩く。
「え?おれ?」
「さんはい」
構わずもう一度ピアノを叩く。
仕方なく2年生も声を出す。
「あーあーあーあーあー」
「ワンモア」
「「あーあーあーあーあー」」
今度は亡霊さんも声を重ねる。
その絶妙に重ねられた声にゾクっとする。
「ご一緒に」
今度は若葉にも参加を促し、ピアノも両手全部の指で演奏する。
「「「あーあーあーあーあー」」」
若葉は2年生と音を合わせたが、亡霊さんは違う音階で重ねている。
「え? 何これ」
「凄くね?」
「合唱部とか、はじめんのかな?」
「え?ちょっ、ちょっと待ってよ、かず兄は私とバンドするんだってば」
「なんでオレなんかに」
「オレなんかじゃないよ、かず兄とバンドしたくて今日までやってきたんだから」
「…」
バンドのメンバーを見回すと仕方ない、と言う顔をしているので、分かった上で組んでくれているらしい。
気がつくと幽霊さんと若葉が連弾している。
必ずしも上手くないと言うか、若葉は完全に素人だ。
それでも、凄く惹かれる演奏だった。
「話し合いは済んだかな?」
「…」
2年生は微妙な顔をしている。
「まあ、一曲弾いてみたら、良いんじゃないかな」
「…」
「やろ? きっと一緒に演奏したら楽しいよ?」
ボーカルの子がギターを引き始める。
2年生がベースを合わせる。
「!」
みんなの演奏が重なって気持ち良い。
2年生のベースが上手く合わさって音を変えていた。
一通り演奏し終わってピアノの方を向くと、2人とも居なくなっていた。
「良いのか?」
「…私がバントとか出来ると思う?」
「全然」
「でしょ」
音楽室から微かに演奏の音が聞こえてきた。
急にノイジーな音がギュイーンギギギギョギョギョと入る。
「これは…」
「デッド○ペース」
なんか使いたいネタを適当に繋いだだけなので、まあ、なんだよね(