若葉ちゃんと大晦日
大晦日にありがちな事。
作者は友達いないのでこんな年末を経験したことはねーですが。
「なんかクリスマスに続いて押し掛けちゃって悪いわね」
「いえいえ、むしろ私のわがままなので…」
先週クリスマスだとか言って泊まり込んだのに大晦日、またみんなで椎名のウチに集まった。一応、謝ったのはエリナ。
「あの門の前に置いてあったオブジェが門松よね?」
「エリナさんの家では飾らないですか?」
「飾らないわね。年末年始、日本に居ないことの方が多いしうちの親」
「あー」
エリナの親は外国人とハーフ。
「ゆたかのうちは一年中家にいないよな」
「そう言うことは勝手に言ったらダメじゃないかな…」
「別に良いけど」
「ごめん」
「うちはアパートだからそう言うのを置くスペースはない」
「マンションの入り口になんかあった気がする」
アパート住みの もかとそもそも興味がない若葉。
「お茶の支度してくるので、先に座っててください」
「おいーす」
「若葉ちゃん…」
若葉の返事も酷いが もかは既に炬燵に潜り込んでいる。
椎名を見送ってから若葉が呟く。
「なんつーか、友達いないのかね」
「あのね…」
「イベントごとに集まって夜中まで騒ぐ友達が4人も居たら十分じゃないかな、友達なんて」
「4人?」
ひーふーみーと数える若葉。
ここに居るのは ゆたかと もかとエリナだ。
「あんたもでしょ」
「え、ああ、私も入れて良いの?」
「つかそもそもあんた経由だからね?」
「そう、だっけ?」
若葉は友達と言うのが良く分からない。
「年越しといえば蕎麦ですけど、みなさんお蕎麦は大丈夫ですか?」
炬燵でお茶を啜りながらそんな話をする。
「アレルギーとかじゃないけど、蕎麦はあんまり」
「若葉ちゃんは調べてないだけでアレルギーの危険もありそうな気がする」
「どう言う事?」
若葉は何を食べてもだいたい具合悪くなったりする。
「でも、蕎麦アレルギーは本当に亡くなる方いらっしゃるので」
「蕎麦アレルギーは呼吸困難になって最悪死ぬらしい」
「何度か食べてるけど、まだ生きている、と思う」
「思うて…。蕎麦っぽいけどフェイクの蕎麦とかってあるのかしら」
「どうだろう…」
「駅の蕎麦屋でも、本物の蕎麦だとは思うよ。小麦粉とか入ってるけど」
「蕎麦粉100%だとボソボソになっちゃんだっけ?」
「うどんなら大丈夫ですか?」
「うん、うどんはたまに食べる」
「年越し蕎麦って、年を跨いで食べる物じゃないんだ?」
年越し蕎麦とかほとんど縁がないエリナ。
「逆に年を跨いで食べると金運が落ちるとか言うところもあるらしい」
「夜中に食べるのは二年参りの風習があるところで、年が変わるのを待つ間に振舞われたりしたかららしいですわね」
「振舞われるって言うことは、ただなの?」
「それ目当てでご飯食べないで寺社に行く人も居たみたい」
「いつの時代?…」
「わりと最近も聞きましたけども」
「二年参りとか寒そうでやだなぁ。神様も仏様も良く分からないし…」
「若葉ちゃんはそうだよね。あ、蕎麦一口食べてみる?」
「ん。じゃ、うどん一本上げる」
「一本ね。ふふっ」
普段ゆたかの前にすっぽり納まっている若葉だが、さすがに食事中は横に座る。
でも、若葉は両利きなので ゆたかにぴったりくっついている。
椎名は別に他にも友達とか居るし、実際二年参りに行こうと誘われたりもしたが、こちらを選んだ。いわゆる百合とは違う気もするがこの2人が大好きなのだ。
ちなみにエリナは学校の生徒8割くらい友達だし、他校にもたくさん友達がいる。ゆたかは部活関係とかで割と人気者。若葉も本人が気にしていないだけで、友達と思われていたり慕われている。もかは正体不明なので友達がいるのか何なのか誰も知らない。
「除夜の鐘突きに行くぞとか言われなくて良かったよ。寒いし」
「まあ、若葉ちゃんはそうだよね」
「若葉ちゃんは日が変わるまでなんて家にいても起きてられないしね」
「子供か私は。否定はできないが…」
「否定できないんじゃん」
「てゆーか、この辺に除夜の鐘打てるところとかあんの?」
「音は聞こえるけどねぇ、毎年」
「そうなんだ」
「やっぱ深夜まで起きてないでしょ」
「…」
「まあ、初詣は日中に行きましょう。2時頃とか暖かくなってから」
「まあ、それなら」
「ちゃんと晴れ着も準備万端なんで」
「え…」
なんか最近事件とか思いつかないので完全に日常系…




