若葉ちゃんとクリスマス?
百合豚キャラの椎名がみんなをクリスマスに誘う回
「みなさん、クリスマスとかはどうなさいますの?」
珍しく椎名の方から聞いてきた。
「もしかして、まだクリスマス信じてるの?」
ゆたかの膝の上で本を読んでいた若葉が返した。
「へ?」
「クリスマスっていうのは作り話なのよ?」
「いや、クリスマス自体は実在するから」
エリナが突っ込む。
「あなたも何か言いなさいよ」
黙ってるゆたかにも突っ込む。
どうしてもそういう役回りになりがちなエリナ。
「さすがに毎年のことだから突っ込むのもなんかな」
ゆたかが苦笑いする。
「なるほど、そういうことでしたか」
「クリスマスは飛沫感染だからマスクをしていれば大丈夫」
もかが机の影から現れた。
「それも違うから」
「それで、椎名んちではクリスマスはどんな事をするの?」
読んでいた本を閉じたところを見ると前向きに検討してくれる感じなのだろうか。
「…えーと、ここはカボチャを食べたりゆず湯に入ります、とか答えた方がよろしいのでしょうか」
ボケは得意じゃない椎名。
「うん、無理はしなくても良いよ」
「なぜか日本では唐揚げを食べたりする、かも?」
「ローストチキンでしょ?」
「アメリカでは七面鳥を食べるらしいけどヨーロッパではガチョウだったらしい」
もかはゴシップだけで無く小ネタも好きだ。
と言うか情報を集めるのが好きなのかもしれない。
「七面鳥ってどんな鳥だっけ?」
「さあ?」
「ちなみにロシアのクリスマスは1月7日らしいわよ」
「らしいってロシア人」
「いや、私は日本が長いから実感がないわ」
「あなたはクリスマスとかどうしているの?」
放課後の音楽室。
「教会でオルガンを弾いてますね、だいたい」
「教会? クリスチャンなの?」
「そうじゃないけど、アルバイト? まあ、お金をもらっているわけではないけども」
「変な曲とか」
「普通にクリスマスの曲とか賛美歌ですから」
「あ、御手洗さんちゃーす」
体育館はバスケ部が使用していた。
「なんであんたらここにいるの」
他校の生徒が大勢入り乱れている。
「いやあ、なんか遊びに来ただけって言うか」
4校くらいの生徒が入り乱れて練習したりだべったりしている。
「こいつらは関係ないな」
「なんすか、それ」
「んー。あんたらはクリスマスパーティーとかするんでしょ?普通に」
「そうっすね。あ、御手洗さんも来てくださいよ、カラオケ」
「やだよ」
「行きましょうよぅ。御手洗さん来てくれないと、にのまえさんも来てくれなそうだし」
「確定じゃね」
「わーん」
「それで、どうすることにされたんです?」
「んー、プレゼント買うお金ないし、パーティーって言ってもそんなに食べられないし、何より寒いの嫌だ」
「別にプレゼント交換とか無理にしなくても良いと思いますよ。学生ですし。あと、寒いのが嫌なら泊まりでも大丈夫です」
「椎名ん家は旅館みたいに広いからなぁ」
「お風呂も広いですよ」
「風呂、は、その、なんだ」
「誰も若葉さんの身体を見て驚いたりしませんから」
さんざん着せ替え人形にされたりしているので、今更である。
「うん、そんじゃ、まあ、うん…」
「とりあえず、ゆずを用意しておきますね」
「………」
椎名の家はザ日本家屋と言った感じの平家だ。
ところどころ二階や屋根裏もあるようだが玄関先からは見えない。
「うーむ。集まってみたは良いけど、まったくクリスマスって雰囲気では無いわね」
「日光江戸村…。行ったことないけど」
「なんか、あの裏の山まで全部椎名んちらしい…」
「「「………」」」
メンバーは若葉、ゆたか、エリナ、もか。当然この家の住人の椎名、の5人だ。
「あ、みなさんいらっしゃい。お待ちしておりましたわ」
「わ、和服…。でもクリスマスカラー、なのかな?」
「若葉さん用にサンタコスも用意しておりましてよ」
「いらんがな」
長い長い廊下を歩く。日本建築には廊下は無いから、この壁のない廊下のような通路は縁側になるのか。
それぞれ足音に特徴があって面白いが、一人分足りなかった。
「なに? じっと見て」
「いえ、若葉さんの足音がしないので、ゆたかさんが持ち上げているのかと」
「今は持ち上げてない。若葉ちゃんは足音どころか服の擦れる音もしないからたまにびっくりするよ」
「人を幽霊みたいに…。もかだって突然現れるよね」
「私のは瞬間移動だから。足音もすれば動けば音もするよ」
冗談である。
「私はお茶の用意をしてきますので、座ってくつろいでくださいね」
「ういー」
「そこはお構いなくとか言うところでは?」
「あ、これ、炬燵と言うやつね?」
エリナがうれしそう。
「正しくは掘りごたつ」
もかが1番に炬燵に入る。
一辺1mほどの正方形の炬燵だ。
家政婦さんに手伝ってもらいながらお茶とお菓子を持ってやってきた椎名はふと考えた。
「若葉さん、ゆたかさん、エリナさん、もかで4人…」
家政婦さんを待たせてそっと襖を少し開け、隙間から中の様子を伺う。
「くっ」
ガッツポーズをする椎名。
部屋の中ではみんなが炬燵を囲んでいるが一箇所空いていて、若葉はゆたかの懐に納まっていた。
「お嬢様、はしたないですよ」
「なんか本当に和洋折衷ね」
和室に小さな掘りごたつ、クリスマスの飾りに、鍋にロースチキン。
和服にフリルのついたエプロンの家政婦さんが給仕してくれている。
「クリスマスとかよく分からないのですが、こう言うのしてみたかったんです」
合わせた手を口のあたりに持ってきて椎名が赤くなる。
((((可愛いな))))
なんだかんだ楽しく食事をして、旅館のような風呂にみんなで入って、同じ部屋に並べて敷いた布団に入った。
「若葉ちゃんと会長は共同浴場とか雑魚寝とか苦手なタイプ」
「ま、まあ、馴染みがないしね。慣れないだけ、よ?」
「私は1人がいい」
「そう言いながら介護されてたじゃない」
「その辺は中学の頃だから、慣れだね。私も慣れた」
もうちょっとドキドキ入浴タイム、みたいな感じも見たかったけど、アレはアレで良かったですわ
とか言わない。
だがこの時の椎名は翌朝ゆたかの布団に潜り込んだ若葉を発見することをまだ知らない。
若葉は冷え性でゆたかは体温が高いので仕方ないのです?
クリスマスの話とかガッチリかけるなら準備編と当日編に分けれたと思うんだけど、パーティーとか良く分かんないの(




