若葉ちゃんの放課後
ゆたかは部活なのでいつも1人で(?)時間を潰している若葉ちゃんの話
「そうさ、私は何も出来ない非力で無力な女の子だ。才能あふれる凄い人たちのおかげでこうしていられる」
若葉が言っていることとは正反対の偉そうな態度で仁王立ちしている。
「私は運良く彼女らと知り合うことが出来たが、君はどうだい? 私たちと出逢ってしまったぞ?」
昼休み、教室の自分の席で若葉が漫画を読んでいる。
周りにはいつもの面々が集まっていた。
一冊読み終わったっぽい若葉が本を閉じて呟く。
「漫画だと、最初気に入らないと思ってた奴が実は良い奴だった、とかあるけど、実際には有り得なくね?」
「…」
「…それは、突っ込み待ち?」
「え?」
「若葉ちゃんの初見は怖かったわ。最初近寄らないようにしてたし」
エリナが口の下に人差し指を当てるポーズで思い起こしながら呟く。
「…実は私も最初なんかきも、いや怖いなって…」
「いま気持ち悪いって言おうとしなかった?」
「いや、違うよ?」
口を滑らせた ゆたかが必死に否定している。
「基本的に若葉ちゃんに初見で良い印象持ってる人って居ないと思うよ」
「ちょ、こら」
机の下から現れた もかを椎名がヘッドロックして自分の身体で隠すようにする。
「あー、そうなのかー」
放課後、若葉が廊下を歩いていると長身の生徒が後ろから近づいてくる。
「あっれ〜、この辺に御手洗先輩が居た気がするんだけどなぁ〜」
芝居がかった調子で言うと、胸を押しのけて若葉が出てくる。
「おい」
「冗談っすよ、先輩。また縮んだんじゃないですか〜?」
ケラケラ笑っている。
「可愛いだろ」
「…はい」
「なぜそこで真顔になる」
「そりゃ、本当に可愛いからに決まってるじゃないですか〜。やだな〜」
「そりゃどうも」
「で、どこ行くんすか?」
「図書室だよ」
「勉強っすか?相変わらずまじめっすね。私が持って行ってあげますよ」
「持っていくってなん…」
片手でひょいっと持ち上げられてしまう。
「荷物じゃないぞ…」
「え、でも、1人じゃ本棚の本も満足に取れないですよね?」
「…うん」
図書室を出て、音楽室の前を通り掛かると、怪しげなピアノの音が聞こえてくる。
中を覗こうとすると、横から女の子が飛びついてきた。
「みたらいさーん」
「おわーっ」
「たまには準備室の方にも来てくださいよぅ〜」
「いや、バンド音楽とか興味ないから」
「いやん、寂しいこと言わないで〜」
「客がいなくて寂しいなら、適当に集めてやれば良い。許可もらってからやれば誰も文句言わんだろ」
「あー、そう言う具体的なこと、考えたことなかったわ」
「おい」
「準備室も半分勝手に占拠してる状態だし」
「生徒会長辺りに相談したら段取りしてくれるんじゃないか? あいつはそう言うの得意だし」
「御手洗さんは顔広いよね、こんなにちっちゃいのに」
両手で顔を挟み込んでムニムニする。
「やめろ」
生徒会室に入るといきなり奥に通されて座らせられる。
すかさずお茶とお菓子が置かれる。
あまりの手際の良さにドアを開けた生徒会長であるエリナまで呆然としている。
「良いのかよ、生徒会室でお菓子とか食ってて」
「え? 生徒会室と言えばお茶って相場が決まってるじゃないですか〜」
「決まってるのか?」
「まあ、一応、問題にならないように根回しはしてあるから、心配しないで良いよ」
エリナが悪い顔をしている。
部活が終わる頃を見計って体育館に向かうと、他校の生徒がやってくる。
「あ、御手洗さん、ちーっす」
「若葉ちゃん、こんちゃっすー」
「相変わらずちっちゃ可愛いっすね、若葉ちゃん」
「まとわりつくな、お前らの目当ては ゆたかだろ!」
頭を撫でようとする手を掻い潜る。
「え〜っ? ゆたかさんにアプローチして良いのん?」
「ダメだけど」
「こらこら、これは私のだから」
ゆたかが割って入って若葉を抱き寄せる。
「良いなぁ」
「私もこんなの欲しい〜」
「こんなのってなんだ」
「まったく、人のこと怖いとかキモいとか言う割にどいつもこいつも寄ってきやがって。身長か?身長がないからなのか?」
「…」
長身で活発な若葉を想像して、今の姿だからこの程度で済んでるのではないかと思う ゆたかだった。
最初のセリフは若葉ちゃんの周りに対する対応をなんとなく示しただけなので、どんな事件で誰に言ったのかは勝手に想像してください(暑くてどうかしている




