ゆたかが面倒臭い日
ふたりでダラダラしているだけです
ゆたかの両親が共に家にいない事が多いこともあって、若葉は ゆたかの家に入り浸っていて、ゲームをしたり勉強をすることもあるが、割と何もしないでいるだけの事も少なくなかった。
今日は ゆたかが集中できない様子なので3人がけのソファーに2人並んで座って何をするでもなく居た。
「ねえ、愛してるって10回言って」
若葉の肩に頭をグリグリ擦り付けていたかと思うと、突然そんな事を言い出した。
「愛してる、愛してる…」
「心が篭ってない」
若葉に縋り付くようにして顔を見上げてる。
ゆたかの方に向き直り両手で顔を支えて続ける。
「愛してる、愛してる…」
こうなると若葉の顔はどちらかと言うと怖い。
だんだんと追い詰められていく気になってくる。
「愛してる。はい10回」
「う、うん」
抱きついたまま膝の上に頭を乗せるように倒れ込む。
「ごめん」
「何が?」
ほんとうに何も気にしていない様子で、若葉が答える。
「めんどくさくない?」
「めんどくさい」
「えーっ」
「別に良いんじゃないか、めんどくさいのも、それはそれで」
ゆたかの頭を撫でる。
「ゆたかは普段わがままとか言わないからなぁ」
「言わないだけで、わがままだよ、凄く」
「知ってる」
「…」
「…私のこと好き?」
若葉は普段から感情というものが曖昧で、愛とかそういうものがよく分からないと言っている。
だから、この質問にはあまり意味がない事を知っていた。
「どうかなぁ。私には私の心は見えないから、君が思っていてくれているほど、君のことを思っているかは測れない」
「…」
「それでも、これまで出会った誰よりも大切だと思っている。かも?」
「かも?は余計じゃない?」
「そうかな」
「そうだよ」
そう言ってまた頭をグリグリしている。
「私の身体がもうちょっと温かかったら、安心させてあげられるのかもしれないけど…、運動でもするか」
「ダメだよ。無理をして元気になれる人は、無理ができる基礎がある人だけだから」
「…いや、別に無理はしないよ?」
「ダメです」
「はい」
「とりあえず、今日は泊まっていって良い?」
「むしろ、ここに住みなよ」
「さすがにそれは、どうかなぁ」
「あ、ちょっと迷ってる?」
「いや、さすがに無いな」
「無いかぁ」
「なんかこう、理由がないと」
「!」
ゆたかの目がキラキラし始めた。
「…とりあえず、この話は止めない?」
「何か考えておくね、適当な理由」
「…」
ゆたかの両親の正体とかどうしようかな。
あと、ゆたかに兄弟とかいるのかいねえのか。
居たのか居なかったのか…




