ゆたかの髪型
書いたか忘れたけど、高校での ゆたかはショートカットで、中学の頃は三つ編みのおさげを左右に垂らした髪型でした。
昼休み、席について若葉が本を読んでいる。
後ろの机に腰掛けた ゆたかが若葉の頭を撫でたり、髪を一房手にとっていじったりしている。
ゆたかが周りの視線に気がついて動きを止める。
あからさまに動揺するのが面白い。完全に無意識だったのだろう。
「女の子同士で髪の毛をいじったりするのは普通だと思いますわ」
「だ、だよね〜」
ゆたかが引っ込めた手を開いたり閉じたりしている。
「中学の頃は ゆたかの髪が肩くらいまであったから、私らがいじったりしてたんだよね」
「なんで切っちゃったんですか?」
なぜかいつも机の影から現れる。
「似合うっしょ?」
短いのにロン毛を払う様な仕草をしてちゃかす。
「ぐうの音も出ないほど似合ってて悔しいわ」
「なぜ悔しがる」
「逆に、なぜ中学の頃は伸ばしてたんですか?」
「中学の頃って言うか、小さい頃…」
小学校3年生くらいの頃、ゆたかは女の子だからと区別されることに反発して男子に絡んだりしていた。
ある日、数人の男子に囲まれていたところを偶然通りかかった頭ひとつ大きな子に助けられたのだった。
「せっかく綺麗な顔をしているのに、傷になったらもったいないよ」
「悔しいけど、その時の言葉が妙に頭にあって、髪伸ばしたら綺麗かなって…」
「乙女か」
「それで、その子とはどうなったの?」
「どこの誰かも知らないし、顔も覚えてない」
「ふーん。なら良いや」
「?」
「と言うか、それ…」
エリナには心当たりがあったが、当人は覚えていない様なので言うのはやめた。
若葉には良くあることだった。
「と言うか、綺麗な顔をしているとか言われて、髪伸ばしたりしてるの、今考えるとめっちゃ恥ずかしいな」
ゆたかが頭を抱える。
「今頃か」
なんでもかんでも若葉のせい




