若葉ちゃんとメガネ
もともと百合とかなんとかじゃなくて、近眼ネタだったんだよなぁ、つて書きました
「あんた、メガネなんかかけてたっけ」
「昨日買った」
若葉がチタンフレームのメガネをくいっと上げる。
若葉がメガネをかけ始めたのは中学の最初の健康診断の後だった。
当時のゆたかの二人称は「あんた」だ。
「小学校の頃は、なんとなく視力は良い方が良いに違いないって思ってたから、視力検査表を覚えてたんだけど、ほら…」
この学校の視力検査は箱の上の方に覗き穴が二つある検査計だった。
「あー、確かにごまかせないな、アレじゃ」
「と言うか、授業とかどうしてたん?」
「…フィーリング?」
「ちゃんと授業受けろよ。ゆーて、あんたの身長じゃ一番前の席か」
「いや、小5くらいまでは普通だったんだよ、これでも」
「普通ってなんだろう」
「小3くらいまで大きい方だったんだけど、そこで成長が止まった」
「…」
「小3の時点で140cmあったからまだこんな感じだけど、そうじゃなかったら大変な事になってたよ」
「そう言う話なのか、それ…」
「それにしても、凄いなメガネ。情報量多すぎて気持ち悪くなる」
メガネをかけているのに逆に目を細めている。
「大丈夫か。つか、これまでどうやって生きてきた」
「物心つく前から見えないと、意外と気にならないと言うか」
「あんただけだよ、たぶんそれ」
「そうかな。ふふふ」
「言われてみれば、あんた、どこか見ているような、そうでもないような、変な目をしてる事、多かったな」
「そうかな、そうかも。なんか目が怖いとか言われたことある」
メガネを外してケースに仕舞ってしまう。
「普通、眉間にしわ寄せて険しい顔になるから顔が怖くなるんだけどな」
「そもそも頑張ってまで見ようとしないから、眉間にシワとか寄らんし」
しばらく後の休日。ゆたか宅。
「この家はいつも誰もいないな」
「いいっしょ、気を使わないで済んで」
「まあな」
ゆたかの家は広い一軒家だ。
ゴミ屋敷一歩手前の若葉の家とは正反対で、必要最低限なものしか目に付くところに置かれていない。
「じゃん。VR」
VR用のヘッドセットを取り出して若葉に渡す。
「ほほう、これが」
「やってみない?」
若葉がヘッドセットを被ってソファーに座る。
ゆたかはそのすぐそばの床に座ってソファーに肘をかける。
「どーよ、めっちゃ酔うっしょ」
「さんざんお菓子食わせた上でやらせて言うことはそれか」
「私はそんなでもなかったけどね」
「うーん、普通の人にはリアルなのかも知れないけど、私には新感覚だから、リアルとの違和感で気持ち悪いとかは、ないのかも。と言うか、物が立体に見えるってこう言うことなんだなぁ…」
「ふーん」
気のない返事の ゆたかは若葉の口元を見ていた。
目が隠れてるって、なんかエロいな…
「なんか言ったか?」
「いんや〜」
次のステージがはじまったのか、コントローラーを忙しく操作し始めたので、黙って眺める事にした。
若葉が目で物を見る様になってからのエピソードとか、入れた方が良かったのかそうでもないのか




