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それはある夏の日

以前よそで出した話をいじった奴なので、アレです

それはある夏の日。

中学の頃のお話。


「最近日差しがきっついね」

エリナが額の汗を拭ったハンカチでパタパタと扇いでいる。

「夏だからな」

うんざりした顔で ゆたかが答える。

「日光が苦手だから皮膚がヒリヒリするよ」

若葉は日差しを避けるためか長袖のセーラー服を着ている。生地は夏物っぽい。

「吸血鬼か」



「ちょっとコンビニに寄っていかない?」

エリナが誘った。

「コンビニかぁ。うーむ」

若葉はあまり乗り気でない。


後ろで ゆたかがバックパックから何か取り出す。

薄手のパーカーだ。


「これ着たら冷房効いてても大丈夫でしょ」

そっと肩にかけてあげている。


「彼氏か」



「そういえば若葉ちゃん、最近外でもメガネかけてるね」

「ああ、これはサングラス代わり。目も日差しを受けすぎるとダメージ受けるし、頭痛くなったりするからね。プラスチックレンズはUVカットコーティングされているんだ」

「へー。透明なサングラスってわけ?」

「メガネのコーティングはレンズの劣化予防だから、あまり良い行為とは言えないけど、常にメガネが必要な人だって居るわけだし、大丈夫だろ、つて」


「普通のサングラスはしないの?」

「似合わなそうだ」

「子供がサングラスしてる写真とか良くあるじゃん」

「子供…、いや私も子供っちゃ子供だけど…」

そう言う意味で言っていないのは明らかだ。


「と言うか、暗いサングラスを掛けると瞳孔が開き気味になって目に負担が掛かるらしい。アスファルトの地面は反射率が高いんだったかな」

「確かにアスファルトが眩しい時あるよね…」


窓の外には広い歩道、その向こうが広い幹線道路。

コンビニの目の前に広い道が合流していてT字路になっている。


車も歩行者もまばらで、目の前では小さな子供が遊んでいる。


「ちょっと中に居て…」

2人に声をかけて若葉が外に出ていく。

ゆたかは気づいていた。若葉は事故とかトラブルを感じ取っておいて飛び込んでしまう体質である事を。



歩行者がコンビニの前に入らない様に手で制しながら、手前にいる母親っぽい人をコンビニの前から押し出す。

「何?なんなの?」

当然の反応だと思うが構わず子供の方に向かう。

こちらに気づいた子供がこっちを向く。

その向こうに猛烈な勢いで突っ込んでくるハイブリットカーが見えた。

間に合いそうもない。

「合図したらジャンプして」

「ジャンプ?」

「はい、ぴょーんて」

「ぴょーん」


子供の両脇を持って、一緒にジャンプ、そのままの勢いで子供を上に放り投げる。

なんとか2m程度は打ち上げられただろうか。


その瞬間、子供の視界から若葉が消える。


歩道に乗り上げた拍子に横転したハイブリットカーが若葉を連れ去ったのだ。

ちょうどルーフの中央で当たったので、そこまでのダメージでは無かったものの勢いが凄すぎて車ごとコンビニに突入コースだ。


視界の隅で母親と思われる女性が落ちてきた子供をキャッチしたのが見えた。



車に突っ込まれたコンビニはドアはひしゃげ、窓際に並んでいた本は棚ごとひっくり返って惨憺たる有様になっていた。

若葉はと言うと、レジの前に ゆたかと重なる様にして倒れている。

車ごと突っ込んでくる若葉のために自動ドアの前に立って待ち構えていてくれたのだ。


「自分のせいで他人が傷つく気分はどうよ」

「…ごめん。気を付ける」



後日。

包帯塗れの若葉と特に怪我をしている様子の無い ゆたかが歩いている。

ゆたかが食べていたアイスキャンディーがあと少しのところでポロっと落ちて、思わず反対の手でキャッチしてしまう。

「それ、ちょうだい」

「え、別に良いけど…」

暑さでおかしくなっている。

アイスを食べるついでで手のひらまでペロペロ舐めている若葉を見ながらそんな事を考えていた。

あまり夏っぽく無い

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