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  作者: Az
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私の友達が書いた、彼女の夢の話です。

私とは違う世界観を、どうぞお楽しみください。


茜色だった空が暗くなり始めた頃。時刻は18時くらいだろうか。私は車から降り空を見ながらどこか薄暗い資料館のようなところに入ろうとしていた。


私は自分の正体を知らない。目が3つあるのだ。私の他に5人ほど、同じ容姿の子供がいる。年齢は、6、7歳あたりと考えるのが妥当だろうか。体型は幼い。そして私はおそらく、その子供たちの兄弟のうちの1人だろう。


血は繋がっていると思うのだが、何故か私はこの子供たちのことを知らない。そして自分のこの奇怪な容姿も見たことはない。そう、私は今なにも知らない世界にいるのだ。とても夢心地だ。「こっちだよ」と、兄弟は私のことを呼ぶ。私はなにも考えずに、まるで当たり前かのようにその資料館らしき建物に入っていった。



建物の中は一般的な博物館のような雰囲気があるが、間違いなく何かの資料館であることは明白だった。何にも違和感はなかった。

資料館は4部屋しかなく、四角い構造で、ぐるっと一周するタイプだった。私は右側の部屋に入った。そこには目が15個ある鯨の伝説について語られていて、大きな鯨の彫刻だけがおいてあり、幼い私には恐怖を覚えるほどに迫力があった。


一方、兄弟たちは館内で自由に散らばっていて、私の他に鯨の彫刻の部屋にいたのは1人だけだった。閉館間際なのだろうか、他に見る人はいなく、案内人であろうおじさんが、次の部屋との境目あたりで静かに立っていた。

聞くと、ここの館長だという。私は館長に突然話を振られた。「その鯨は君のお母さんなんだろう。」「…え、ん?」私は突然話しかけられたことの戸惑いを隠せなかった。しかし、すぐに私の母親についての興味を持ち始めた。


興味がわいた私は近くにあった資料の部屋の本や、彫刻の部屋の伝説の鯨の説明を読んだりした。子供のことが書いてはないか必死に探したが、気づいたら23時を回っており、とっくに閉館し扉は閉められていた。それまで気づかなかったが、兄弟たちはいつのまにか同じ部屋に集まっていた。



館長が私たちを率いて階段で地下に降りる。そこは1階と変わらないくらいの明るさで、広く、倉庫のようなものがたくさん並んでいた。

移動しながら、館長は説明をし出した。「いよいよ解剖は明日となりました。すでにおわかりでしょうが、今日はその下準備をすることになります。」

「…?」私は理解が追いついていなかった。

というか、初耳なのだ。

なのでとりあえず頭の中で整理しようと思った。


さっき見た資料の鯨はこの資料館に実際にいること、そしてそれは私たちの母親であること、これからそれを解剖をすること、このような未知な存在は人間から恐れられているので実の子供である私たちが解剖を担うことになっていること。




私は意識が人間のままなのだろう、未知の生物と顔をあわせることにはだいぶ恐怖を感じた。そして面倒ごとに巻き込まれているような気もした。



だが夜も遅い上、帰る場所もわからない私はなす術もなく、流れのままに案内についていった。地下一階の第二解剖室という部屋に辿り着いた。正方形の広めの部屋だ。赤黒いランプと暖炉らしきものが置いてあるだけの殺風景な部屋だ。

ここで、館長がまた話をし出したが殆ど聞いていなかったようだ。記憶がない。


理由がわからないが、指示があったのでとりあえずは言うことに従い、薪を集めに行くことになった。

地下から直接外に出れるようになっていて、外から拾ってきては部屋に集める。


そういう作業を黙々と続けた。部屋に戻る途中の通路には時計があり、ふと目をやると、何にそんなにも時間を取られたのだろうか、日付が変わり、1時を回っていた。


あたりは人通りもなく街灯もついていないため真っ暗だった。ある程度薪は集まり、部屋に戻ると、もうほとんど準備ができたらしく、今から鯨を出しますと館長は言った。第三解剖室に移るよう指示が出た。


いよいよか、と思う内面、恐怖心をいだいていた私はみんなについていく形で、すぐ隣の第三解剖室に入る。

入った瞬間はひんやりと冷たく、体感温度と並行するかのように部屋の中は青白いランプで照らされていた。たくさんの金属用品や、ワゴンやトレイなど、いろいろなものが置いてある部屋だった。

最初はすっきりとしているように見えたが、意外とそうでもなく、ばらばらになっていたり、折れているものがあったりした。


部屋をぐるりと見ると違和感のあるワゴンに金属の蓋で被せられている箱があった。兄弟たちも自然とそこに集まり、後から来た館長もこちらにきた。館長は蓋をあけ、中を覗き込んだ。習うように中を覗き込んだ。私は、資料で見たものがこの中にあるのだという恐怖が一瞬よぎり見るのを躊躇ったが、好奇心が勝った。

私は直後ほっとするように落ち着いた。その理由は明確だ。思っていたより、箱の大きさに比べたらはるかに小さかったのだ。

なまずほどの大きさで、15個の目、四角い体、体は部屋と同化するような青白い色で目は濁り、表面は粘膜でぬらぬらと反射して光っているさまは異様だったが、私のイメージに実に忠実だった。


私はますます自分の正体がわからなかった。



目が痛い。頭も痛い。眠くてくらくらする。あくびをした。涙がでてくる。


3つのうち2つの目からでてくる。目をこすり体制を整えようとした。だが目をこすった手を見てかたまった。黄色い涙だったのだ。館長は私を見て、「鯨の目と連動しているのか?なんの変化が…?」などとぶつぶつと言い始めた。私の目はどうやら今、黄色く光っているようだ。鯨を見ると、15個のうち1つの目が黄色になっていた。


私は目の奥に違和感を感じてこれ以上直視できなかった。みんなは興味なさげなのか部屋を回り遊び始めていた。それに気づいた館長は独り言をやめ、「もう終わりにしようか、もう車に戻りなさい。明日夜6時、地下一階のラウンジにくること。」と言った。無言で頷き、資料館を後にした。








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