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ナンカヨウカイ~化け猫まひるの便利屋生活~  作者: スギヨシ ハチ
「折る」
9/26

9 願い

 ショッピングモールの屋上。


 昼間はクソ暑いが、隣のビルの影になる一か所だけはまだ涼しい。

 相変わらず誰もいない。


 俺はいったん人の姿に化けた。

 猫のままじゃ、さすがに携帯電話は使えないからな。


『もしもし、まひる?』

「よう姫子。どうだそっちは。何かわかったか?」


『ええ。あの印は、願いを叶えるまじないよ』

「まじか! ソレ俺も欲しい」


『残念でした。これは本人の代わりに依代――つまり折り鶴がその願いを叶えるようにできてるわ』

「なーんだ。じゃあ世界征服とか願ったら、俺の代わりに折り鶴が世界の帝王になるってことかよ」


『そういうこと。しかも、より凶悪なカタチで叶えるように仕組まれていたわ。世界征服を願ったとしたら、征服するはずの世界を滅ぼされてしまう感じね』

「うへぇ、とんだ開運グッズだな」


『ただ、制限があるの。ひとつは、世界征服みたいな大規模なものは不可能ってこと』


 だろうな。所詮は折り紙なんだし。

「ほかには?」


『もうひとつの制限は、贈られた側の願いを叶えるものだということ。自分で折り鶴を作っても、自分の願いを叶えることはできないわ』


「なるほどね――だんだん見えてきたぜ」


 俺は聞き込みで得た情報を並べる。

 プールにラジオ体操、校庭でのサッカーボール。


「なあ姫子。これが折り鶴による暴走の結果に起きたことなら、願った者の「本当の願い」は何だと思う?」

『それは……「楽しく遊びたい」とか?』


「正解! さすがは補習出席組だな」

『夏期講習だって言ってんでしょ! このバカ猫!』


「何怒ってんだよ。さては本当に補習だったんだろ」

『違うっての! それにしても、もしアンタの推測が当たってたとしたら、願った者っていうのは……子供?』


「そ。間違いなく小学生――怪異が起こっている範囲からして、恐らく花咲小学校に通ってる」


 遠くでクラクションの音がする。

 少しずつ、少しずつ、空は夕暮れに向かって傾いている。


『で、どうするの?』

「ここまでくりゃ、あと少しさ。渡のほうはどうだ?」


『今のところ問題なし、ですって』

「了解。また連絡する」




「さすがは赤虎の旦那! もう事件は解決したようなモンでございますね」

 クロノスケが目をキラキラさせて、俺の顔をのぞき込んでいる。


「ばーか。これからが本番だっつーの」

「では、旦那はこれからどちらへ?」


「ハルさんに会ってくる」


 俺がそう言うと、クロノスケはヒェッと言って飛び退った。

 クロノスケはハルさんが苦手なのだ。


「心配するなよ、お前を連れていったりしないから」


 俺は笑いながら、自分の影に身を沈めた。そうして猫の姿へと身を変える。


「クロノスケ、今日はありがとうな。助かったぜ」

「何をおっしゃいます! あっしに何かできることがあれば、またお声をかけてくだせえ」


 俺は尻尾を軽く振って応えると、柵の外へと飛び降りた。

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