Question8
Question8
「…キャロル君があの一族の一人息子」
メビウスはガロアの握っていた写真を一瞬にして奪い取った。
写真に写る少年を見て彼は「予想通り」と言う代わりにフンッと鼻で笑った。
「じゃあそろそろ話をつけようか」
彼はパーカーのポケットから折り畳み式のナイフを取り出した。それを目にしたガロアはキャロルが刺される前にメビウスに襲いかかろうとした。
しかし、相手はその動きを読んでたのかガロアが触れる前にスプレーのようなものを吹き付けた。それを浴びたガロアはその場に倒れた。スプレーの正体はしびれ薬だった。
「ったくもう、邪魔がいるとこっちも仕事になんないんだってば…よし!じゃあついでに君と一緒に逃げた従順な召使い君も殺しておいてあげよう」
「っ!」
キャロルは顔をこわばらせた。唯一の友人と共に迎える死により、目に涙をためて、肩も震えている。
「…マー君は…殺さ…ないで」
「でも、友達と一緒にあの世に行くのも悪くないぜ?
君達『Secret』は悪い秘密を暴くのが正義。
ウチのボスのフェルマーは悪人を裁くのが正義。
そして俺は何もかもぶち壊しにしてやるのが正義なんだよ」
2人の僅かな距離の間にピンの抜かれた手榴弾が落とされた。
轟く爆音。それを至近距離で受けたキャロルやガロアはもちろん爆発させたメビウスも無事ではすまないだろう。
「ほぅ」
煙が晴れて、無傷だったメビウスは感嘆の声をあげた。
トランプが宙に舞い、懐中時計をもったウサギのぬいぐるみが慌ただしく動き回っている。常識的にはあり得ないナンセンスな世界。
ー代償:Wonder Land
「君みたいな可愛らしい子は戦闘力0だと思ってたけど、少しはあるみたいだね」
姿を現したキャロルもダメージを受けておらず、その手には刃渡りが身長より少し短い剣を持っていた。その回りには武器をもったファンシーなぬいぐるみ達が武器を持って彼を守るように取り囲んでいる。
彼が能力で発動させたものだろう。
「物騒な武器を持つ能力だなんて依頼されたときには聞いてなかったけど?」
「ボクの能力は空間を生むだけでは未完成でした。本来は空間内なら武器を産み出すことは可能になる能力です。
そしてー」
一度読んだ本に出てくる武器なら何でも創造できます。
その言葉を合図に待機していたぬいぐるみ達が一斉攻撃を始めた。
しかし、メビウスはその攻撃を威力の小さい爆弾で次々と破壊していく。それでもキャロルは攻撃を続け、ある一撃がメビウスの腕を掠めた。
「…チッ。やる気かよ」
メビウスは一瞬にしてキャロルとの距離を縮めた。降り下ろされたナイフをキャロルは、咄嗟に剣で受け止める。
「このうるさいぬいぐるみ達を止めるには司令塔を止めるしかないんだよな。もうこれ以上お前の浅はかな知識から出る武器はないのかよ」
互いに隙を見せたら殺されるというのにメビウスは余裕のある顔で煽ってくる。
「じゃ、ジャバ…」
武器らしき名前を新しく唱える途中でメビウスの動きが止まった。
彼の腰には先ほどキャロルが創造した鋏が刺さっていた。
「お前……スプレーで麻痺させたはずじゃ……」
そこまで言うと、彼はバッタリと倒れる。
その後、驚く光景があった。倒れたメビウスが光の粒子となって消えたのだ。
「まさか、ダミー?」
ガロアはバランスをとりながら、なんとか立ち上がる。若干の痺れが残っているようだった。
「実は俺の能力は虚像を作る能力の持ち主だったんだよね。今回は生かしておいてやるよ。また近いうちに会おうね」
姿のない彼の声が閉鎖空間に響く。
キャロルが警戒しながらも能力を解除した。メビウスの姿は見つからなかった。
「おにーさん……大丈夫でしたか?」
「まだ少し痺れるけど、大したことないよ。
それより、キャロル君能力無しでも喋れてるね」
「なっ!」
指摘されて初めて気がついたようだった。急激に体温が上昇し、顔だけでなく、耳や首筋まで赤くなっている。
「ななななにゃんで、言っちゃうんでしゅ、ですか!もう話し方忘れちゃいまひた…」
噛みまくりのマシンガントークを発射すると、喚きながらその場にしゃがみこんだ。もしかしたら襲撃以上のダメージを受けているのかもしれない。
彼は深呼吸をすると立ち上がり、放置されたままの金庫を持ち上げようとした。
「ふんっ!ふぬー!」
発見時には持って帰れルほどの重さと言っておきながら、本人は持ち上げれることが出来ないようだった。
「…僕が持とうか?」
キャロルは黙って頷いた。
ガロアが持ち上げると、金庫からガンッ、ゴンッ、と物がぶつかる音が聞こえる。
一体この金庫には何が入っているのだろうか?
continue…
キャラ紹介コーナーです
今回はメビウスさんを紹介しようと思います。
【キャラプロフィール】
名前:アルディ•メビウス
年齢:20歳
誕生日:11/17
身長:176cm
血液型:B
代償:『Daydream Screen』
【数学者エピソード】
モデルになった人物は『アウグスト・フェルディナント・メビウス』。私は思わずウルトラマンを連想してしまいますが、違います。『メビウスの輪』の人です。おもしろエピソードは見つからなかったのですが、偉大な業績を掲げる方です。
世界で初めて四色問題を提出したといわれることがあるが、誤りであり、メビウスが1840年に提出したのは「5つの国が互いに隣り合うことができるか?」という趣旨のパズルで、これは四色問題よりもはるかに易しいものだそうです。
また、天文学者でもあり、彼の名前がついた小惑星も存在しているんだとか。