Question6
Question6
「『ジャスティ・ジェノサイド』からの使いだよ」
その名を聞いて2人は顔色を変えた。フェルマーがこちらへ手配したのだろう。
「また、僕たちを消しにきたのか?」
「なんでお前らを殺すとかめんどくさいことしなきゃいけないわけ?さっきも言った通りお前らにここが焼け野原になった理由を教えてやろうかと思って」
見たところ、相手は武器のようなものは所持していない。ガロアとキャロルはある程度の距離を保って話を聞くことにした。
「おっと、自己紹介がまだだった…俺はメビウスだ。好きに呼んでもらって構わない。
それではお話の始まり始まりー」
メビウスは一人で拍手をする。
「さぁて、事は一年前。ここにはお金持ちの由緒ある名家があった。でもお金持ちなのはその家の家族だけで親戚はなぜか皆貧乏…かなしいねぇ。それが昔から続いてきた事実。親戚は皆その家族を恨んでた。
しかし、その家族の一人息子は大変な出来損ない。運動も勉強も出来ない、人と会話するのも苦手な子。そして、召使いの一人が彼が『サクリファイス』だと気がついてしまった。
彼らの一族ではサクリファイスは悪魔の子。『そんな子がいる家族は疫病神だ!』『だから俺たちはいつまでたっても貧しいんだ!』彼らの怒りは頂点に達した。
…それなら皆燃やしてしまえばいい。一人の考えである日の晩、屋敷ごとその一族は滅んでしまったのさ」
メビウスの話の中に、不審な点がいくつかあった。
「話はわかった。けど、なんでそんなに詳しいんだ?」
「そりゃそうさ。だって屋敷に放火したの俺だから」
衝撃の告白に、2人はなんとコメントすればいいのかわからなかった。
その心境を悟ったのか、メビウスは一人で回答した。
「ここの召使い達に依頼されたんだよ。「屋敷を燃やしてくれ」って。まぁ、依頼主達も火事に巻き込まれてポックリだったけどな」
「それがお前たちの仕事か…」
「あぁ、俺らの組織のコンセプトは『正義のヒーロー』だからな」
以前フェルマーに会ったときも同じようなことを言っていた。
「人を殺しておいて何が正義のヒーローだ!」
「お前の発言には一つ間違いがある」
メビウスは顔をしかめて人差し指を指した。
彼の言っている意味がガロアには理解できなかった。
「『正義』とはひとつだけじゃないんだ。個人でその定義は異なるはずだ。」
彼の名言じみた発言に対して、興味を持ったらしく、ずっとガロアの背中に隠れていたキャロルが出てきた。
「考えてみろ青少年。ある悪党が破壊活動をして工場を破壊するとする。そこにあるヒーローが現れてその悪党を倒す。いたって普通のストーリーだ。しかし、その悪党は環境破壊に困る動物たちを救うために工場を壊していた。そんな彼は動物達にとっては素晴らしいヒーローだよ?このように悪行だと思われることも誰かにとっては正義のヒーローなんだよ」
『正義』とは一体何なのだろう?どれが正しいのか誤りなのか…それを考えると頭がショートしてしまいそうだ。
「俺はここの屋敷に放火したことで依頼人たちからしたらヒーローってわけさ。一族滅ぼすくらいだもんね~」
「でも、その名家の息子と召使い1名の死体は見つかっていない。まだ生きてるんじゃないのか?」
「だから俺がここにいるんじゃん」
メビウスは早足でキャロルの前に近づく。キャロルは何が起きているかわからず、逃げることができなかった。
僅か1.5歩分の距離まで詰め寄ると、メビウスはゾッとする笑みを浮かべて一言。
「探してたんだよ。『キャロル家』の一人息子さん」
キャロルの顔は恐怖に塗り替えられた。
今回のキャラプロフィールはおやすみします。
たぶん今後の話数的に終わりそうなので…