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Mathematician Observation  作者: 空色 歌音
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Question4

Question4


 『Secret』の活動拠点の館の医務室にて、メルセンヌが救急箱の中身を整理整頓していた。


「まったくもう…あれだけ怪我をしないよう忠告しましたのに…」

「あはは。怪我を追わなければならないくらい大変な仕事だったんだから」


 乾ききった頬の傷口を消毒してもらいながら、パスカルが申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた。


「あの、僕は一体何をしたら」

「先刻のベーシェンスの件について詳しく話し合いたいからそこで待っててくれ」

「はい」


 傷口に絆創膏を貼ってもらうと、メルセンヌは「私だって暇じゃないんですの!」と膨れ面で医務室を出ていった。


「ん、んふふっ」

「え、何笑ってるの?」

「いや、なんでも…ふふっ」


 ?マークを浮かべるパスカルにガロアは近くにあった手鏡を渡した。それを受け取り、自信の顔を写し出すと、彼はなんとも言えない微妙な顔をした。


「メルセンヌさんもかわいい事するね…」


 彼に貼られた絆創膏はピンク色のハートとウサギ柄だった。少し大きめの絆創膏には油性ペンで『バカッ(*`Д´)ノ!』と描かれていた。かなりご立腹らしい。


「似合ってますよ」

「僕24歳なんだけど!」


 パスカルは悔しそうに拳を握った。見た目的にはもう2,3歳若く見える。24でも全然若いのだが…。


「本題に戻りましょうか。フェルマーについて貴方が知っていることをできるだけ教えてください。」

「もちろんそのつもりさ。

 彼は…ベーシェンスは昔から勘の鋭い子で、幼いながらも大人を論破するところを何度も見た。勿論僕はここから少し離れた大学に通ってたから、休暇にしか会うことが出来なかったけどね。近況報告として、文通をしていたんだよ。

 僕が大学を卒業すると同時に彼はデカダントの歴史を塗り替える最年少裁判官になった。今はまだ齢17だ。」


 齢17。ガロアと同い年である。年相応以上の大人びた印象からは青春を謳歌する10代の幼さは全く見られなかった。


「憶測ですけど、彼には能力とかはありましたか?」

「今日のガロア君、なんだか記者や探偵みたいな感じだね」


 その言葉を聞いて、ガロアはビクリと肩を動かした。


「そんな事…言われても嬉しくないですよ」


 彼は嫌なことでも思い出したのか、辛そうな表情で目を逸らす。


「…ベーシェンスがサクリファイスなのかははっきりとは知らないが、多分そうじゃないのかな。でも、能力が開花したのは裁判官になった少し後だと思うよ。」

「心当たりが?」

「大したことじゃないんだけどね。

 裁判官になったある日、頼まれたんだよ「被告人の拷問をやってくれないか」って。

 僕の能力は物理的だけでなく、精神的にも圧力をかける事が出来る。それを利用してきたわけさ。

 手加減しながらも彼の手伝いをしてきたが、1ヶ月経つ頃には「これからは僕だけで出来るからいいよ」とやめさせられたよ」

「それが能力開花の境目と言うことですか」

「その手がかりはある」


 パスカルは一度部屋を出た。数分後には大学ノートを何冊か持ってきて机の上に広げた。


「これは…スクラップノート?」


 手にとって読んでみると、2年前から始まっていた。

 『デカダント中が騒然!最年少裁判官誕生』

 最初はフェルマーの活躍記事が続いていた。しかし、問題の1ヶ月を過ぎると、

 『死刑人、執行前に自殺か?』

 『○○事件犯人、獄中死』

 死刑や終身刑を与えられた罪人が自殺や事故死のような形で処刑前に亡くなっている。


「詳しい能力の内容は、レオをベーシェンスと接触させないとわからない。僕は彼の能力は極めて危険性の高い『殺戮の異能』と推測している。」


 それらの記事にはフェルマーの事件に関するインタビュー記事もいくつか見つかった。自殺や獄中死に関与している可能性は高い。


 一番新しい記事はある収容所についての記事だった。殴り合いが勃発したようで十数名が重軽傷を負い、3名死亡が確認されている。そしてその騒動に便乗して1名脱獄している。脱走者はいまだ不明らしい。


「こんな事件が起きてたんですね…結構残酷」

「この記事を書いた人物と対面できれば、少しは進展するだろうけどね。僕らは仕事上、依頼の詳細を第三者に公開してはいけないんだ。それも相手がメディア関連となると市民をも危険に晒すことになる」


 収容所での事件を取り上げていたライターは『ネーター&ケプラー』


(ケプラー?この名前どっかで聞いたような)


 ガロアは後者の人物に既視感を感じていたが、それを思い出すことは出来なかった。


 ガチャ


「?」


 医務室の扉を開けて、その隙間からキャロルがひょっこりと顔を出した。ガロア達と目を合わせて少しは驚いたようだが、特に逃げる様子はなかった。人見知りが少しずつなくなっているのだろう。


「キャロル、どうしたんだい?」

『教会裏の森にいくので虫除けスプレーを探しに来たんです』


 キャロルは速やかに手帳型のホワイトボードに自分の言いたいことを書き記した。猛スピードで書いたのにその字体は整っていた。


「何で森?」

『森で本を読むと心がリフレッシュ出来るのです』

「なるほど…」


 薬品棚を開いて、あちこちと棚のものを漁るキャロルを見ながら、ふとガロアはあることを聞いてみた。


「キャロル君ってここにはいる前、どんな生活していたの?」


 キャロルの手がピタリと止まる。振り返ってホワイトボードに次の文章を急いで書く。


「『僕の過去は秘密です!おにーさんにも聞かれたくない話あるでしょう?』」

「僕の聞かれたくない話」


 脳裏に浮かんだのは断片的な場面だった。

 サイレンの鳴り響く暗い場所と、床に散らばる人々と血液。最近見た夢の話だろうか?それにしては結構なリアリティがあった。


「聞かれたくない話は誰にでもあるよね。ごめんね」


 『それでいいのです』と書き綴るとキャロルはニコリと微笑んで、医務室を去っていった。


 事件に仲間の過去に断片的な映像…この組織での謎は深まるばかりだった

キャラ紹介コーナー(てってれー)

キャロル君とパスカルさんどちらを公開しようか悩んだんですけど、次回はキャロル君メイン(ネタバレ)なので、今後出番の減るであろうパスカルさんのエピソードを語ろうと思います。


【キャラプロフィール】

名前:ブレーク•パスカル

年齢:24歳

誕生日:6/19

身長:175cm

血液型:AB


【数学者エピソード】

 パスカルさんは知っている方も多いと思いますが、『ブーレース•パスカル』さんのこと。中学高校時代の理科(物理)で圧力の問題を習った記憶がありますでしょうか?圧力の単位『Pa』に由来される方です。

 彼のエピソードはあまり見つけられてないのですが、おもしろいなと思ったのを一つ。

 ある晩、彼は歯が痛くて眠れなかった

 ごろごろ転がっているうちに

 車輪の一カ所に印をつけて転がしたときにできる軌跡「サイクロイド」の問題を解いてみた(問題の内容は意味わかりません)

 いつの間にか歯痛は収まっていたらしい…

 歯の痛みを忘れるほどの集中力が凄いですよね。

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