Question23
あけましておめでとうございます
最近は更新が遅くて申し訳ないです
Question23
「君だけでくるなんて珍しいね」
お気に入りのティーカップに紅の液体を注ぐ所長。ポットから流れる液体を静かに見ていたネーターはため息をついた。
「アイリッシュが例の脱獄犯と対面したらしいんだけど、どうも上手くいかなかったみたいで…」
「あははっ!あの子らしい結果だねぇ。彼のそういうところ大好き」
「笑い事じゃないわよ」
ネーターはカップのお茶を飲み干す。
「…ジュリアはなんでその脱獄犯に執着するの?」
「言わなくてもわかってるじゃない」
彼女は所長を睨む。
「ごめん。わかんない」
「いいわよ。どうせ言わなきゃいけないのはわかってるから…。今回の事件…被害者には囚人もいたわよね?」
「さぁ?わかんないや」
「いたのよ、5人…」
「ああ!そういえばいたね!え?でも喧嘩大好きな不良達って4人じゃなかったっけ?」
彼は指折り数え、伸びたままの小指を見て首をかしげる。
「いいえ、5人よ…あんな馬鹿達の騒ぎに巻き込まれた無罪の悲しい囚人がね」
「アルフィー•スウィフトさんだっけな」
「アルフィーは無罪よ。脱獄犯と一緒にわざわざ一緒に入ったんですからね」
「冷血な君にも人を庇う心があるなんて…。今夜は雪でも降りそうだね」
所長はいたずらを思いついた子どものように顔がにやけている。
「冗談はよしてちょうだい」
「ほらほら怒らないで…うちも君がいなくなってから人手不足なんだから」
「人手不足って元から限られた職員しかいないでしょう」
「まともというか正気を保てるような人間がいないんだよ」
そういって彼は頭を搔く。毎朝整えているであろう髪型がぐしゃぐしゃに乱れていく。
この収容所の職員は各役職1~2人の最低限の人物しか雇っていない。そしてほとんどの人間が…狂っている。
「この間なんてね、僕らの料理を用意してくれる子が休んだとき、囚人用担当の料理人に用意して貰ったら、なんとまあスープに虫が入ってたんだよ!?白くてウニュウニュプニプニしてるの!!しかも何匹も水面に浮遊してるんだよ!!気持ち悪い!」
身振り手振りでオーバーなリアクションを取る所長を横目にジュリアは紅茶をすする。紅茶に虫が入っているなんてことはないだろう。
「ジュリア、そろそろ戻ってきてよ…いつ僕が殺されてしまうか不安で仕方ないだろう?」
「別に。今のお仕事案外気に入ってるの」
「自分のプロフィールを全て偽造して大好きな後輩にも偽りのジュリア•ネーターしか見せていなくても?」
「自らを偽るのはあなたもお上手ではなくて?…カイン所長」
ジュリアは手持ちのクリアファイルから一枚のプリントを出す。
「貴方、元からそんな顔だったかしら?」
彼女が持っているプリントには『アルフィー•スウィフト』という氏名。そして彼女の目の前に映る所長と瓜二つの顔写真が貼られていた。