Question20
Question20
ガロアと少年は拠点の教会の近くまで来ていた。
「あの、貴方は『Secret』の関係者とかですか?」
「まあな。ついたらわかるさ」
この少年は誰かに似ているとガロアは一人考えていた。赤い目に茶色のかかった黒髪。そして自由気ままな王様的態度と日との心を見透しているような物言い。はて、どこで会ったか。
「ほら、到着したぞ」
もう着いてしまっていた。教会ではなく、その裏に建つ本拠点である古屋敷の方である。
「にしても…静かだな。先に別件を済ませるか」
少年は屋敷と教会の間にある小さな森の方へと入っていった。ガロアも黙ってそれについていく。
「あの、わざわざ教会まで戻ってどうするんですか?」
「ちょっと会いたい人がいるんだ」
徒歩5分ほどで教会の方へ出た。場所は墓場だ。
「このお墓、誰のだと思う?」
並んだ墓石の一つをさして、少年は問いかける。
「誰かの身内とか」
「惜しいね。ここの教会の神父だよ」
「老衰か病気ですか?」
「殺されたんだよ…ここの現シスターにね」
ガロアは何も言わない。涼風が吹き抜け、森の木々を揺らす音だけが聞こえる。黄昏時で辺りは暗く、二人の表情は互いに見えることはない。
「さ、戻ろうか」
少年がガロアの手を引き、教会へと入っていく。
「えっ、地下から行くんですか?」
「さっきからおかしいんだ」
人差し指を口元に当てて、音量を下げるようにと合図を送る。地下通路は声が響きやすくなっている。
「自分は耳がいいんだ。『Secret』にメンバー以外の他人がいる。以来主ではなさそうだな」
「耳が良いだけでそんなにわかるものなんですか!?」
「わかるさ、相手は多くて10人ほど…イケるな」
屋敷へと繋がる扉をそっと開けた。人気がない。薄暗い廊下に流れる静寂。二人は息を殺して、少しでも多くの人が集っているであろうと考え、応接間へと向かう。
「誰だお前ら!」
しかし、すぐに見知らぬ集団と鉢合わせしてしまった。
「まさか、この家のやつらかよ。空き家とか法螺吹いた奴は覚えてろよ…ガキ2人くらい殺した方が早い」
集団の一人が鉄パイプを掲げ、襲ってきた。
「危ない!」
「ったく、どいつもこいつも自分を子供扱いしやがって…」
それは一瞬の出来事だった。
「え!?え!?」
彼らの足元にはすっかり気絶してしまった人々が倒れていた。少年は特に何もしていない。…彼らに触れる以外は。
「さ、後片付けは他に任せるとして、さっさと皆に会いに行くぞい」
「ぞ、ぞい…」
二人はそのまま応接間へと来た。扉は先程の輩に警戒していたためか、鍵がかかっている。
「ふむ…開かないようだな。青年よ、お主の能力で開けてみたまえ」
「え、いやでも能力の発動のやり方知らない…」
「いいからせい!」
「た…Time Limit」
右手に全身の力を集中させて、扉を殴る。
バッキィ
簡単に扉は破壊されてしまった。壊した当本人であるガロアが一番衝撃を受けていた。
「ど、どうしましょうか…」
「最高にロックだったな」
「そういう問題なの!?」
「おやー何で扉が勝手に壊れたのかなー?」
「ヒィッ!」
振り返ると、パスカルが物凄く恐ろしい形相で立っていた。ガロアは笑ってごまかすのが精一杯だ。
「やぁパスカル。元気そうで何よりだ」
少年の方は表情一つ変えず、ひらりと手を振る。彼の姿を見たパスカルは穏和な表情に変わった。
「リアさん!ご無沙汰してます。そちらから来るなんて珍しいですね」
「レオが勘当中だから遊びにこれないだろうと思って、こっちから来た」
「仲が良いんだか悪いんだか…お茶用意しますよ」
そんな2人の和やかなやり取りを見て、ガロアは胸を撫で下ろした。
「あとはガロア君」
「はい♪」
「扉の修繕費代はみっちり働いてもらうからね」
「ヒィィッ」
まだ許してもらえてなかった。お怒りモードは和やかモードに上書きされることは一生ないのだろう。
「いい加減お伺いしたいのですが、リア…さんは何者なんですか?」
「え?二人ともてっきりお互いの事を知っていなかったのかい?」
「互いの情報量は自分から青年への方が圧倒的に多い。勝手な片想いみたいなものだな」
誤解を招く言い方だ。
「この場所に着いたからには、そろそろ自分の名前を申し上げよう。
…リアノス・オイラー。レオーノス・オイラーの兄であり、彼の為の被験者だ」
ガロアを見つめる少年の瞳は赤く光っていた…。