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Mathematician Observation  作者: 空色 歌音
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Question2

Question2


「それでは!新入社員歓迎会えーんどサクリファイス達による能力お披露目会を行いまーす!!イエエエエエイフゥーーーー」

「…帰ってよろしいですか?」


 ガロアの『Secret』所属が決まった次の日、朝から屋敷の大広間にて彼の歓迎パーティー的なものが開催されていた。


「テンション低いね!?まだ午後3時だよ?9時に開始してからまだ6時間しか経ってない!」

「もう、十分だろ…?そろそろメルセンヌさんがお怒りモードに入りそうな感じだよ…」


 大広間にいるのはガロア、オイラー、パスカルの3人だけだった。最初はメルセンヌや事務員も何名かいたが、2時間経過した辺りから皆各々の仕事を片付けに行ってしまった。


「み、皆さんの能力って…」

「んーそれじゃあ…まずはオレから言わせてもらおうかな」


 オイラーは一歩前に出て、咳払いをする。

「オレことレオーノス・オイラーの代償は『Q.E.D 』…相手の能力を見抜く能力だ」

「それってすごいじゃないですか!ここはサクリファイスがいるんですし僕にも能力ありますよね?」


 先輩の能力を聞いた途端ガロアは目を輝かせて尊敬の目をする。


「とはいっても、見抜けなかった場合は相手が一般人かサクリファイスだが能力が開花していないかのどちらかだ。多分、いや絶対ガロア君は一般人だね」


 ドラマに出てくる探偵のようにビシッと『犯人はお前だ!』のポーズをとったオイラーを見て、ガロアの瞳には尊敬の眼差しがスウッと消えた。


「あ、なんかもういいです」

「ガロア君!!お茶でも飲まない?」

「失礼します」


 パスカルが懸命にフォローしている最中に、凛とした声と共に高校生くらいの小柄な少女が部屋に入ってきた。


「あれ、チェルシーちゃん?」

「ガロアさん!此方にいらしたんですね。ティータイムに誘おうと思いまして、探してたんです」

「二人とも顔見知りだったんだね」


 少女、チェルシー・カルダーノはメルセンヌが教会で預かっている子供の1人である。ガロアとは昨日の夕食の場で面会をしたばかりだった。


「パスカルさんやオイラーさんもいたのですね。キャロル君たちは別室にいますが、此方でお茶にしますか?」

「ここの部屋が一番広いからね。せっかくだから呼んできてあげて」

「承知しました。すぐにお連れしますね。あ、パスカルさん。その間にお湯を沸かしていただけますか?ガスコンロの調子が悪くて…」


 部屋を出る前に、チェルシーは申し訳なさそうに水の入ったポットをパスカルに渡した。


「ここ、ガスロンロありませんけど…」

「丁度良いタイミングだったね。

僕の能力はこれだよ」


 パスカルが、ポットに手を当てると、ポットの中の水が、いきなり沸騰して音を立て始めた。


「これくらいかな」

「やーお見事お見事」


 オイラーが、怠そうに拍手を送る。ガロアは何が起きたのか理解できず頭に『?』を浮かべている。


「これが僕の能力。特定したものに圧力を与える能力だよ。

今の沸騰は科学の授業で習うものだけど、液体に熱か圧力を与える事によって気体へと状態変化させる段階だ」

「でも圧力を与えた場合は、液体の温度は下がるはずでしたよね?」

「よく知ってるね!ここが科学現象と能力の違いだよ。

科学現象の場合は液体中から沸騰に必要なエネルギーを消費するから温度は下がる。

しかし今の場合は、エネルギー源が僕の体内から使われているから、普通に熱した場合と同じように温度が上がるわけさ」


 能力はこんな日常的なことにも使えるのか。


「キャロル君たち連れてきました」


 チェルシーがキャロル達を連れて戻ってきた。持ってきたお盆にはマカロンを載せている。


 彼女の後から『超』がつくほどの人見知り、キャロルが背丈の変わらない別の少年の背中に隠れて入ってきた。


「皆いらっしゃい。

そういえば、チェルシーちゃん達って学校は?」


 3人の年齢は確か15,16歳くらいと聞いている。普通ならば、まだ学校に通っている時間帯だが、彼らはどうなのだろうか?


「今日は午前授業だったんだよ。

 な、フレディ」


 マークィス・ホールは人見知りな友人の盾にされようが、特に気にした様子はない。むしろ自分の会話に同意を求めていた。キャロルは無言で強く頷いた。


「…ちゃんと学校に通えてるんですね。」

「メルセンヌや他の職員に教えてもらうのも出来るけど、やっぱり別の環境にも慣らしておく方がいいと思うしね。

万が一、能力が発動してしまっても、キャロルやマークィスは『別空間を生む能力』だから相手に害を及ぼす危険性はかなり低い。」


 マカロンを食べつつも、オイラーはしっかりとガロアの質問に答えていく。


「キャロル君とホール君は危険性の低い同類の能力なんですね。

 あれ?じゃあチェルシーちゃんは…」

「その話はやめてください」


 チェルシーの落ち着いた声が響く。しかしその声は回りの会話が静まり返るほどの重々しいものが含まれていた。


「し、失礼しました…私、自分の能力のせいで嫌な思いをしたことがあって…」

「そうなんだ…変に立ち入ってごめんね」

「いえ!そんなことないです。せっかくですので、少し屋敷を探検しませんか?あと、ガロアさん頭いいんですよね?宿題教えていただけませんか?」

「なにそれ楽しそう!俺たちも行く!」

「マー君は宿題だけ参加して」

「酷い!」


 彼女のイキナリの提案にマークィスは大いに賛成する。黙って紅茶を飲んでいたキャロルも好奇心で目を輝かせている。


「えっ?!あ、あのまだお茶」


 返事をする間もなく、ガロアは3人に連行されていった。

 取り残されたパスカルは静かにティーカップをソーサーにのせた。

 そして、オイラーを見る。


「君、嘘ついてただろ?」

「さぁ?なんの事かな」


 意味深な笑みを浮かべる相方を見て、パスカルはため息をつく。


「君はガロア君には『君はサクリファイスではないだろう』と言っていた。

けれども、僕は見ていたよ。君が最初にガロア君と対面したとき、能力を使って彼について調べていた。予想は大当たり。君の左目が紫色に変色していた。ガロア君が『サクリファイス』であるというサインだ。」

「お前の言う通りだよパスカル。だけれども、オレには彼の詳しい能力が読み取れなかった。まだ覚醒して間もない上、本人にも自覚意識がないと言うことだ。」


 2人だけでは広すぎる部屋のなか、しばらくは時と沈黙しか流れなかった。


レオーノス・オイラー『代償:Q.E.D』

ブレーク・パスカル『代償:Crash Pressure』

マーリン・メルセンヌ『代償:Healing Prayer』

フレデリック・キャロル『代償:Wonder Land』

マークィス・ホール『代償:Show Time』

チェルシー・カルダーノ『代償:Existence 0』


エヴァンス・ガロア『代償:Time Limit』

今回から始まったキャラ紹介コーナーです!

トップバッターはガロア君で頑張っていきましょう。


【キャラプロフィール】

名前:エヴァンス•ガロア

年齢:17歳

誕生日:10/25

身長:172cm

血液型:B

代償:『Time Limit』


【数学者エピソード】

 ガロア君のモデルとなった人物は『エヴァリスト•ガロア』です。

 フランスの方で、群の概念を初めて考案し、またガロア理論で有名な方だそうです。

 19歳の時に政治運動で校長を非難したり、国王を弾劾したことで退学&投獄。

 仮出所中に恋人の取り合いで決闘。そしてあっけなく敗北、そして死亡。わずか20年の短い生涯でした。

 論文は少ないですが、彼がこの世を去った後、彼は立派な数学者として名を残しました。

 凄い散々な人生ですが、ガロア君には幸せになってほしいですね。

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