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Mathematician Observation  作者: 空色 歌音
18/24

Question18

Question18


「ってて…マジで死ぬかと思ったわ」

「一時心肺停止状態だったけどね」


 Secret本拠地では皆がホールを囲ってやんややんやとあたふためいていた。


「本当に大変でしたわね。私という医療系能力者がいなければ、みなさんでお墓参りでしたわね」

「まぁ、命の危険に晒させたのシスターちゃんが主な原因だけどね!?」

「あらあら、寝言は寝て言ってくださいな」

「こっちも大変だったんだから喧嘩はよしてくれよ」

「パスカルは黙ってて!」

「パスカル様は口を慎んでくださいまし!」


 大人たちのしょうもない口喧嘩にホールはソファーベッドに横たわり、ヘッドホンで耳を塞ぐ。キャロルは彼のそばから離れようとはせず、静かに見守っている。


「そういえば、ガロアにーさんはどうするんだよ…」

「んおぅ…そうだったそうだった。シスターちゃん、この戦いは生足見せてくれたら君の勝利としよう」

「どういうつもりでいってるんですの!?この足フェチ!」

「ど、う、す、る、ん、だ、よ!」

「まぁすぐに帰ってくるさ。フェルマー君は結構な飽き性だから」

「問題は、彼が帰ってきてどう対応するかだよね」

「パスカルの言う通り」


 オイラーは腕を組み深く頷いて、同意を示す。


「おや、久しぶりに帰ってきたら、みんなして悩みごとかね」

「そうなんだよね~ってピタゴラスさん!?」


 オイラーは顔を上げ、いかにも驚いたようなマヌケな表情をした。


「ふらっとどこかへ出掛けてから戻ってきて…今回は半年間何してましたの?」

「ちょっと東洋の方へ行ってきたのだよ。ほら、ちびっこ達にお土産。」


 ピタゴラスと呼ばれる男はデパートでよく見られる紙袋を掲げた。それをみたキャロルは「お土産…」と呟き、目を輝かせた。ホールは先程からふて寝をしている。


「というかピタゴラスさん。何故このタイミングで戻ってくるんすか?」

「君のお兄さんからの情報で、新しい子が入ったらしいから顔見せようと思って」

「兄貴かよー」


 顔を手で覆い、嘆くオイラー。

「まぁまぁ…そろそろ彼にも新人と会わせてあげたら?」

「兄貴の家いつも暗いし、照明はブルーライトばかりで目に悪いぞよ」

「まさかまた喧嘩してる?」

「んぐっ!」


 図星だ。


「この間仲直りしたかと思えばまたですの?今度は何が原因?」

「兄貴が悪いんだよ!俺の持ってきた写真集を真顔でシュレッダーかけたし!イラついて『牛乳飲んでも身長は伸びないんだからな!』って言ったら勘当された。」

「子供かよ!!!」


 24歳と26歳による喧嘩とは思えないクオリティの低さにさすがのホールも耐えきれなくなり、ツッコんだ。


「流石だね。あと、カルダノちゃんは…」

「お待たせしました。お茶を持ってきました」


 タイミングよく、チェルシーはお湯の入ったポットと人数分のティーカップを持ってきた。


「あ、先生。いらっしゃっい!?」


 チェルシーはソファの横でしゃがんでいたキャロルの服の裾で足を滑らせた。ポットとティーカップを宙へ舞い上がる。


「パスカル君、ちょっとこっちに」


 ピタゴラスが手招きをした。が、パスカル本人はメルセンヌとオイラーの喧嘩の仲裁で精一杯であり、気づくようすはない。


「やっぱりなんでもない」


 手遅れだった。四方八方から陶器の割れる音が鳴り、ポットから溢れ、容器を失った熱湯がパスカルに降り注いだ。


「…」

 しばしの沈黙が続いた。

「…ひ」


 沈黙を破ったのはパスカルだった。


「久しぶりに僕が圧力でおとなしくさせてやろうか?」


 いつもの優しい笑顔を浮かべるも、目はハイライトを失っていた。皆恐怖で顔をひきつらせる。


「向こうの組織以来だから体がなまってるんだよねーフフフッ」


 指をポキポキと鳴らす彼を見て、ホールは天井を仰ぎ、遺言を残した。


「俺は何も悪いことしてなくない!?」

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