Question12
Question12
『ジャスティ・ジェノサイド』本部にて
「とゆーわけで今回は撤退しましたー」
広々とした会長室に2人の人物がいる。無気力そうに報告をする長身の男性と彼に向かい合うように配置されたデスクに手を置いて椅子に腰かける青年。
「はぁーーーーーーーー」
男性・メビウスの報告を黙って聞いていた青年・フェルマーは大きな溜め息をついた。吹奏楽部や水泳選手顔負けの肺活量だ。
「で、アルディ…話はもう終わりかい?僕も暇じゃないんだけど」
「まーまー変な顔しないでくだせぇよ。こっちだって好きに撤退したわけではないんですー。」
無愛想な物言い。だらけた態度。やる気のない表情。この3コンボ発動がフェルマーの苛立ちを助長する。
「あ"ぁ"!そろそろ僕の手駒も替え時かぁ」
唸るように叫びながら書類を宙へと撒き散らすフェルマー。彼の放った一言でメビウスは一瞬にして顔を青くした。
「や、クビはやめてくださいよ?」
「冗談だよバカ。下っぱに比べたら、お前は実力あるし、十分必要な人物だよ。ま、他にも役立つ駒はあるけども」
「リチャードちゃん、ニコラ、ブルパギ、あとはソフィア姐さんくらいか」
メビウスは名前を挙げながら自分の左手の親指から順に折っていく。
「思ってたよりいるね…やっぱりパスカルさんを手放したのは善くなかったかな…新しく有力な人物を手にいれるかなぁ…」
フェルマーは机に散らばった書類を集めて、それらに目を通す。
「さっきから気になってたんすけど、何の書類読んでるんですか?」
メビウスの質問に答えるように彼は書類の1枚を見せる。それは履歴書だった。メビウスも左上に貼られている写真の人物をよく知っていた。つい最近、至近距離で見た人物だ。
「へぇ…こりゃキャロル家の坊っちゃんじゃないですか」
「あぁ、他の人物の書類もある」
書類は全部で8枚。どれも『Secret』のメンバーの履歴書だ。メビウスも何枚か手に取り、読み始める。
「Secretって良い人材揃ってるなー。やっぱり、能力重視ならオイラーとかパスカル辺りですか?うちの組織治癒系のサクリファイスがいないからシスターも捨てがたいですね」
「そうだな。コイツらは能力の使い方次第で都市全体を支配することだってできるだろうに…」
「この書類があるってことはSecretから誰か引き抜くつもりですよね?決まり次第、俺らがアジトに乗り込みますがだれにします?」
メビウスは一通り読み終わった書類をデスクの上に置く。
彼と目を合わせたフェルマーは僅かに口角を上げて彼なりに笑ってみせた。
「エヴァンス・ガロア…彼にしようかな」
「ガロア…って?あぁ、あのとき坊っちゃんと一緒にいた青髪の子か。アイツはただの一般人じゃないんですか?」
「例え彼が99.9%一般人だとしても僕は00.1%のサクリファイスである可能性に賭けてみようと思うよ」
ガロアの履歴書は基本的なプロフィール以外はほとんど空白であった。
フェルマーは彼の履歴書を他の人物のとは分けて別のクリアファイルに収納した。
「近いうちにこちらから交渉しに行ってもらうよ。方法はアルディたちに任せる。なんなら軽い戦争を勃発させても構わない。楽しそうだしね。けれど、エヴァンス・ガロアだけは怪我ひとつされないで連れてこい。僕からは以上だ」
「仰せのままに」
メビウスは丁寧にお辞儀をして会長室を出ていった。「なんちゅうハードモードなゲームだよ。めんどくせー」と小言を言っていたのは見逃しておこう。扉が完全に閉まりきるまでを見送ったフェルマーは一人冷めた紅茶を飲む。
「さてと、これから面白くなりそうだね」
物語は始まったばかりである。
今回はフェルマーさんを紹介します(適当)
【キャラプロフィール】
名前:ベーシェンス•ダ•フェルマー
年齢:17歳
誕生日:8/17
身長:172cm
血液型:A
代償:『Final Sentence』
【数学者エピソード】
『ピエール•ド•フェルマー』は『フェルマーの最終定理』で有名な方です。本職は数学者ではなく、法律家だったそうですこの定理の証明の段階で「証明を書くには余白が狭すぎる」とケチったせいで、他の数学者が後300年苦しめられることとなりました。(ちなみに子供でも解ける単純な内容だったそう)
また、パスカルさんとも文通をする仲だったそうですね。