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流星の僭王  作者: 月の銀兎
1~旅籠屋の狐狸~
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第5章~犬猿の友達~



今から数十年前。小さな集落に、2つの大きな家があった。犬猿の仲であった2つの家系。そんな最中、双方に初代の能力を持った女の子が生まれた。


狸憑家(タヌキツキケ)”。五本の尾を持つ狸を祖先とする家系。それを引き継いだのは、“狸憑五花”。彼女はその能力が原因で、通っていた寺子屋でイジメにあっていた。


狐憑家(キツネツキケ)”。五本の尾を持つ狐を祖先とする家系。それを引き継いだのは、“狐憑五星(キツネツキゴセイ)”。彼女もその能力が原因で、通っていた寺子屋でイジメにあっていた。


2人の家は隣同士で、同じ寺子屋に通っていた。…もし、双方が能力を持たずに生まれていれば。…もし、あの出来事が起きなければ。2人は友人のままでいられたであろう。



〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜



ある日、2人は同じ者に恋をした。お互いに誰が好きか、大体分かっていた。


彼女たちは同時に告白した。


すると、相手の男の子はこう答えた。



「僕はどちらかなんて選べない」



彼は懐から桜花があしらわれた黒櫛を取り出した。



「だから、この櫛を探し当てた方と付き合うよ」



要するに、彼の気持ちが分かる方にするということだった。


次の日、2人は放課後に村中を駆け回った。必死に櫛を探した。顔を見合わせる度に睨み合い、時には喧嘩をして、稀に能力を使っていた。


そうしていくうちに見つからない日々が過ぎていった。


夕暮れが綺麗なある日の午後。五星は寺子屋の掃除を終わられて、櫛を探そうと早歩きで廊下を歩いていた。


自分の教室を横切ると、その中から話し声や笑い声が聞こえた。彼女は恐る恐るドアに耳を当てる。他の男の子の声に混じって、あの告白した子の声も聞こえてきた。



「いやぁ、上手くいったな‼︎」


「…あぁ、そうだね。

まだ2人は探してるらしいけど…」


「はっはっは、ご苦労なこった。

だって…」



…嘘であって欲しかった。その言葉を発した。他の子の中の1人は楽しそうに、懐から何かを取り出す。



「ここに櫛があるからな」



他の子は嘲笑う。でも男の子は無表情のママだった。


その瞬間、五星は教室のドアを乱暴に開けた。他の男の子は驚いて、彼女を睨む。男の子はただ微笑んでいた。



「…櫛、見つかったの、五星さん?」


「…最低だね、あなた。聞いてないよ、手元にあるなんて。

……私達を騙してたんだね?」



彼女はギュッと目を瞑る。下を向いて、拳を握る。しばらくすると、彼の声が聞こえる。



「…ハァ、もうバレたか。

楽しめたかな、2人とも?」



五星は彼を見た。無表情。それは、“自分たちがイジメられていた頃の、彼の表情”。“好きだった彼の表情”の面影もなかった。その頃の姿はもう、戻ってこない。



「まぁ…、

騙される方が悪いんだけどね」



…プツリと彼女の中の何かが切れた。


許せない、許せなイ、許セナイッッッ‼︎


彼女は怒りに任せ、自然に姿を変えていた。祖先の巨大な狐の能力。シュルシュルと五本の尾を揺らした。…もう、後戻りは、出来なかった。



「…、…ろ、…消えろ、キエロッ‼︎

跡形も無く消してヤル、“人間”ガッッッ‼︎」



彼女の瞳に映るのは、“獲物”だった。そして、彼女の右目は銀色に光っていた。



〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜



少し時間は遡る。


五花は五星よりも先に櫛を探し始めていた。残る探し場所は家の近くの小さな祠だけだった。



(確かそこは…)



2人は小さい頃からの親友だった。よく家を抜け出し、2人で遊んでいたぐらい仲がいい。


家を抜け出して見つけた祠。その周りは彼女たちの遊び場だった。今は草が茫々と生えている。こっから探し出すのは一苦労だ。


気がつけば、夕暮れ。やはり櫛は見つからない。



「ここにもないか…」



彼女はため息をついて、家へ帰ろうとした。すると風に乗って、焦げた匂いが漂ってきた。方向は寺子屋。煙が上がっていた。


放課後に掃除をすると言っていた五星が気になり、寺子屋の方へ駆けていく。


変わり果てた寺子屋を見て度肝を抜かした。ペタンとその場に座り込む。家屋は炎上。周りには、元々何だったかわからないもの、そして所々にある血の池。


奥から巨大な五尾の狐が現れた。綺麗な赤毛がさらに赤く染まっている。一目見ただけで、その正体は分かっていた。



「ご、五星ちゃんッ、何やってんの⁈

何で、こんな事…」



彼女の目には自然に涙が浮かんでいた。必死に親友を止めようとした。だが、その思いは彼女に届かなかった。



「ハァ?…止める?…馬鹿じゃないノ?

私は当たり前のことをしてるだけだヨ、五花。

ダッテ、アノ人間達、私達を騙してたんだヨ?ソレでも、許せっていうノ?」



狐姿の五星はボロボロと涙を流していた。



「私達が探してる間、櫛、ズット持ってたんだヨ⁈

初めから隠しもしなかった物ヲ、必死に探してる私達を見テ、嘲笑ってたんだヨ⁈

私達の気持ちを踏みにじったやつヲ、私は許せないッ!」



彼女は咆哮を放った。

そっか、私達は一年前から変わってなかったんだ)五花にも許せない気持ちが芽生える。だが、ブンブンと首を横に振り、気持ちをどっかにやる。



「でも…でも、違うよ、五星ちゃんッ‼︎」



五花も巨大な狸に変身して、彼女に対抗する。五星の…親友の道を正しく導くために。“消すこと”は間違っている、と。


…彼女も後戻りはできない。けど、五花はそれでよかった。狐姿の彼女の道を正しく戻せるなら。



「そんなこと、しちゃダメだよ‼︎」


「煩い、五月蝿い、うるさい…ウルサイッ‼︎

私達を騙す奴なんて、消えてしまえばいいんだッッ‼︎」



両者の力がぶつかり合う。何度も、何度も…。周りのことは御構い無しに、全力で、ぶつかり合った。


しばらくすると、下から声が聞こえた。知ってる声だ。



「狐憑さん、狸憑さん。もうやめて下さいっ‼︎」



担任の先生だ。ちょくちょく2人を気にかけて、相談に乗っていた。2人は先生がいたから、寺子屋に行っていたようなものなので、彼女には恩を感じていた。


彼女の手には、赤く染まったあの黒櫛が握られていた。2人は戦いを止めた。



「先生ッ、何でそれヲ⁈」



五星に驚きと怒りが芽生えていたが、抑えて担任の話を聞いてみた。


彼女は寺子屋が火事になっていると聞き、急いで向かった。到着すると、息絶え絶えの生徒達を見つけた。


彼は一言言って、気絶してしまった。



「彼は『ごめん』と言っていました。

気がつきませんでしたが、彼もいじめにあっていたようです」



あの周りで話していた男の子たちに差し向かれたのだろう。


彼女は、自分が来てからのことを話し、2人を説得した。五花はコクリと頷いた。



「先生、お願いがあります。

先生は特別な力を持ってるんですよね。

私達はこの姿までなると、元の人間姿に戻るのに何十年と時間がかかります。

でしたら、その力で私達をその櫛に封印してくれませんか?」



彼女の瞳に偽りは無かった。五星も黙って頷き、了承を得た。



「…お願いします、先生」



彼女は笑みを浮かべていた。



「…はい、分かりました。

封印を解きたかったら、この櫛を探して下さい。場所は祠に置いておきます。

また会う日を楽しみにしてますよ、五花さん、五星さん」



そのあと、無事2人は封印された。


そして、封印した彼女はどこかへ行ってしまった。



次章、決着‼︎


お楽しみに(*´꒳`*)

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