第3章~異界の使者~
前回よりは短めです!
ですが今後の展開に大きく関わってくる内容ですので、よろしくお願いします(`・ω・´)
俺たちは食事後、買い物へ出かけた。その間に、さっき話した棆が神隠しにあった時のことを書いておこう。
棆は神隠しから唯一生還できたと一時期有名になった。期間は一ヶ月ほど。その間の記憶を失っており、髪や瞳の色の変化も解明していないままだ。
最近記憶が一部戻ってきたと彼女は言うには、神隠しの間、“樹練隼”という男と共に過ごしていたらしい。
今はこれぐらいしか分かっていない。時期に分かってくるといいのだが…。
買い物が終わる。俺たちは帰り道を歩いていた。夕暮れ時で、道に赤い絨毯が敷かれているかのようだった。その上を棆が楽しそうに走り回っている。
急に棆がピタリと足を止める。
「どうしたんだ、棆?」
「棆ね、おもいだしたの‼︎『神隠し』にあったときのこと!
いまみたいな、おそらがあかいときに、キラキラしたものをとおって、隼にあったんだ‼︎」
「…『キラキラしたもの』?
棆、それって何なの?」
「うーん、わかんない。
でも、ほんとうにキラキラしてて、きれいだったよ?」
エヘヘ、と棆は笑い、また楽しそうに走り回る。
俺と天里さんは顔を合わせる。おそらく、『キラキラしたもの』が『神隠し』の原因なのだろう。そして、その中?を通って、隼という者にあった。
そう推測していると、棆がまたピタリと足を止める。彼女が見つめる先には小さな鳥居がある。大人1人が入る高さだ。俺たちも彼女が見つめる鳥居を見る。実際に彼女が見ていたのは、鳥居の奥だったらしい。
「棆、何かあるの?」
天里さんは彼女に聞きながら、中を覗く。俺も中を覗くが、雑草だらけで何もない。
すると急に棆がニコッと笑い、俺と天里さんの腕を引っ張る。
「急にどうした、棆ッ!」
「あのね。隼がね、ママたちをつれて、はいってきてって。いまゆったの‼︎」
何を言っているのかさっぱり分からない中、棆に連れられ俺たちは鳥居をくぐるのであった。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
目の前が一瞬にして光に包まれる。…光が収まったっぽいな。俺はゆっくりと目を開けると、現実で見たことがないものが瞳に映り込む。
目の前には、幻想的な風景が広がり、見たことのない光る植物や、宙を舞う不思議な形の生物がいる。
棆が青年の方へ走っていく。青年は長い銀髪と緑っぽい瞳をしている。彼は俺たちに気づいて、青いメガネをクイっと上げる。
「お初にお目にかかります。僕は“樹練隼”と申します。
こちらにいらっしゃいます、棆様が『神隠し』の最中、あなた様方のことは伺っております。
柊様、それに棆様の母上の天里様ですよね?」
彼は微笑んだ。俺は彼女たちを守ろうと2人の前に出る。
彼は苦笑していた。
「困りますよ、そんなに警戒されては。
…僕はただ、あの方の言葉を伝えにきただけなのですが」
嫌われたものですね、と言い、彼はため息を吐いてから、またメガネを上げる。
「…あなた様方のご家族の“笠井秋”様が行方不明になられたのをご存知ですか?」
「「…え?」」
突然の姉の失踪。俺と天里さんは気の抜けた声を出す。
彼は無反応で話を進める。
「実は僕たちも彼女を探しています。
彼女は僕やあの方にとって重要人物になりかねない。
そして、秋様を攫った人物、名を“涘斗”という者です」
「…その涘斗って奴を倒すために、姉貴を探すために協力してほしいと?」
隼は頷く。天里さんを見ると、強張っていた。
俺は眉を寄せて答える。
「俺は元々姉貴を探すつもりでいた。協力もクソもない。
…むしろ直ぐに犯人がわかってよかったよ」
「…そうですか。奴の位置は大体把握できます。ですが、今も移動しているようで、詳細は不明です。
納得して頂けたなら案内いたします。一週間後、金銀之亞神社でお会いしましょう。では…」
彼は巨大な鳥へと変化する。白く美しい梟だ。大きな翼を広げて空へと飛び立ってしまった。
この時ただ俺は彼が見えなくなるまで、空を見上げるしかなかった。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
俺たち3人は急いで家に向かう。玄関を開けると楓が迎えてくれる。
「御帰りなさいませ、柊様、天里様、棆様。
リビングでお兄様方が御待ちです」
「…あぁ。ありがとう、楓」
彼女はリビングのドアまで行き、開けてくれた。
リビングのソファーには、右から、椿兄貴・榥兄貴・榎穂の順に座っていた。
「…チッ。遅いぞ、柊!
いつまで椿の兄貴を待たせているんだッ‼︎」
2人で睨み合う。隣にいた天里さんと楓はまたか、とため息をついた。
俺の兄貴の“笠井榥”は、唯一仲が悪い。そして地味に頭が良いところもイラつく。地毛が金髪で青眼の為、学生の時は苦労したという。目つきも悪くヤクザみたいだが、弁護士をやっている。
いつもはコンタクトだが、この時は珍しくメガネだった。
「まぁまぁ、そんなにイライラしないの、榥。
それと、3人ともおかえり。疲れたでしょ?ささっ、座って座って!」
長男である兄貴の“笠井椿”は、榥をなだめて俺たちをソファーに座らせた。家を継いだ椿兄貴は両親が亡くなった後、15歳にして笠井財閥のトップになり、笠井家が抱える様々な問題を解決していった。今は誰もが彼を尊敬している自慢の兄貴だ。
「それじゃぁ、会議を始めよっか。
…柊たちも知ってると思うけど、秋が行方不明になったことは知ってるよね?」
「オレたちは警察の手を借りずに解決しようかと考えている」
「あぁ、分かった。
…その秋が行方不明になったことなんだが、詳細な場所は分からないが、いわゆる『神隠し』にあっている可能性が高い。
その情報をくれたのが、隼って奴で…」
「おい、その隼って奴は誰なんだ?」
いちいち突っ込んでくる兄貴にイライラしたが、文句を言う前に棆が彼の問いに答えた。
「隼は棆のおともだちだよ!」
「ハァ、棆の友達⁈…何だよそりゃ」
椿兄貴・榥兄貴・榎穂は首を傾げる。そりゃそうだ。急に友達と言われ、わかるわけがない。すかさず天里さんが説明を加え、3人は納得したところで、俺は話を戻す。
「…その隼が現在分かっている秋の居場所に連れてってくれるらしい。
今日から1週間後、そいつが金銀之亞神社で待つと言っていた。
だから、姉貴の件は俺に任せてくれないか?」
しばらくすると、椿兄貴が話を切り出す。珍しく真剣な表情である。
「分かった。
僕と榥は引き継ぎ情報収集して、柊と榎穂は神社へ行ってくれない?」
俺は強く頷く。他のみんなも納得しているようだ。明日あたりでも、俺と榎穂で神社へ行って、その辺りで情報収集すればいいだろう。
家族会議が終わった頃には、夕飯の準備ができていた。とりあえず俺たちは食事をして、風呂に入って、寝る準備をする。明日の準備をしていると、急にスマホがなり始める。相手は瀬野だ。そういえば、夜に電話するとか言ってたな。俺は渋々電話に出てやる。
『もっしもーし、柊ちゃん?辰樹でーす!』
「あぁ、知ってる。それで、朝の件なんだが」
『そうそう、秋姉さんが行方不明になったんでしょ?
榎穂ちゃんから聞いたよ〜』
驚きと疑問が浮かぶ。じゃぁ何で、と聞くと得意げに言う。
『明日、金銀之亞神社に行くんでしょ?
俺も行きたいなあ…なんて』
あいつ、よりにもよって瀬野に言うとは…。面倒な事しやがって。…まぁ、人数がいて困る事はないから、いいだろう。
「あぁ、いいよ。
その代わり俺の言う事は聞けよ?」
『やったー!ありがとうっ‼︎
さすが柊ちゃん、持つべきものは友達だね〜‼︎
それじゃぁ、明日の朝、柊ちゃんの家の前まで行くから』
「あぁ、また明日」
電話を切り、ベットへ寝転んだ。
絶対明日はカオスになるんだろうな、と思っていると、自然と大きなため息が出たのであった。
お疲れ様です!
次の章もお楽しみにっ‼︎(*´꒳`*)