Prologue
8月のある日。
まだまだ真夏の気候でうだるような暑さが続き、日中強い日差しによってじりじりと焦がされた地上はとっぷり夜が更けた後も全く冷える様子が無い。
ちらりとカレンダーに目をやる。
大きく『8月』と書かれており、学生にとっては夢のような時間…夏休みである。
しかし、何故か表情は晴れない。
いつか夢は終わる。
夢はあっという間に儚く消え去り、代わりに横たわるのは現実。
──嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。
いっその事、このままずっと続けばよいのに──…永遠に。
否──そんな事有り得る筈が無い。
これでは只の子供の我が侭だと自嘲すれば、思考の深淵から這い上がる。
…と、刹那。不意に手にしていた携帯から着信音が鳴り響く。
一体誰からだろうと携帯に目を落とせば、どうやらメールを受信したらしい。
すぐさまメールを開いてみるが、その不可解な内容に首を捻る。
「…何だコレ? 迷惑メールか…?」
ただの悪戯か、迷惑メールの類だろう。
そう考えてメールを消去しようとしたが…ふと何故か急に心揺さぶられその手が止まる。
そのまま食い入るように携帯の画面へと視線を落とした──…。
──さぁ、終わらない夏休みの始まり、始まり。